発達障害の子どもの診察 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

以前に、特別支援学校の耳鼻科校医をしていた。学校検診という一人1分もかからないような診察ですら、おおあばれして見せてくれない子供が多い。そうなると、学校の先生と協力して、暴れる子供を押さえつけて検診をするしかない。このような強制的な検診になにか意味があるだろうかと思いながらも、義務だからやらなければならない。

 

発達障害のあるこどもがときどき受診してくる。このような子供は、診察に恐怖感を覚えることも多い。口の中を見せてもらうだけでも大変なのだ。その病気の診断が命に関わるような状態であれば、無理矢理でも診察する。しかし、大事ではない症状であれば、診察なしで想像して薬をだしてしまう。押さえつけて診察するよりは、そのほうが子どものためには、いいことだからである。

 

親としては、そこで手を抜かれると、差別されたかのように腹がたつのかもしれないが、おさえつけて恐怖感を与えるほうがより悪い影響をあたえると思う。

 

自分が研修医の頃、子どもの扱いのうまいベテラン女医さんがいた。大暴れした子供が受診してきたとき、「今日は耳や鼻は診ないでおわりにしましょう。次来るときは慣れてくると思うので、徐々にならしていきましょう。」と言っていた。これには自分も驚いた。時間をかけて病院につれてきたのに、診察もしないというわけだ。その医師に言わせると、無理やり嫌がることをしてしまうと、毎回暴れるようになり、手に負えなくなる。初日は少し、少しずつ慣らしていかせないと、今後の診察が大変だからだと説明してもらった。

 

その時素直に思った。自分にはできない。今日診察に来たのであれば、押さえつけてでも診察するべきだろうと思ったからだ。診ないで患者を帰すことはありえないと。

 

子供を診るのが下手な自分と、子供を診るのがうまい医師の差なのだと思う。次におとなしく診察できるようになるまで、じっと待つというのだ。今となっては、その医師の考え方もわかる。しかし、なれるまでまっていたら、診断も、治療も遅れてしまうのではないかと思う。

 

今だけ診ればいいやと考えるか、今後長く診察していかなければならないと考えるかの違いかもしれない。今のことしか考えなかった自分は、未熟だったのだろう。今はもう少し嫌がる子どものことを考える。局所の診察しないで薬をだすというテクニックもありうる。少し経験をつんだということだろう。

 

最近は発達障害の子供も多いので、このようなケースは激増している。長い目で診ていかなければならないのだ。