ラゲブリオが効かないことはかなり前から言われていた | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

 

 

ラゲブリオにほとんど効果がないことは、かなり前から医者は知っていたはず。一方で、パキロビットという別のコロナ薬があり、こちらはかなり効果がある。当院では10例ぐらいにラゲブリオ、1例にパキロビットを処方。パキロビットは劇的に効果あり。ラゲブリオはさっぱりわからない。

 

日本ではパキロビットはほとんど使われず、もっぱらラゲブリオのみがだされている。世界ではラゲブリオはまったく評価はされず、パキロビットのみがコロナの薬として評価されている。

 

このような違いがでたのにはいろいろな理由がある。まず、パキロビット側の問題。この薬、かなりいいのだが、禁忌薬が多すぎる。禁忌薬というのは、「この薬を飲んでいる人にはだしてはならない」というだせない患者が多いのだ。日本のお年寄りは薬大好きだから、そのような薬を9割の人は飲んでいる。そのような人にだしてはならないというので、出せる人がほとんどいない。さらに、何の薬を飲んでいるかを確認するのも大変。禁忌の人に薬をだしてしまい、何か副作用でもでようものならば、その医者はつるしあげにあってしまう。だから、ほとんど使えない。海外では高齢者に薬をガンガンだすということはないので、飲める人が多いのだろう。

 

次はコロナの薬をほしがる問題。

若くて元気な人など、そもそもコロナで重症化しない。特にオミクロンは。だから、対症療の解熱剤ぐらいで十分なのだが、「コロナの薬はないのか?」とやたらと求める人が多い。あげくのはてには、「タダだからコロナの薬をよこせ」と言い出す人もたくさんいる。日本の医療制度は充実していて、コロナの薬代も公費で無料になっている。ただならもらいたいという若い患者が続々とでてきて、その人たちに薬をだしまくっていたわけだ。この費用はみんな税金である。コロナの治療費は公費になり、無料扱いになっていたからだ。

 

僕自身は、高齢者と合併症がある人にはラゲブリオをだしてはきた。というのは、ださなければださないで苦情がくるからだ。薬をもらったからこれで安心と思う人もたくさんいた。だから、希望者にはだしてきた。もっとも意味があるとは思っていないので、リスクのある人にしかだしてはいない。今までにだしたのは、10人ぐらいかもしれない。薬の効果はほとんど期待できないとは思うが、「薬がないと不安」というリスク患者を安心させる効果はある。逆に言えば、薬をのんでいれば安心と思うのもなんだなあとは思う。しかし、そのような薬がある以上はださざるをえないということもある。

 

そしてもうひとつ、ゾコーバという薬もある。これも当初は自己負担なしだったので、バンバン処方する医師もいた。何のリスクもない元気な若いコロナ患者が、「タダなら薬くれよ」という人が集まってくると嫌なので、当院はゾコーバは出さなかった。ゾコーバ処方は登録制になっていたので、登録しなければだせない。最初からそもそも登録しなかった。

 

効果があるのはパキロビット一択なのだろうけど、上記理由により、日本ではほとんど処方されていない。ラゲブリオがでまくる日本。世界的には珍しい。だって、薬が無料なんだから。コロナ感染者には誰にだってだすさ。それで医者は感謝されるわけだから。