医師の診断書 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

長野の事件、犯人は銃の所持許可をもっていたらしい。報道によると、「精神疾患がない」という医師の診断書もとっているという。

 

このような診断書があるから、大丈夫と思うことが浅はかである。本当に安全性を確認する必要があるのならば、綿密な診察などが必要になる。99.9%の場合、そんな診察などなされずに、形式だけの診断書である。

 

たとえ、何らかの精神疾患があったとして、「銃所持のための診断書を書いてください」ともってこられたら、その場ですぐに書いてしまうのが現実であろう。もちろん、見た目におかしいという場合はありえると思う。その場合は診断書記載を拒否されるかもしれない。

 

たとえ、精神科通院歴があったとしても、診断書の記載を頼むのは別の医師である。わざわざかかっている精神科医に頼むことはない。ほかの医師のもとにいけばばれないからだ。本人が何もいわなければ、精神科通院歴があるかどうかの確認は難しい。

 

実は、医師国家試験を受ける際にも同様の診断書が必要になる。僕は自分が入局予定のところの教授に頼んで書いてもらったが、多くはそんなところであろう。その中で、「精神疾患はない」という判断がなされる。自分のことを知っている医師だからまだましである。外来にフラッと受診してきて、「このような診断書を書いてほしい」と言われれば、よく知らない人の診断書を書くことになることだろう。

 

医師免許をとったあと、重所持許可をもらったあとに、精神的な疾患になる場合もある。その際は、ノーチェックなんだろう。精神疾患になったからと、医師免許をとりあげられることはない、銃の許可も同様にとりあげられないことだろう。

 

もちろん、周囲の人間が、あの人はやばいと思えば、いろいろな措置がなされる。患者を診察させない、銃をもたせないなどである。法律の上では、医師免許や銃の許可証があるのだから、患者の診察もできるし、銃を持つこともできる。何もさせないことが、本人の人権侵害になってしまう。

 

銃の許可に関しては、もっと慎重で、厳密であるべきだろう。