最後の一週間、追い込みにかかってきた雪組の熱量と、劇場の内外から念を送るファンの共振が凄まじかった。
だいもんの迫力と技量に圧倒され、真彩ちゃんの深化と奮闘に涙し、作品が息づく過程を目の当りにした。
当初はうまく理解できなかった「ひかりふる路」という作品が、ついに立って、歩いて、こっちにやってきたと思った。
■真彩希帆とマリーアンヌ
ムラでのマリーアンヌは映像で見る限り、強い。
東宝でのマリーアンヌは、揺らぎや弱さがあり、マクシムへの思いの変化がよく見えた。
マクシムへの愛と憎しみの相反する感情を歌い上げる 「葛藤と焦燥」は、低い旋律に変わり、凄みと切実感を増した。
演出の生田先生からは東京公演に向けて、体にまつわる慣用句 (例)「歯をくいしばる」「眼が泳ぐ」 を使うような表現をとアドバイスされたという。
前半では動きの少なかった牢獄のシーン、最後の一週間では、鉄格子を握りしめ、身を震わせ、頭を垂れ、文字通り体の全てを使って嘆き、訴えかけていた。
マリーアンヌは、最後の一週間、よく涙を流した。
沢山の関わる人達がそれをぬぐった。
下宿先に案内され、第二の家族ができたとき、頬に伝わる涙をルノー(奏乃 はると)が笑ってぬぐった。
女性革命家に導かれ、新しい自分の道を見たとき、こぼれた涙をオランプ(舞咲 りん)が拭いた。
恐怖政治を始めたマクシムへの絶望と別離に泣いたときは、姉妹のようなルシェル(彩 みちる)が肩を抱いた。
マクシムへの愛と告解のシーンで落ちた涙を、望海風斗が撫で、そっと唇を重ねた。
頑なで孤独だったマリーアンヌの魂が、生まれ変わって、本来の柔らかさに戻っていく様子が見えた。
現実で真彩希帆に起こった経験が、演者として、変化していくマリーアンヌとしての表現に昇華されたとしたら、なんという大きな糧を得たのだろう。
千秋楽、マリーアンヌは、ほぼ泣かなかなかった。
「葛藤と焦燥」を、本来の高い旋律に戻して、歌いきった。
マクシムとの別離で、目尻から涙をこぼしながらも、頭をあげ、背筋を伸ばして歩み去った。
トップ娘役、真彩希帆の勇姿を見た。
音を振り絞るようにして尻上りにトーンを挙げていく「葛藤と焦燥」、絶唱だった。
一緒に歌っているだいもんが、その場を真彩ちゃんに預けるように一定のトーンで歌っているのも、信頼を見るようで胸が熱くなった。
今公演の真彩希帆の歌は、虹と比べれば負ける、というレベルの歌唱だった。どんなときも。
つまり、ファビュラス。
見事だった。
スーパーボイジャー(SV)で、真彩ちゃんのキュートな掛け声「あーい」も復活 (演出家先生御中、1公演、1あーい真彩、よろしくお願いします )、SVの銀橋では、ぽんぼん持ったまま客に指差しを決め、だいもんとのデュエット歓喜の歌を歌い終わったあと、花道で飛び跳ねながら、「元気だよ!」と言わんばかりのちっちゃなガッツポースを見せたしつこいけど百万ドルの笑顔・真彩希帆に射ぬかれました。
末永く、やる気、元気、真彩希帆でいてください。
■友情
友情の説得力がさらに増した。
千秋楽のデムーランがダントン(ジョルジュ)を呼ぶとき、これまで聞いたことがないほどの悲鳴に近い強い声で叫んだ。
ダントンが 「腹減ったー」 と叫ぶところ最初は唐突に思えた。
千秋楽真近で 「ほとんど食べていないだろう」 と静かに語りかけているような口調に変わっていて、友であるマキシムへの心配と、苦しさの中にいる彼に、一緒に笑いながら食卓を囲む喜びを思い出してほしかった、というダントンの暖かさと友情が、やっと見えた。(遅い)
机の上のご馳走も、マクシムのために考え抜いて一番贅沢なものを選んだということに今更ながら思い当たって、皿を叩き落す音が、ひときわ耳障りに響いた。
マクシムの 「私と一緒にやる気はないんだな」 も、友に見放された絶望感が強く出ていた。
一本物で、ダントンとジョルジュが白い衣装着銀橋で肩叩き合ってダンス→それぞれの妻出てきて2組ダンス →マクシム&マリーアンヌ加わってトリオのフィナーレ観たかったです。
■革命への疑念
サンジュストがダントンを処刑に追いこんだとき、サンジュストは一人、勝利に笑う。
悪魔のように美しいサンジュストの天使のような晴れやかな笑顔に、マクシムへの狂気めいた思慕が見える迫力のあるシーンだが、千秋楽近くになって、サンジュストの笑顔にかげりが出た。
殺してしまってよかったのかとふと迷う色が見えた。
ロベスピエールの粛清が決まった後、高笑いしたフーシェ(真那春人)が、急に脱力し、「あれは本当にロベスピエールだったのか?」 とつぶやくシーン。
ジャコバン派マニアのてるみんみんさんのツイートによれば、熱月派は「ロベスピエールを殺したつもりが革命を殺してしまった」という言葉を残しているそうで。
後日譚まで感じさせる余韻すら表現するとは脱帽である。
■SV 牝牛パワーアップ
咲ちゃん&娘役ちゃん達の情熱の一夜、娘役さんたちは「牝牛」らしいんだけど、千秋楽、後ろ足の蹴りがパワーアップしてました。
スカートがぶわああああっと翻って、内側の真紅のペチコートが踊る様・・・・・ワタシ、ミゴモリマシタ。
ビバフェス宙組の雄牛らに負けぬ鼻息、10000ボイジャー。
■Neige Blanche号 停泊
本当は甘えっこ翔ちゃんの今回の兄貴ぶり &バラエティならまかせとけ、サービス精神満載のあーさが千秋楽、 「騒げー!」 「声だしていこーぜ!!」 と客席に火をつけてくれ、「全ツで会おうぜ!」 としっかり仕事してるのに比べ、大黒柱のだいもん、
「到着―!!」
「皆様、ポンポン、家に持って帰って・・・踊ってください」
全ツ、全ツ!!
全ツで使えるから!!
トップさん、営業して!!
「ショー、めっちゃ楽しかったよー」 という友人に私はもれなく 「全ツもあるよ??」 とサンジュストの微笑み(のつもり)で営業かけてますからね!!
コマさんの、まさかの 「だいもんの雪組を応援しましょー!」 には泣いた。
コマさんの新たな船出も、わくわくする航海でありますように。
すばらしい航海でした。
生きて変わっていく作品を目前で観れた喜びと、だいきほ砲をくらった耳果報と、宝塚ファンであることの幸せを明日の航海への活力とします。
合言葉は
心からの
アイラブユー!!!!
(そしてだいもんのラリンクスに、献杯)