それからというもの どんどんと仕事が入ってきた
今度もダウン症の子でN君 小学校3年位だろうか
その子も太ってて 声が出なかった
N君との初めての仕事は
映画「ファイティング ニモ」を一緒に見に行くことだった
映画代と電車賃は全て利用者さんが支払ってくれることになってる
なんてすばらしい仕事なんや!
N君と意気揚々 映画館に行った
僕は映画に集中して見てたが N君はほとんど見てなかった
たまに スクリーンを指差すくらいだった
N君は生き物が好きなようで 一緒に散歩とかしてるとき
急に立ち止まって 背をかがめ 遠くのほうを指差す
そちらのほうを見ると スズメがいたり 犬がいたりする
それに 気配りの出来る子だった
僕が電車の座席に座って足を組んでると 決まって組んでるほうの足を
両手で押す 足を組むなって言ってるようだった
そして 駅から人が入ってくると僕のほうに詰めて
入ってくる人が座る為のスペースを確保する
なんで やさしい子なんやろ って思った
でも 少々食いしん坊で 一緒にマクドナルドなんか行ったときは
ずいぶん注文する 僕の食事代は利用者さんからは出ないし
間食はあまりしないので 飲み物だけにしてN君が食べてるのを見てると
食べ物に集中してこちらを見向きもしない
僕が口を開けて「あ~ん」とすると
ちょっと こちらを見て
ポテトの一番短いのを一本 僕の口に入れてくれる
なんや そんなけしかくれへんのかーってN君を見ても
また いっしょうけんめい ポテトを食べてる
でも かわいいなー って思った
本当に純粋で無垢で ほんと癒される
でも この仕事をしてから ほんと嫌なことがある
仕事をし始めて気づいたんだけど
一緒に手をつないで歩いてると すれ違う人が ジー と僕たちを見る
それも なんか変なものを見るような目で ジー と見る
ある時なんか 向かいから歩いてくる おばはんが
N君を見て 僕を見て またN君を見て また僕を見る
僕はむかついて なに見てんや!って感じで そのおばはんを睨む
おばはんは 僕が睨んでるのに気づいて そ知らぬ顔をして通り過ぎる
なんやねん! 俺らは何も悪いことしてへんやないか!
なにをジロジロ見てるんや!って本当に腹が立つ
電車なんか乗ってると ほんと嫌になることがあった
僕たちの前の席に座ってる人達 ほとんど全員が僕たちを見る
なんやねん って感じで そのときも睨み返してたが
それだけで疲れることもあった
僕は仕事で一緒にいる時間は ほんと短時間だけど
その子の両親は こんな嫌な目に毎日あってるんだって思うと
辛いだろうな って思う
自分のお腹を痛めて産んだ子が外に遊びに行きたいって言って
一緒に遊びに行くと 周りからの冷たい視線・・・
なんで そんな目で見るんや って怒り そして苦しみ 悲しみ
いろんな感情が交錯する
でも 愛する 本当にかわいい自分の子供のために
できるだけ いろんな所へ連れて行ってあげたいって思ってる
強いな って思う ほんと強いなって思う
その頃から僕は 障害者の子供は癒さなくても たくましく生きてる
癒さなければならないのは その両親だって思い始めてた