読もうと思って丁寧にブックカバーまでつけていたのに、読まずに引き出しにしまいこんでしまっていた本。ついに手をつけ読み終えた。
昔、ドラマか映画か何かで見た記憶が微かにあってなんとなく話を覚えているようなそうでもないような、そんな状態で読み始めた。
作られた話だとは知っていても、1人1人の人となりやそれに基づいた行動、もっとも大切にされた主人公の自身の変化に伴った心情変化の描写にリアリティを感じた。
読み始めは、読みなれない文章に多少戸惑ったが、それ自体が主人公の状況の説明でもあることを理解することには時間はかからなかった。
結末は全く覚えていなかったので、改めて最後まで読んでみると、変化していく主人公に戸惑う周囲や主人公自身に、途中からなんだか胸がつかえるような思いを抱いた。しかし最後には、これでよかったのだという主人公の意思や覚悟も感じられて、少しだけ私自身がシャキッとさせられて救われた気もした。
わからないということとは、頭が良いとは、やさしさとは、わからなかったことがわかるようになるということは、愛情とは、しあわせとは。
題材がセンシティブなので、いろいろな感じ方をされる方もいるかもしれないが、著者はきっとそういった(主人公のような)人々に寄り添う思いで、その立場に立ちながら書かれていたのだろうと推察する。