変わっていく、父と自分〜その14〜 | ぽんこたつ欲しいみかんの毎日気分は凸凹~生きてるからこそ~

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母の介護、父の死をきっかけに2016年にうつ病になったことから、転職を繰り返し、仕事社会から離れて今は生活保護で暮らしています。家族のこと、日常の出来事、病気やメンタル、伝えたいことや空想、情報など思うまま綴るまとまりのないブログです。



今日を、無事に終えられたことに、感謝。


母から東京都のコロナ感染者が493人と聞かされ、

しばらくは電話のやり取りのみにすることになりました
(。•́︿•̀。)


、、、(泣)


今夜も母のことを振り返ることにしました。



ご興味のある方は、読んでみてください。



母が倒れた日51~53

2012年5月頃の話。


(51)


妹が母に言ったという、

利用できるものは利用させてもらう。


本当に、そんなことを……?


信じられないという思いで母を見つめると。

母は溜まっていたうっぷんを自分にぶつけるかのように続けました。


『わりぃけど、少し母さんの相手しててくれるか?』

父はそう言って席をたち、その場を離れました。


『お父さん、とても疲れてるの。』

『そうみたいだね。』


そして妹と甥っ子が来てからあった事を話始めました。


『あのこ(妹)、寝てばかりで…
 子供のお風呂もお父さんにいれさせて…

 どうも、あのこはお風呂にいれたことがないみたいで…』

『…え?ダンナがやっていたってこと?』

『多分…はっきり答えなかったけれど、 
 あれはやったことのある手つきではないってお父さんがびっくりしてた。』


随分な話…。

でも、寝てばかりというのはもっと気になる。


『子供のことをほったらかしにして、何時間もあたしのベッドで寝ているの。

子供が遊び回っても、あたしは相手してやれない。

それに、あたしは右側が動かない。

そっちに子供が来られると本当に困るんだよ…なのにそれもわかってくれない。』


『ひどいね…何しに来たの?』

『どうも、ダンナと喧嘩したらしくて、ちょうどいいからと言ってた。』


『それ、わざと?あからさま過ぎない?』


『…よくわからない。でも昼寝は習慣だね。ちょっと動いたらすぐ横になって。

あんなんだからちっとも痩せないんだよ』


聞いてるだけでもうんざりするような内容…。


父だって、母の介護をして妹と甥っ子に気を使ってたら、そりゃ疲れて当然…。

親不孝そのものではないか‼


そして、更に困った事があったのだと。


妹が呆れるほど昼寝をしていた頃。


甥っ子は、家の前の道路に飛び出したらしく…

車にひかれそうになったと。


母は気付いても追いかけることができない。

声を掛けても気付かない。

妹も、甥っ子も…。


お父さん!!!


必死に叫んで父に助けてもらったという。


それなのに…


妹は…


なんでちゃんと見ててくれないのよ‼


怒ったと言う……父に、母にも…。


現状をまるで把握していない。

今、どんな状態で両親が生活しているか。


そこに甥っ子という、まだ善し悪しの判断もつかない幼い子供を連れて来ることがどんなに負担になるかを。


そして、まるで女王のように振る舞う。


もう、甥っ子の顔さえ見せれば親孝行という状態ではないのに。

甥っ子を使って、お菓子や小遣いをもらおうとするあまりにも情けない行動も…。



長い、沈黙…。


父が戻ってきて…母と顔を見合わせ…



『母さんと話してたんだ。

 俺たちは…あいつの育て方を間違えたかも知れないって…

嫁にだして、少しはまともになるかと思ったけど…

空気の読めない所は特にひどくなってる…』


『あたしたちへの復讐なのかな?』



両親が、自分に問いかける。


そういう自分も、あなたたちの子供なんですけど…。


復讐、か…。


それは十分にあり得る。

妹にそんなつもりはなくても、子供の頃に味わった数々のトラウマや嫌な体験。

それは自分と同じはずだから。


ただ、性格は違う。

自分は諦めて従うけれど、妹は反抗する。


そのまま、大人になったのだとしたら。

その反抗心や、もしかしたら、かまってほしい…そんな思いもあるのかも知れない。


無言の、自分に。


『おまえはいつも聞き分けのいい子で。
 やっぱり上に生まれたせいなのかな…

 余計苦労を掛けさせてしまったな…』


生まれた、順番…か。


それもあるのかも知れない。

いや、それは大きい…


長女なんだから、お姉ちゃんなんだから、しっかりしなさい。

妹の手本になるように、ちゃんとしなさい。


ずっと、そう言われてきた。

それは上に生まれた宿命なのだろうか?


わがままを言うことは、妹以上に許されない。


たった、ふたつしか違わないのに…。


自分だって、妹のようにわがままを言いたい。

でも……できない。


体に、脳に染み付いてしまった性格や考え方は、そう簡単には変えられない。

そうしてきたのは、親なのだ。


合ってるとか、間違えてるとか…。


まぁ合ってるとは言えないと思うけれど。

それを他の子供に問い掛けるなんて…。


よっぽど、疲れたのだろうな…。


『あのこは、自分より大人になってなきゃいけないのに、残念だけど気持ちはいつまでも姫なんだろうね。

自分にばかり頼るのも気にくわないし、内緒にされていることも。

いつでも話の中心にいないと我慢ならないんじゃないのかな?』


多分、狭い狭い世界で生活していて。


以前より視野も狭くなり、尚更彼女中心の思考がそうさせているのだと、自分は感じていました。


しかし、昼寝だとか趣味にばかり時間を割いているというのは本当らしい…。

それでダンナに不満だらけとは…恐れ入る…。

どれだけ、自己中な考えでいるのか!



それが実家に長期滞在して、浮き彫りになっということか……。


『正直、早く帰ってほしいと思った。

 あんなんなら、来てくれなくていい。』


母は、うんざりという表情…。



それだけのことがあったのか。

それは疲れる。


甥っ子に対する口調はいつも怒鳴り声。

聞いているだけでも疲れたと、両親が口を揃えて…。


妹は、ストレスをそのまま実家に置いていっただけ…。

甥っ子のオムツも…。

3歳になってもオムツが取れないという事実も、両親を悲しませたようでした。



その後も滞在中、色々な話を聞かされた自分…

母が倒れたことを、妹は数ヵ月後に知った。

それは、父と自分が決めてあえて話さなかった。


それを今でも彼女は恨んでいる。


しかし、彼女自身も入院中で生死をさ迷っていた…。


そんな状態の家族に、話せるわけがない…。


母は。

倒れた原因のひとつに、妹のことを挙げていた…。

そのくらい、ショックだったのだと…。


それが両親と自分と、妹の溝を深める原因になったのだとしても…。


誰が悪いなんて言えない…。


そうするしか、なかった…。



そして。

妹の存在が、行動が…。


両親と自分の生活を、精神を更に追いつめていくことに…。




そして、自分は。




大きな、大きな決断をするしかないことに…。



気付きたくなかった。




(52)


妹の行動に、呆れと不信感を持ってしまった両親…。

そして疲労…。



妹にはもう頼れない。

もう、来ないほうがいい。

だらしがなさすぎる…。


両親からそんな言葉を、何度も聞きました。



今まで、両親が子供にしてきたことは、決して許せることではない。

支配と、束縛。

そして、親なら何でもしていいという身勝手な考え…。


妹の気持ちもわかる。

親の面倒をみるなんてまっぴらだという思いもあると思うし、自分もそれは同じ。


でも、今はそんなことを言ってられる状態ではなくなってしまった…。

少しでも協力とサポートをしていかなければ、とても両親は生活していけない。


そう思っていたのは、自分だけなのか。


そしてそんな自分の気持ちを利用するかのように……


『もう、おまえにしか頼れない。
 あいつには家庭がある、子供もいるし』

子供を諦めさせたくせに。

『おまえは、本当にそんなに働いていたらそのうち身体を壊すぞ…』

生活のために…みんな、頑張ってる。



しかし…。

子供のことはともかく、残業の多い職場。

仕事は途切れず、毎日戦いだ。


楽しさと、厳しさのある仕事。

とてもやりがいがあるぶん、疲れる…。


本当に、それでいいのだろうか?

親のことまで背負って、やっていけるのだろうか?


今の自分に、妹みたいに親に冷たくすることも、突き放すこともできない。

……なんて中途半端なんだろう。


もっと、身勝手になりたい。

もっと、親に反省してしっかりしてほしい。


こんな風に家族の板挟みになって愚痴をきくなんて……。


……所詮、自分は家族の犠牲になって生きる立場なんだ……


そして、そういう風にしかできない……




ゴールデンウィーク明け。

自分は上司に再度相談しました。


契約は6月末まで。

更新をすれば契約はまた1年更新される。


その話を……


断ることにしたのです。


約束された安定を、自ら手放す選択を…。


その選択は…。

予想以上に自分の仕事人生を暗転させることに……


それさえも、親は責任逃れしたけれど……


それでも……



あのときは、そうするしか……



母の、



あんな言葉を聞いてしまったら……



『あんたは、


 お願いだから…あたしみたいに……


 ならないでほしい………』





(53)


母に言われたひとことは、まるで自分の中に……染み込むかのような……そして身震いを起こさせる言葉でした。


自分は、間違いなく母の子だと思う瞬間。


仕事をするときの性格がそっくりなのです。

考え方、人の見方、人との接し方、取り組みかた…。

母と仕事の会話をするときは、まるでお互いその様子を見ているかのように、頷きあい、愚痴りあい……。


母もきっとそれを感じていたのだろう…。

何でもひとりで背負ってしまうから…。

同じようなことになってしまったら……。



この仕事を、辞めたい。

以前にも何度もあった。


とにかく厳しい。セクハラパラハラも経験した。

お客さんからの容赦ないクレームや無理難題にも対応してきた。

何度も何度も泣いて、何とか乗り越えてきた…。

営業マンとの信頼関係が築けてきたこの時期に……。


そこまで苦労してやっと安定してきた仕事を手放す……。

それがどんなに怖いことか。


両親は単純に喜び、これで心配がひとつ減ると……。



部長からは。

『歯切れが悪いという言い方は良くないのかも知れないけれど…

決してぽんこたつみかんちゃんが望んで辞めたがっているわけではないのがわかるから……何とか思いとどまってほしいんだけど……』


引き止められることなんて、そうそうあるものではない。

本当に、それでいいのか?


こころの中で、何度も何度も自問して…


『はっきりわかったんです。
 いくら自分が望んでも、そう遠くないうちにこういう選択をするしかないということが…

 残念ながら、うちの親は自分が望むことほど、縛るところがありまして…

こうするしか…』


『介護というのは、期間限定ではないからね。
親としてこんなに有り難いことはないんだろうけれど…。

こっちとしては、いてもらわなくてはならない存在だから…きっとみんなすぐには納得しないと思うよ。』

『本当にすみません。やっと慣れてきたと思った矢先に…』


本当に、本当に。

4年以上かけて積み上げてきたものを。

これから。そう思っていたのに…。


悔しい……。



『ぽんこたつみかんちゃんなら、何処に行っても大丈夫だから。』


最後に部長が呟くように言った言葉だけが……脳裏に深く刻み込まれました。



仕事の契約は、6月末まで。

大きな大きな会社の子会社。

親会社の方針として、派遣は雇えない。

新規での正社員の募集もできない。


自分の後任には。

その、大きな大きな組織からひとり、候補を選ぶことになりました。



自分が退職を申し入れてから約2週間後。

朝礼でその事が発表されました。


一瞬でどよめきが起き……自分は質問の矢の中にいました。

担当している営業マン達からは、ブーイングと心配の声が…。

『そんなにお母さん悪いのか?』

『ぽんこたつみかんちゃん、実家に帰っちゃうの?通えない?』

『俺たちに相談なく決めちゃったの?』


言われることは、もうきっとそうだろうと思ったとおりで…こんなにみんなが言ってくれるのに…!!


こんなに辞めたくないのに辞めることを決断したことはなかった…!!!



……でも、もう戻れない……。


みんなの質問にお詫びしながら答え…。


『引き継ぎはきちんとしっかりやります。
残り少ない日々を精一杯頑張りますので…宜しくお願いします。』


それは、退職までの…自分への誓い。




その先のことなんて。


何も考えていなかった。





考えられなかった…。




(続く)