昨年10月に九州南部を訪れ、【日向三代】を祀る神社をシリーズで記事にしましたが、まだご紹介していなかった神社があります
2019年10月8日(火)、旅の最終日に訪れました。
桜島港ターミナルより徒歩2分。
桜島最大の神社です
創建は、和銅年間(708~715年)。
大正3年の桜島大爆発🌋により、社殿が熔岩の下に埋没。
その後昭和15年、現在地に遷座しました。
石段を上ったところに一の鳥居。
鳥居の左手に社号碑。
その先に、上り坂の参道が続きます。
参道の左右に、
【御祭神】櫛磐間戸命・豊岩間戸命
別名:天石門別命
門を守護する神様です。霧島神宮にもありました。
関東で神社巡りをしていても、対の門守神社は見かけません
二の鳥居。
朱塗りの社殿が見えました。
菊紋の花弁は15枚です。
その奥にちゃんと手水舎がありました
南国っぽいです🌴
水盤
ずいぶん柄杓がたくさんあります。
そんなに参拝者が多い時があるのかな
この日はどなたにも会いませんでした。
拝殿
【御祭神】
月讀命
境内にあった由緒板に、
『出生地は桜島であると言われている』
と書いてありました。初耳です
【相殿神】
瓊瓊杵命
彦火火出見命
鵜草葺不合命
豊玉彦命
木花咲耶姫命
この地方ではお馴染みの顔ぶれです。
神額。
前回記事で予告していました本題に入ります
【謎の神・ツクヨミについて】
『古事記』『日本書紀』の神話には、ほとんど登場しません。
三貴子誕生の場面以外には、わずかに『日本書紀』第五段・第十一の一書で、【穀物の起源】として語られるのみです。
ツクヨミは、口から吐き出した食べ物で自分をもてなそうとした保食神を斬り殺してしまいます。
アマテラスはこのことに怒ってツクヨミと会わなくなり、これが昼と夜が分かれた由来とされています。
この時、保食神の遺体から、稲などの穀物が生じ、天上に田畑を設けるのです。
月と農耕との密接な関係を示すエピソードです。
※『古事記』ではスサノオと大気津比売神の話になっています。
ご本殿
千木→外削ぎ、鰹木→奇数=男神が祀られていることを示しています
【バランスを取る静かなる存在】
アマテラスとスサノオという対照的な性格を持った神の間に、ツクヨミという静かなる存在を置くことで、バランスを取っているとする説があります。
同様の構造は、【造化三神】のタカミムスビとカミムスビに対するアメノミナカヌシに見られます。
【父神的性格】のタカミムスビ、【母神的性格】のカミムスビの間に、アメノミナカヌシが存在。
アマテラスという【女性】、スサノオという【男性】の間に、ツクヨミが存在。
そして…
タカミムスビ→常にアマテラスの背後に立っていてアマテラスを補佐。
カミムスビ→スサノオとその子孫であるオオクニヌシなど、出雲との関係が深い。
男性同士・女性同士のラインではなく、交錯が乗じているのが特徴で、
その中心でバランスを取っているのが、アメノミナカヌシ及びツクヨミです。
※河合隼雄著『神話と日本人の心』より抜粋
【三貴子=三種の神器】
神道家・歴史作家の戸矢学氏の説が、大変興味深いのでご紹介します。
三貴子は、『三種の神器』を表しているという説です。
三種の神器実物は、どこにあるかを整理してみます。
【八咫鏡】→伊勢・皇大神宮(内宮) =アマテラス
【草薙剣】→熱田神宮 =スサノオ
【八尺瓊勾玉】→ 宮中 =ツクヨミ
八咫鏡=アマテラス、草薙剣=スサノオまでは、誰でもそう思いますよね。
そうなると、残りの1つ・八尺瓊勾玉=ツクヨミとなるのはごく自然な流れです
宮中にある鏡と剣は形代(レプリカ)で、実物が宮中にあるのは、唯一【八尺瓊勾玉】だけです。
【八尺瓊勾玉】について戸矢氏は、
①オオクニヌシの神宝4つと、②ニギハヤヒの神宝4つが合体したものではないか、という見解を示しています。
①勾玉は出雲と深い関係にあり、元はオオクニヌシの依り代です。
※崇神天皇の御代に祟りを為し、大和神社へ。
②ニギハヤヒの『十種の神宝』のうちの4つ(生玉・死返玉・足玉・道返玉)。
※ニギハヤヒが天磐船に乗って空からやって来たというのは、外来の神という比喩で、こちらは勾玉の形ではなかったと思われます。
神宮徴古館蔵 伊藤龍涯「天照大神」
天岩戸開きの時に、太玉串に鏡とともに飾られているのが、【八尺瓊勾玉】です。
玉造部の祖神・玉祖命(櫛明玉神) によって作られました。
勾玉は、鏡と同様に神の依り代と考えられ、祭具として用いられて来ました。
【八咫鏡】は崇神天皇に、【草薙剣】は天武天皇に祟ったため皇居の外へ出され、
【八咫鏡】は伊勢神宮・内宮に、【草薙剣】は熱田神宮に祀られることになりました。
【八尺瓊勾玉】にも、再び祟りがあっても不思議ではありません。
どこかに斎き祀られていなければならず、それが宮中であるとは考えにくいのです。
鏡・剣と同じく、宮中にあるのは形代で、実物は【外宮】に鎮座しているのではないか、というのです
(外宮の御神体は公表されていません。)
【ツクヨミの正体】
伊勢神宮・外宮(豊受大神宮)の御祭神は豊受大神=女神ですが、
千木=外削ぎ・鰹木=奇数→男神と一致しません。
『先代旧事本紀』の三貴子誕生のくだりを見ると、
「左の御目を洗われたときに成るところの神は、天照太御神と名のる。
右の御目を洗われたときに成るところの神は、月讀命と名のる。
五十鈴川の河上に並んで坐す、伊勢に斎き祀る大神という。」
ここからは、内宮と外宮は、アマテラスとツクヨミの鎮座する宮であると読み取れます。
『月読神社』にはなぜか本宮・本社が存在しませんが、
伊勢の内宮と外宮に、それぞれ別宮として鎮座しています。
崇神天皇の御代にはまだ二種だった神器を、『三種の神器』として初めて制定したのは天武天皇です。
そして、『古事記』『日本書紀』は、どちらも天武天皇の命によって編纂が始められました。
鏡と剣には起源がありますが、勾玉にも神話が必要ということで、ツクヨミという神を創造したのではないか。
日に対する月、そして、弦月の形の勾玉。
『日本書紀』に、天武天皇は陰陽道に優れた能力があったという記述があります。
天文や占星術への深い関心があり、壬申の乱の渦中でもその能力を発揮しています。
「月読」は自分自身が「月」なのではなく、「月を読む」神ということ。
つまり、ツクヨミ=天武天皇自身だというのです。
整理すると…
【内宮】
千木=内削ぎ・鰹木=偶数 → 女神
三貴子 → アマテラス
実体 → 皇祖=持統天皇
ご神体 → 八咫鏡
陰陽 → 日(陽)
【外宮】
千木=外削ぎ・鰹木=奇数 → 男神
三貴子 → ツクヨミ
実体 → 天武天皇
ご神体 → 八尺瓊勾玉
陰陽 → 月(陰)
となります。
※戸矢学著『三種の神器』『ツクヨミ 秘された神』より抜粋
薩摩半島の最南端に位置し、別名『薩摩富士』とも呼ばれる美しい山
コノハナサクヤヒメが生まれ育った阿多の火山です。
コノハナサクヤヒメが富士山の守護神として祀られるのは、この開聞岳が富士山とよく似た美しい円錐形の火山であるから、という説もあるのです。
『謎の神・ツクヨミ』について、皆さまはどうお考えでしょうか
ツクヨミは、【謎】であることが最大の魅力であるような気もしますけど