今年の梅雨は長かったですね。
おかげさまで、暑い夏がありがたく・・・感じたのも2日くらいです。
いやあ買い物に出かけるのも汗ドロドロで一苦労です。
早くも秋が恋しい・・・
皆さんにとってはどんな1か月でしたか?
今月、印象に残った一冊をご紹介します。
垣谷 美雨さんの
『農ガール、農ライフ』です。
水沢久美子、三十二歳。派遣切りに遭ったその日、同棲相手から「結婚したい人がいるから出て行ってくれ」と告げられる。テレビで見た「農業女子」に、自分が進むべき道はコレだ!と感じ、早速田舎に引っ越し、農業目指すべく動き始めるのだが…。
大学時代のツテをたどり、何とか安アパートを確保。週末数回にわたって開催される大学の農業講座に通い、野菜づくりの知識を学んだ久美子はいよいよ農業をはじめようと、農地を探しはじめます。
しかし、作物の種類に制限があったり、単身者ましてや女性には無理なので、結婚してからにしてくれ、と言われたり。ようやく貸してくれる人が現れたと思ったら、そこは日当たりが悪い、平地でないなど、めちゃくちゃ条件が悪い畑だったり。
女性の晩婚化や、生涯独身者も珍しくなくなった昨今で、結婚していなければダメだなどと、昭和の感覚が残る農業界にカルチャーショックを受けます。しかも女性一人では社会的に一人前とみなされないと言った差別もされているように感じます。
ただ、これにはなるべくしてそうなってしまったという背景があるのです。費用と手間の割に利益がとても低く、単身者にはとてもじゃないがやっていけないだろうという経験者たちの思いがそこには含まれています。
苗、肥料、ビニールシートなど初期費用がかかり、販売したうえで利益を出すにはそれなりの面積で、一定量の作物を作ることが必要です。この物語の中では、久美子は広大な敷地内で作付けを行っています。土を耕し、種をまき、苗を植え付け、施肥をし、支柱を立て、病害虫防除をし、収穫。畝をいくつも作り、少しずつ時期をずらして収穫できるように、事前の計画は入念に立てます。
そうして丹精込めて育った野菜達を販売するための販路を開拓するに一苦労です。久美子は、バイトしていたスーパーに置いてもらったり、圧倒的な購読者数を持つ先輩のブログなどで紹介してもらい、購入希望者を獲得。それでも、発送料などがかかることもあり、利益はほんのわずか。
農業という仕事が、手間とお金を総動員しても利益があまり出ないという事実が三十二歳の女性の立場と体力でもってリアルに描かれています。ただ、久美子の今まで生きてきた「勤勉」「真面目」と言った部分が、農業への情熱を絶やさずにいることができるようです。
最初から利益を追求しようとしたわけではなく、野菜を育てて暮らしていきたい。久美子の最初願いは、そんなシンプルなものです。だから、生きていくのはカツカツだし、まだまだ工夫は必要だけれど、どうしたら良い野菜を作れるのかを考え、記録し、研究していくのが楽しくなっていきます。
途中、婚活してみたりもしますが野菜を作っていくぞ!という意思はブレない。それって、最初からある程度のリスクを想像して、いいとこばかり見て理想を追いかけているわけではない。超現実的であり、だからこそ自分の希望する生き方を達成できる人だとも言えます。
農業をずっとやってきた人にしてみれば、新参者が「ちょっとやってみた、飽きちゃったからやーめた」というのが一番困るものです。知識がなければ、畑を荒らしたりもしてしまいますし。自分がやったことのないジャンルに飛び込むのであれば、そのジャンルに敬意と情熱を持って取り組むこと。それが大切なんだということを久美子の行動は教えてくれます。
つらいこともあるけれど、その中に作物の成長や実りの喜びが農業にはある。そんなことに気づいた久美子はもしかしたら旦那さんとか必要ないと感じるんじゃ?とも思いますが、外から見たら魅力が増しているからモテるのも頷けるなと。
おいしいものを作る人は、その人間の中身にも情熱が詰まっていて、そのオーラが滲み出ているものなのかもしれませんね。
農業女子に幸あれ!
今月のレビュー結果
今月イラストレビューした本
26冊
ブログをはじめてからイラストレビューした本累計
883冊
読書人が集う『シミルボン』にて、インタビュー記事掲載!
https://shimirubon.jp/columns/1691046
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