hidden desire 2 | 青いたんぽぽ

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ぽそぽそと書いてます…
腐なので、ご注意ください(笑)

常に雑食←

 
 
「兄の死は事故じゃない!あの女に殺されたんです!」
 
彼は俺らに救いを求めるかのように叫んだ
 
 
 
 
毎朝の日課のランニングを終え、事務所に戻ると何か思いつめたような表情に青年が立っていた
 
まさか、泥棒?
 
とも思ったが、こんな古びた一軒家に盗みに入ろうなんて思う間抜けな泥棒もいないだろう
 
もしかしたら、仕事の依頼!
 
少し嬉しい気持ちになって、声を掛けた
 
「うちに御用ですか?」
 
青年は思いつめたままの表情で顔をこちらに向けるといきなり、がっと俺の両肩を掴むと
 
 
「お願いです!兄の死を…兄の死を調べてください!!!」
 
 
 
青年の勢いに驚きながら、これは確実に櫻井が動きそうな依頼だと思い、事務所に青年を招き入れた
櫻井に青年の話をすると、何も言わずに自分のデスクに腰かけた
 
『お帰りいただいてくれ』の一言が無い
青年は事務所のソファに腰かけてもらう
 
 
「本当にあなたのお兄さんの死に疑問があるのですか?」
 
櫻井はいつものように自分のデスクの椅子に腰かけたまま、俺越しに青年に聞いた
青年 菊池風磨は向かい合ってソファに座っている俺と櫻井を交互に見てから、俺の方を向いて「はい」と答えた
 
「僕の兄 菊池斗真は半年前に、自分のマンションのベランダから誤って転落して死亡したとなってます」
「死亡したとなっている?」
「ええ、僕がその結果に納得してないからです。通常であれば、マンションのベランダには転落防止の柵があります。それを乗り越えれなければ、転落するわけありません。しかも、謝ってなんて…」
 
菊池君の言ったように、マンションのベランダには大人の胸の辺りくらいの柵が付いている
『自分』から柵を乗り越えるようにしなければ、転落するようなことはないだろう
 
「兄は何があっても自分から死を選ぶような人ではありません。だから、絶対に自殺はあり得ないと警察に調べてもらおうと訴えたら、目撃者がいると」
「目撃者?」
「はい。兄の恋人の春日涼子。涼子さんがその場に居て、兄が転落した瞬間を見ていたんです。それも、兄が落ちたのは自分のせいだと言いました。涼子さんのスカーフが風に吹かれて、ベランダの柵を越えて落ちそうになったのを掴んだ瞬間、身体のバランスを崩してそのまま…落ちた兄の手には、しっかりと涼子さんのスカーフが握られてて…」
 
菊池君はそう言ったまま、今にも泣きそうな顔をして俯いた
 
自分の兄の死を話すのは、辛いと思う
俺は少し一息ついてもらおうと、コーヒーを淹れるためにソファから立ち上がった