hidden desire 3 | 青いたんぽぽ

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ぽそぽそと書いてます…
腐なので、ご注意ください(笑)

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「それであなたはなぜ、その恋人がお兄さんを突き落としたと思ったんですか?」
 
今まで黙って聞いていた櫻井が、デスクに両肘をつき組んだ両手を唇に当て、真っ直ぐに菊池君に聞いてきた
 
「突き落とした状況を目撃した人がいたと?」
 
菊池君は櫻井の言葉に顔を上げ、今度は櫻井の方を向いて話し始めた
 
 
「いえ、誰もその姿は見ていません」
「では、なぜ?」
 
「兄は涼子さんとの関係で悩んでいました。2人は本当に仲が良く、このまま何も無ければ結婚するんじゃないかとみんなが思うほどだったんです。でも、死ぬ少し前に俺にだけ「あいつと別れるかもしれない」と言ったんです。まさかあんなに仲の良かった2人が別れるなんて信じられなくて兄に聞いたんですが、曖昧に笑うだけで無いも話してはくれませんでした。それからしばらく経って、兄は死んだんです。兄のことを涼子さんはすごく自分のことを責めていました。でも、最近になって街でたまたま涼子さんが男の人と仲良く腕を組んで楽しそうに歩いたんです。兄が死んでから、もう半年になります。涼子さんには、兄のことを引きずらず幸せになってもらいたいと思っていたので、良かったと思ったんです。だから、声を掛けずにすれ違おうとした時
 
 
「あなたの言う通りにして良かったわ。あんなやつと一緒になんてなりたくなかったもの」
 
 
そうあの女は言ったんです!あんなに仲が良かったのに…兄は、本当にあの女のことを愛していたのに!兄の死をあれほど悲しみ、自分のことを責めていたのに!
すぐにあの女を捕まえて、どうしてそんなことを言うのか聞こうと思ったのですが、すぐに見失ってしまって…
それからあの女のことを調べようとしたんですが、俺が動いたところであの女が本当のことを話してくれるとは思わない。どうしていいのか分からなくって…そんな時に、相葉さんが迷子犬を探している姿を見かけて兄のことをお願いしてみようとここに伺ったんです」
 
「相葉の姿を見かけて?」
「はい」
 
「ほら、俺のおかげじゃん」
 
俺は櫻井ににっこりと笑いかけて、菊池君の前にコーヒーカップを置いた
 
「おかげねぇ…」
「まぁ、その言葉は菊池君は失礼だけど、ごめんね。しょーちゃん、菊池君の依頼受けようよ」
「仕事中にその呼び方はするな」
「あっ、ごめん」
 

櫻井はゆっくりと目を閉じ、右手の人差し指だけを上下に動かした

それは櫻井が何かを考える時の癖の一つ

 

そしてまたゆっくりと目を開け

 

「菊池君」

「はい」

「あなたに、この依頼の覚悟と報酬を払えるだけのお金はありますか?」

「所長!」

「これは、殺人事件の可能性のある案件。あなたのお兄さんの恋人だった人を犯罪者にする可能性の覚悟。そのためにこちらに危険が及ばないと限らない。だからそれに見合ったそれなりの報酬がいる。お支払できますか?」

 

櫻井の言っていることは正しい

けれど櫻井の提示する金額が、菊池君に払えるとは…

 

「大丈夫です。覚悟は出来てますし、金額もお支払いします。だから、お願いします。あの女を。兄の死の真相を調べてください!」