夜に咲く花』に登場した人物像を追加します。

 

 

 

 

5.リラ。

新都にできた歓楽街で5本の指に入る高級娼婦。

『リラ』は彼女の源氏名であり本名は不明。

ライラックの花を意味するリラは、彼女のラテン系の風貌と、情熱的な内面を表現している。

リラは「愛の芽生え」「思い出」「友情」などの意味を持ち、彼女の情に厚い深層を表現しているが、仕事上では決して表に出さない。

このように、プロ意識は高いが傲慢ではない。

緑の目をもち、中南米コロンビアに実在しそうなラテン系の風貌。

 

知性が高く高学歴な人物と対等に会話ができる。

皇兄への好意を隠しとおせる配慮を持ち合わせている。

 

女衒に売られる前は、年の離れた弟(消息不明)がいた。

 

 

 

 

閨の後』に登場した人物像を追加します。

 

 

 

 

6.ジョゴア。

力士の配下。皇兄勉の侍女。

力士が直属の手下を探しているときに志願してきた。

志願時の経歴はあるが、素性がよくわからない。

諜報能力に優れていて、腕力こそないが体さばきが上手い。

車や銃器の知識も深いが、主に暗器を隠し持つ。

普段はナイフ使いで、戦闘では近接戦が中心。

 

容姿はバルト三国の特徴を持つ金髪碧眼。

身長は169.5センチと帝国内の一般女性より高い。

外見は「やや瘦せ」だが陸上スポーツ選手のように必要な筋肉は備わっている。

 

※加筆修正しました。

一階の喧騒が嘘のように静まり返った二階の一室。

 

窓辺にたたずむリラは、夜空を見上げ、艶やかな唇を小さく開いた。 「きれいなお月さま。」

 

その言葉に、部屋の奥に腰を下ろしていた男、すなわち皇兄勉が、穏やかな笑みを浮かべた。 「ええ、本当に……」

 

リラが彼の返事に一瞬、嬉しさを表したのも束の間、隠すように平静を装い彼に微笑みかけた。 その笑みは高級娼婦としての武器だ。自然と他人の緊張をほぐしてしまう口元は『アルカイックスマイル』と呼ばれるが、『古風』や『素朴』とは真逆の、深淵を覗かせる感情を宿している。

そして緑色の瞳は、夜の闇に吸い込まれそうなほど深く、見る者を惹きつける妖艶な光を放っていた。

「殿下がお探しの品について、いくつか心当たりがございますわ。」

 

勉は十代相応の喜色をあらわにした。しかし、すぐに少しだけ思案するような表情を浮かべた。 

「あのアルバ嬢(※アルバの嬢ちゃんの意味)は、宝玉や高級な装飾品など、こと珍しいものに目がないからな。助かるよ。」

 

リラは、殿下の仕草に、一瞬目を輝かせた。 

(やはり殿下も、根は市井の少年と何ら変わらない。弟も……) 彼女は、不覚にも幼い頃に生き別れた弟の面影を重ねてしまう。

その心情を悟られぬよう、彼女は少しだけ意地悪な物言いをする。 

「殿下にはお妃様がいらっしゃいますし、まさかお探しの品が別の女性(にょしょう)への贈り物などと露見せぬよう、近習へではなく私(わたくし)を利用されたのですね。色男も大変ですわね。」

 

勉は困惑の表情を浮かべながら弁明した。 「入手経路から辿られる恐れの無いようにするには、リラの手回しが必要不可欠だ。それとアルバを篭絡するためには、希少な宝玉以外の手練手管も教示してもらわねばな。」

 

リラは、殿下と最初に対面した時を思い返した。 (あなたは最初から素性を明かして、私に相談を持ちかけてきた……。)

あれから、殿下が娼館に足しげく通う目的が、単なる女遊びではないことを悟り始めていた。 若干十代の彼に、並々ならぬ覚悟があることだけは分かる。まだ幼さが残る貴人が、これから何をするのか、何を成し遂げるのか、多くの客から得た経験豊富な彼女でも推し量れないものがあった。 

(あなた様は私が聡明だと認めてくださいました。それに応えなければ)

 

殿下の役に少しでも立てたことが、リラの心の奥底に、小さな幸せと満足感を与えている。 彼女は、弟と年の差が変わらない殿下の身を危惧しながら、あえて親愛や恋情に流されぬよう心に蓋をする。このような経験はリラにとって、これが初めてのことだった。

 

自分の意識を変えるためか、リラは着ていた上着を脱ぎながら、殿下に艶やかな笑みを向けた。

「それでは、これから、その『ご教示』をいたしましょう。どうぞこちらへ」 

 

彼女は、殿下の手を取り夜具のある部屋へ誘った。その仕草は、殿下への警戒心を微塵も感じさせず、むしろ誘惑するように艶めかしかった。

 

つづく

 

※表現に不備な点があれば訂正していきます。

 

※加筆修正しました。

煤けた外套を羽織り、深く帽子を被った男。その男は、周囲を警戒するように見回しながら、足早に娼館へと入っていった。その後ろには、いつも通り、宦官の私が控えていた。

 

男が二階へと消えていくのを見届け、四半時が経つ。

 

チッ!

店の喧騒を打ち消すように、男が盛大に舌打ちをした。

日も暮れて煌々と赤く怪しい明りで溢れ、行き交う人々の笑い声や嬌声が飛び交う中、いかにも身なりを整えた官吏風の小太りな男は、露骨に苛立ちを露わしはじめた。

 

男と、緑のポロシャツを着たカジュアルな男。この不釣り合いな二人組は、相対する机の上で、それぞれの時間を過ごしている。

 

酔いが回ってきた官吏風の男は、先ほどから口調だけでなく態度まで締まりがなくなり始めている。

 

「おい!酒が無くなってるぞ。おい!

 

店の女中へ声をかけるが、来店客が増え始め、なかなか注文を取りに来ない。

 

二階から降りてきた私は、店の厨房へ急ぎ彼の好みの酒を受け取り盃へ注いだ。

「お待たせいたしました。どうぞ」

 

宦官に酒を注いでもらってもなぁ、ちっとも美味くねえんだよ!」

官吏風の男は、聞こえよがしに店内の他の客へも届くように、少し大きめの声で答えた。

 

「まあまあ。そのようなことを言わずに」

ポロシャツの男が、官吏風の男の言葉を遮るように、たしなめた。

 

酔客特有のドロンとした濁った眼を向け、私に何か嫌味を言いたそうに口をへの字にしていた官吏風の男だったが、すぐに矛先を変え、ポロシャツの男に酒を勧めた。

「貴殿も一杯ぐらい、どうですか?非番なんでしょ?」

 

「まあ、勤務時間外ではありますが…私は酒が強くないので…はは」

ポロシャツの男は、酔いどれのダル絡みを受け流し、皿に盛られている肉野菜炒めを自分の小皿へ取り分けている。

 

「…そもそも」

官吏風の男は、盃に注がれた酒を眺めながら、独り言のように愚痴を続けた。

「いくら関白殿から内々の頼みとはいえ、貴殿も私も仕事時間外にですぞ、こう何度も殿下のご趣味に付き合わされるとなると迷惑至極だ。」

 

「アホネン殿!それは不遜というものですぞ。」

 

官吏風の男が「迷惑至極」と言い終わる前に、ポロシャツの男が遮った。普段よりも低いが、聞いている者がハッと我に返るほど重く鋭い声色。そして歴戦の軍人としての本性を現したかのような眼光だ。

 

その気迫に、アホネン課長の酔いは一瞬で醒めた。

「だ、だがしかし高野どの、こうも頻繁に娼…このような如何わしい店へ通われるのはいかがなものか?少尉も思いませんか?」

 

高野少尉は、肉野菜炒めを口に運びながら、静かに答えた。

「……皇兄殿下は、我々尉官に教えを乞われました。その知識の吸収力は、目を見張るものがある。その聡明さは…」と擁護するような口調になっていることに気が付き、彼は襟を正して続けた。

「殿下には何か意図があるように思えます。それに、貴殿も私もあくまで目付け役。公私の区別は弁えているつもりです」

 

アホネン課長は、鼻を鳴らし、再び酒を煽った。

「ふん、苦労するな。あんな『うつけ』の相手をするとは……」

私に向けられたアホネン課長の嫌味を無視し、無言で課長の酌と適当に肴をそえる。

 

「まあまあ、関白殿の好意で貴殿はただ酒が飲めて、私もココの名物料理を堪能できる。それで良いではないですか?今は楽しみましょう。わっはっはっはっ。」

高野少尉は、先ほど一瞬垣間見せた厳しい顔つきが嘘のように、人好きのする笑顔へ戻っていた。

 

二人の相手をしながら私は、事件以後から殿下の変容を思い返していた。

私には殿下への忠誠心と、それに反して殿下の行動に対する疑念が渦巻いている。

(殿下は、なぜ頻繁に娼館へ通われるのか?本当にただの道楽なのか?それとも、少尉が言うように何か別の目的があるのだろうか?)

 

私は、殿下の真意を探ろうと、密かに情報収集を続けている。しかし殿下は常に周囲を警戒し、近習の私だけでなく誰にも本心を明かそうとはしなかった。

 

(事件後の殿下を身近で観ているが、あのお方の行動は、まるで霧の中に隠された謎のようだ)

 

私は、皇兄殿下に仕える身でありながら、彼の行動に何か危険なものが潜んでいるのではないかと感じていた。それは、私が宦官として、常に権力闘争の渦中に身を置いてきた経験からくる、第六感のようなものだった。

 

つづく

 

 

※表現に不備な点があれば訂正していきます。

 

※加筆修正しました。