「それにしても、ジョゴアのやつ……。」

私は墾農王邸へ戻る助手席内で、先の出来事を物思いにふけっていた。

 

 

 

皇兄、勉殿下は、顔面蒼白で口から泡を出して苦悶の表情で息を引き取られ、侍医が死亡診断書をリー近衛長官へ手渡し、二人が部屋を去った後のことだった。

 

殿下に抱きつき、タン王妃は泣きながらその体に縋りついていた。

 

いくらタン王妃が声をかけても微動だにしなかった殿下の体が、突然痙攣し、口から赤黒い血を吐いて蘇生されたのだ。

 

三日三晩もの間、意識不明の危篤状態が続いたが、一度死亡と認定した帝国政府(関白側)は、この異常事態へ、更なる刺客を送り込むことができずにいた。

 

意識が戻られた殿下が、看病する我々一同へ最初に口にされた言葉は、私に向けられたものだった。

 

「あれは仕方がないことだ、そなたは、あの状況で最善を尽くした。」

 

その労りの言葉に、私はあの時、偽らざる自分自身の心に誓ったのだ。終生の忠誠を。

 

床上げをされた殿下は、私に最初の命令を下された。

「遷都後に関白の暗殺を企てて獄に繋がれている者が幾人かいたはずだ。獄中にいる政治犯のリストを秘密裏に作ってほしい。」

 

私が人物リストを提出し、その書類に目を通されていた殿下は、続けて質問された。

「獄中へ潜入し、政治犯と接触できそうな人物を雇えないか?」

 

あの時は、皇兄殿下が政治犯と結託して関白へ謀反を起こすのだと、私は考えていた。そこで、男女問わず秘密裏に人選した結果、私はジョゴアを雇い、殿下へ推挙したのだった。

 

(しかし、それ以後の殿下は……。)

 

私の想像をはるかに超えた行動の連続だった。それは、この都に留まるだけでは成し得ない、壮大な計画の始まりを予感させるものだった。

 

つづく

 

※表現に不備な点があれば訂正していきます。

 

※加筆修正しました。

漆黒の宇宙空間に、幾筋もの光線が明滅し、無数の光点が散ってはまたたく。

 

連邦軍の可変型モビルアーマー(MA)部隊。その一機のコクピット内は、緊急を示す赤い光に染まっていた。

 

「くそっ!デコイは撒いたはずだぞ、なぜここまで正確に狙われる!?」 けたたましい警報音が鳴り響き、パイロットの苛立ちを煽る。

 

「右脚部が機能不全か?ロートル機め、可変機構の整備不良か!この状況で、何とか挽回できるのか?」 機体はさらに不安定になり、操縦は困難を極める。

 

「推進剤も底が見えてきた、これ以上は危険だ、早く帰還せねば…。……敵パイロットはカルメン・ダイクン。……ダイクンだと?……この名前、士官学校の歴史講義で聞いたような気がするが…?」

 

その時、通信が入る。

 

「ザザザ…中尉!援護します!」

前方を進んでいた8機の編隊から、2機が反転し、猛烈な勢いでこちらへ向かってくる。中尉が搭乗する可変型MAに酷似した僚機が、高速巡航形態から戦闘形態へと変形を開始する。

 

「来るな!狙われている!罠だ!」 中尉が警告するも、時すでに遅かった。

 

中尉は自らの予測をも上回る最悪の結果を目の当たりにする。

 

先行していた6機の機体が、突如として放たれた四方八方からの光線によって巨大な光に包まれ、漆黒の静寂に帰した。

 

「…くそっ!先行部隊が待ち伏せされたのか?」

 

先ほどまで6機の機体が存在した宙域の少し先、後方から追ってきたMAと同じ、白銀の機体が見える。

 


白銀のMAのコクピットに、雑音交じりの秘匿通信が入る。

「ザザッ…撤収よ、シビル。」

 

パイロットが応じる。 「カルメンは優しすぎます。殲滅しましょう。」

 

「指令からの…ザッ…命令よ。敵の任務は阻止できたから…この宙域は物騒だわ…海賊やテロリストなどが潜んでる…ザザ…。」

 

パイロットは呟いた。 「…海賊とテロリストを区別するの?」

 

「聞こえてるわ。海賊は…義賊だとの噂もあるし…私たちだって連邦から見れば残党だっ…ザザ…テロリスト呼ばわりされてるのよ」と返事が入った。

 

「私は正義を信条にやってます。」

 

「正義と悪は観方次第で…ザッ…逆転するわ。」

それ以上は不毛な議論だと諦めたパイロットは、最後に「了解!」と言って通信を切った。

 

一方、生き残った連邦軍の士気はパニックに陥っていた。 

「やってやる!」

 

「やめろ曹長!」

 

「なめやがって。これでもくらえ!」

中尉の制止も聞かず、それ以上追撃してこないパールホワイトのMAに、僚機の一機からメガ粒子砲が放たれた。

 

メガ粒子砲は、敵のMAに到達する前に反射され、援護しに来た機体は溶けるように消失した。

「リフレクターかっ!」 中尉は歯ぎしりしながら、くぐもった声で唸った。

 

 

※表現に不備な点があれば訂正していきます。

 

※加筆修正しました。