「それにしても、ジョゴアのやつ……。」
私は墾農王邸へ戻る助手席内で、先の出来事を物思いにふけっていた。
皇兄、勉殿下は、顔面蒼白で口から泡を出して苦悶の表情で息を引き取られ、侍医が死亡診断書をリー近衛長官へ手渡し、二人が部屋を去った後のことだった。
殿下に抱きつき、タン王妃は泣きながらその体に縋りついていた。
いくらタン王妃が声をかけても微動だにしなかった殿下の体が、突然痙攣し、口から赤黒い血を吐いて蘇生されたのだ。
三日三晩もの間、意識不明の危篤状態が続いたが、一度死亡と認定した帝国政府(関白側)は、この異常事態へ、更なる刺客を送り込むことができずにいた。
意識が戻られた殿下が、看病する我々一同へ最初に口にされた言葉は、私に向けられたものだった。
「あれは仕方がないことだ、そなたは、あの状況で最善を尽くした。」
その労りの言葉に、私はあの時、偽らざる自分自身の心に誓ったのだ。終生の忠誠を。
床上げをされた殿下は、私に最初の命令を下された。
「遷都後に関白の暗殺を企てて獄に繋がれている者が幾人かいたはずだ。獄中にいる政治犯のリストを秘密裏に作ってほしい。」
私が人物リストを提出し、その書類に目を通されていた殿下は、続けて質問された。
「獄中へ潜入し、政治犯と接触できそうな人物を雇えないか?」
あの時は、皇兄殿下が政治犯と結託して関白へ謀反を起こすのだと、私は考えていた。そこで、男女問わず秘密裏に人選した結果、私はジョゴアを雇い、殿下へ推挙したのだった。
(しかし、それ以後の殿下は……。)
私の想像をはるかに超えた行動の連続だった。それは、この都に留まるだけでは成し得ない、壮大な計画の始まりを予感させるものだった。
つづく
※表現に不備な点があれば訂正していきます。
※加筆修正しました。