【観劇日記】『アジア気候変動についての5つの試み』 | 観劇のためのプチ備忘録

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観劇やダンスが趣味です。
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團十郎襲名公演中は歌舞伎を集中して観ます。
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先月、高田馬場で『アジア気候変動についての5つの試み』を観てきました。

5人の演出家が気候変動をテーマに5つの作品を上演していました。

「Asia meets Asia(アジア現代舞台芸術交流活動)」主催です。


5人の演出家はパフォーマーでもあり、それぞれの作品に相互出演をしていました。

ギリシア劇のコロスのようにモブ的なものだったり、配役がついていたり、と出ずっぱりでした。


朗読あり、ダンスあり、お芝居あり、パントマイムあり、大道芸あり、

もう何でもありでした。


「Asia meets Asia」の名の通り、日本語だけでなく、英語や中国語、韓国語が舞台を飛び交っていました。

日本、中国、韓国、インドのアーティストが参戦していたのです。


今回は、気候変動という社会問題にリンクした作品群でした。

いわゆる、「ソーシャリーエンゲイジドアート」です。


5つの作品の中で気に入ったのは、「銀の水」。

シアター・プラクティショナー花崎囁(はなさきせつ)さんの作品です。

「銀の水」とは、水銀のことです。


作品は大気の話から始まり、

『不思議の国のアリス』いかれ帽子屋が登場し、狂ったダンスを踊ります。

帽子屋がかぶる帽子はフェルト。


昔、フェルトを作る時は水銀を使っていたので、帽子屋は水銀中毒になっていたようです。

アリスの帽子屋も狂っている設定ですね。

『不思議の国のアリス』は社会風刺の作品です。


そして、『不思議の国のアリス』のチシャ猫の話から「踊る猫」の話へ。


わかりますか?

「踊る猫」は水俣病による公害問題を象徴しています。


人間に水銀の影響が出る前に、海岸で踊る猫が目撃されたのでした。

人間より体積の少ない猫に影響が先に出たようです。


モチーフからモチーフに飛び、モチーフを重ねて、

金の鉱山で蒸発して大気に散らばる水銀の話で作品は締められました。


ラストの鉱夫のセリフは、水銀がないと、金の採掘ができず、お金を稼げず家族が暮らしていけない、というものでした。

水銀を必要悪として、認めています。


しかし、金を固めるために蒸発した水銀は、空気中で、いつまでも消えることはありません。

お金のために消して消えない水銀を大気に放つのか。


「ソーシャリーエンゲイジドアート」は、観劇後の観客に社会問題について考えさせる効果があります。

見終わった後も思考がループするわけです♻️


…テーマは難しかったのですが、すべての作品上演後、なんと!出演者たちと歓談の時間がありました。

ビールと軽食が用意され、作品の解説や出来上がるまでのプロセスを聞けるという✨


私は囁さんのところにダッシュして、お話をすることができました。

出演者とお話ができるスタイルは好きですねデレデレ

良い時間を過ごせました。