名作の楽しみ-417 第163回芥川賞受賞作品「首里の馬」「破局」 | 松尾文化研究所

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名作の楽しみ-417 第163回芥川賞受賞作品「首里の馬」「破局」

 

「首里の馬」。中学生の頃から沖縄の郷土資料館の資料整理を手伝う未名子は、世界の果ての遠く隔たった場所にいる人たちにオンライン通話でクイズを出題する。じっくりと進んでいく物語。文章力はあると思うが、何とも長ったらしい感じがつきまとう文章。いつ終るか分からない焦燥感みたいな物を感じて、途中で投げ出したくなるが、何とか最後まで読み通せた。沖縄の悲劇がベースになり、主張する内容、登場する人物はいずれも個性がありその表現も悪くはないが、その歯切れの悪さがその主張や表現を曖昧にしてしまっている。

 

「破局」。こちらは一流大学の体育系学生のセックスを中心とした日常生活が描かれている。物語の流れに切れがなく、上記の作品同様途中で投げ出したくなるような物語の進行状況。一例を挙げれば、登場人物に時折語らせるのが、それが何とも長ったらしく、何を言いたいのか分からない。 そして、最後はこの題名の破局が唐突にやって来る。わざと分かりにくくして読者ではなく審査員に媚びているのかと疑ってしまう作品であった。

 受賞作は2作、ダブル受賞。しかし、内容は全く違う。「首里の馬」は主張は感じられたが、「破局」には何も感じられなかった。いずれも文章の切れが乏しく、だらだら感があり、特に内容に乏しい「破局」には感動とか充実感とかからはほど遠かった。こういう作品がここのところ続いているように思う。純文学というジャンルがこういう方向に行くとしたら、とてもついて行けないなとつくづく思った次第である。純文学は真実を描く、そして、そこには充実感が漂う、傑作になれば深い感動を呼ぶ。そういった作品を切望している。