末 法万年の仏法(16)
日蓮大聖人御書(大石寺)下種仏法の教義【女人成仏抄】文永二年、四十四歳、鎌倉〈法華経八巻二十八品、五の巻提婆達多品第十二〉 提婆品に云はく「仏、諸の比丘に告げたまはく、未来の中に、乃至蓮華より化生せん」此の提婆品に二箇の諌暁あり、所謂逹多の弘経は釈尊の成道を明かし文殊の通経は竜女の作仏を説く、云々。仏法は如何なるをか修行して生死を離るべきぞと申すに、但一乗妙法にて有るべく候。此の経より外はすべて成仏の期あるべからず候上、殊更に女人成仏の事は此の経より外、更にゆるされず結句爾前諸経にては、をびただしく嫌はれたり。銀色女(ごんじきにょ)経に云はく「三世の諸仏の眼は大地に堕落すとも法界の諸の女人は永く成仏の期無し」又、女人には五障三従と申して、内典には五障を明かし、外典には三従を教へたり。其の三従とは、幼にして父母に従ひ、嫁しては夫に従ひ、老いては子に従ふ。天台大師云はく「諸経には但菩薩に記して二乗に記せず、但男にして女に記せず」とて、全く余経には女人の授記これなしと釈せり。 然るに智慧第一の舎利弗、小乗、権教の意を以て難ぜられしかば、文殊は竜女成仏の有無の現証、今仏前にして見え候べしと仰せし。案にたがはず竜女蛇身をあらためずして仏前に参詣し、価値三千大千界と説かれし如意宝珠を仏に奉りし所、仏悦んで是を請け取り給ひしに竜女は作仏し、名をば無垢証如来と号すなり。されば女人成仏の手本是より起こりて候。伝教大師云はく「能化の竜女歴劫の行無く、所化の衆生も歴劫の行なし、妙法経力(きょうりき)即身成仏す」 法華已前の諸経の如きは、縦ひ人中天上の女人なりと云ふとも成仏の思ひ絶えたるべし。而るに竜女、畜生道の衆生の姿を改めずして即身成仏せし事は不思議なり。是を始めとして具足千万光相如来等と授記(成仏の確約)を被り、鬼子母神、十羅刹女は法華経の守護神とならせ給へり。然れば尚殊に女人の御信仰あるべくありがたき御経にて候。【薬王品得意抄】文永二年、四十四歳 此の薬王品は法華経第七の巻、二十八品の中に第二十三の品なり。第一の巻には序品(第一)方便品(第二)の二品有り、序品は二十八品の序なり。方便品より人記品に至るまでの八品(方便、譬喩、信解、薬草喩、授記、化城喩、受記、人記)には正に二乗作仏を明かし、傍には菩薩、凡夫の作仏を明かす。次の法師、宝塔、提婆、勧持、安楽行の五品は上の八品を末代の凡夫の修行すべき様を説くなり。次の涌出品(第十五)は寿量品(第十六)の序なり、分別功徳品(第十七)より十二品(分別、随喜、法師功徳、不軽、神力、嘱累、薬王、妙音、観世音、陀羅尼、妙荘厳、普賢品第二十八)は寿量品等を末代凡夫の行ずべき様を説くなり。然れば此の薬王品は方便品等の八品、並びに寿量品を修行すべき様を解きし品なり。 又、此の品には女人往生を説く。仏は昔凡夫にまします時、小乗経を習ひて五戒を受け給ひ、其の中の不妄語戒を固く持ち給ひき。大乗経を習ひ給ひし時、十重禁戒を持ち、其の中の第五の不妄語戒を固く持ちて無量劫之を破り給はず、終には此の戒の力に依りて仏身を成じ、三十二相の中に広長舌の相を得たまへり。而るを此の薬王品に女人往生を許されし事、銀色女経の妄語なるか。無量義経の「四十余年には未だ真実を顕はさず」妙法華経に「世尊の法は久しくして後、当に真実を説き給ふ」爾前四十余年の間、二乗、悪人、女人は嫌はれしが、法華経に至りて成仏ゆるされ給ふなり。