春霖 | 明鏡 ーもうひとつの信義ー

明鏡 ーもうひとつの信義ー

韓国ドラマ『信義ーシンイー』二次小説



姉様のおかげで最後まで書き終わりマシタ
次のお話続きリクエストもお待ちしています❤︎

真凛からのお願い
このお話を読む前に
坂本龍一さんのHappy Endを
お聞きください
ピアノ音が雨音に聞こえます




『降るわね』

貴女は縁側で空を見上げつつ呟いた
纏めあげた髪から溢れ落ちた後れ毛が透けて見える
白い衣の裾に屋根から伝い落ちた雫がかかった

「風邪をひきますよ」
「雨の日に何もしないのっていい気分なのよ」
「では、此方で」

俺は貴女の手をとり立たせ居間の長椅子へと誘った
窓は開け放ったままに
春の雨がもつひんやりとした気が俺達を包む
俺は寝屋に行き上掛けを掴んだ
そしてあの方の背に掛け俺もその中に入った

「ヨボ」
「俺も一緒に・・・」
「ありがとう」

貴女は俺の肩に頭をのせ俺の手を握りしめた
指と指が絡み合い僅かな手の温もりが沁みじみと幸せに感じる
貴女のおかげで俺の人生は全く違うものとなった

「やっぱり此処はいいわ」
「待たせました」
「長いようで、一瞬だった気もするの」

もたれた頭を少しずらし俺と目を合わせた
一年の殆どを戦の為に屋敷を開けた時もあった
言われなき罪に問われ投獄をされた時もあった

「ヨボ」
「どうしました」
「雨あがらなかったらいいのに」

俺の腕に自らの腕を巻き付け微笑む貴女は少女のようだ
白くやわらかな額に俺はそっとくちづけた

「約束いたします」
「ヨボ」
「俺はもう何処へも行きません」

貴女が望むのなら俺は全てを捨てご一緒します
何処へでも

春の長雨は三日三晩降り続いた
貴女と俺は閨から出ずに眠ったさ
四日目に空はカラリと晴れ上がった
泥濘んだ庭先で貴女が文句を言っていた

「洗濯物が溜まったわ」
「イムジャ」
「ヨボ、手伝ってよ。またいつ出て行くか分からないんだから」

その時も貴女はやはり微笑んでいた
白い手が俺に伸び節くれだった俺の手を掴んだ

「早くしないと又雨が降ってくるわよ」
「其れは大変だ」

俺は引かれるままあの方に付いて行った
此処より先は貴女の命ずるままに

雨の降る日もあるだろう
晴わたる空を見上げる日も
寒さに凍える日は貴女と肩を寄せ合いつつ凌ぎ
暑さの堪える日は貴女と桶に張った水に足を入れよう

貴女とともに永遠に