俺の事はどうでもいいのか | 明鏡 ーもうひとつの信義ー

明鏡 ーもうひとつの信義ー

韓国ドラマ『信義ーシンイー』二次小説



ゴールデンウィークなので特別versionヲ❤︎
こんな三つ巴はドウデショウ(*≧∀≦*)
本編には全く関係無いデスとは言い切れナイ





男ばかりの兵営でたった一人の女が将軍だとは
初めの頃は誰が落とすかで騒ぎになった
数日もすれば怖がり誰も近寄りもしない

「寝ているみたいですね」

山のように大きな体だというに俺の後ろから話しかけてくる

「ドンソク、ビクビクするな」
「隊長。可愛いのは声だけですよ、あの女」
「将軍だろ、可愛い訳などないだろう」

俺はドンソクの脇を肘で小突いた
鍛え抜かれた体は俺の肘を押し返してくる
そんな体の男でさえも怖気させる女だとは

「もう三年近く見ていますが」
「何が言いたいドンソク」
「アレは女じゃない」
「馬鹿か。あの方は女じゃない、将軍だ」

どうして見た目に惑わされる
艶やかな明るい髪
象牙色をした肌
黒曜石の瞳
細く白い指先に桃色の爪
しなやかなで張りのある肢体
そんな体を持った女がどうして将軍になるというのだ

「なるにはなるだけの理由がある」
「隊長は、気にならないのですか?」
「俺がか?」

ならないわけないだろう
なっているさ、十分

「そんな事より」

郷兵として仕えてきた俺達がどうして都を守る
王様直轄の私兵になったのか
今一つ理由がわかならないままだ

「お待ちください、お願いです」

甲高いイ・ジュノの声が真新しい兵営の廊下に響いた
しかも泣いているのか

「うるさい、静かにしろ」

俺がジュノを制する前にジュノに止められていた男が発した
廊下を動く影は大きく
姿がはっきりと見えるか見えないかの頃に
髪は無造作に切られサントゥではない

「王宮でサントゥではない男といえば・・・」

俺が思わず口に出した時、その男は俺を睨みつけた
「お前もな」
不機嫌にもほどがある言い方であった
喧嘩を売っているのか、どちらが強いか比べてもいいんだぜ

「サントゥで、文句を言いたい方がいる」

俺の肩を右手でドンと突き飛ばし奥へと大股で歩く
部屋の前には赤い虎が一匹前足を枕に寝そべっていた

「退け」

赤虎を跨ぎ扉に手をかけ体で押し開けた
「虎ちゃんにやられますぜ」
「ドンソク、虎ちゃんにやられるならもっと早くに飛んでくる」
匂いを嗅ぎつけた瞬間、天を跳ぶが如く瞬時に目の前にいる
幻かと最初は思ったが、吐く息の獣臭と口から垂れる流涎の生ぬるさ
伸し掛かかられ肩に食い込む怒り爪の感覚
どれをとっても幻でもなんでもない

「やられますぜ」

赤虎はシュンと音をたて消えてしまった
ドンソクは俺の肩を叩きつつ赤虎を指差し
王宮の池で泳ぐ鯉の如くパクパクと口を開いたり閉じたりした
そういえばドンソクは、初めて池の鯉を見た時
非常食かと覗きこみ生唾をのんでいたな

「一体だれだ」
「近衛隊長殿です」

追いかけるように走ってきたジュノはやっと俺達の真後ろに来ていた
「私の従兄弟なのです」
「あのイ大臣の息子って事か」
「はい。勇ましいでしょう」
身内だから手を抜き兵営にまであげちまったって事かジュノ
俺はいつまで経っても緩いジュノの額を無意識に指で弾いていた

「いっ・・・いたい」
「もう十六だろう、嫁の一人いても」
「隊長そのままお返しします。三十前にして京妻も郷妻もいないじゃないですか」

三十過ぎてもいないのはお前の従兄弟もそうだろう
見せかけのサントゥを俺は手で撫ぜた

「将軍の寝込みを襲い何事もないなどありはしないさ」

コテンパンにやられたらいいのだ
俺達は手助けしないさ

「開京に戻ってきたと言うのに」
「あーーーん」
「何が「あーん」ですか」
「俺はですね」
「もうちょっとだけ、一緒に寝ようか」
「一緒にですか・・・いっしょ・・・」
「脱いで、入って・・・ねっ」
「寝るだけですか?」

なんだ
ドンソクとジュノの顔が赤らみ
あれ程怖いと言っていた将軍の部屋すぐ前まで近づいていく

「ちょっとだけだったら」
「ちょっとなら遠慮します」
「ちゅっ・・・だけじゃダメ?」
「無理です」

あああああ・・・耳が腐る
兵営じゃない何処かでやってくれ
「お前達も何聞いているのだ」
「今良いところです。あとちょっとで」
「あの女の鼻にかかった甘ったるい声が聞きたいのか」
首を横に振ると思った
しかし二人の首は縦に振られる

「勝手にしろ、だがな良いところになった途端虎ちゃんが出てくるぞ」
「そんな」
「俺は賭けてもいい」

俺は両耳を両手で塞ぎ兵営の入口へと歩きだした
出来れば一生聞きたくない
俺以外の奴に頼る声も啼く声も

俺の事はどうでもいいのか・・・ユ将軍

聞いてみたいが、そうねと返された日には
縁を切ったあの父の元へ走るかもしれぬ
たとえ戦の時だけだとしても

ただ傍においてくれ