「ヤバいよ。あたし知らないよ?
奏、他の男に取られちゃうよ?」
…………ぇ?
「由美、どういうこと?
こいつ固まっちゃったぞ。」
「どうやら告られたらしいの。
でも急に言って帰っちゃったらしくて。
あの子自身も混乱してるみたいよ。」
「ピンチだ。優希くん、ピンチ到来。」
笑い事じゃねぇっての。
「仲直りしにいきなよ。
まだ間に合うって。」
由美、ありがとう。
「俺、行ってくるわ。」
「「行ってらっしゃい」」
「やっとあいつも動いたか。」
「ピンチ来てからじゃ遅いよね。
早く動てればこんな
心配しなくて済むのに。」
「ほんとだよな。」
「でも、いいなぁ。」
心底 羨ましそうに優希が出て行ったドアを見ている。
「何が?」
「だってあんなに思われてる奏って
幸せ者だと思わない?」
人のことばっかり心配して自分のことはいつも後回しにしてるもんな。
「そうだな。…きっと由美にもいるって。
幸せにしてくれる人。現れるよ。」
訝しげに俺を見る。
「どうしたの?慰めてんの?
あんたらしくない。」
笑うなよ。チャラチャラしてる俺をこんな風にさせたのはどこの誰だよ。
こんなに校舎が広く感じたのは初めてだ。俺は急いだ。早く会いたくて。取られたくなんかない。取られてたまるか。こっちの方が片思い期間長いんだぞ。
「吉村!お前ちょうどいいところに。」
ちょっと待てよ。なんで今 先生に捕まるかな。
「このプリント、配っといてくれ。」
ドサっと大量のプリントが渡される。頼む、今はやめてくれ。
「頼んだぞ。」
先生は満足そうに通り過ぎていった。
はぁ。仕方ない。とりあえず奏を優先したい。
プリント持ったままだからスピードはかなり落ちた。
奏のいるであろう教室に近づくと緊張した。なんせ、あいつと喧嘩なんて初めてなんだから。
でもこんなに緊張したのに教室を見渡しても奏はいなかった。
「奏どこ行ったか知らない?」
入り口付近にいた生徒に聞いた。知らないようだった。
くそ、なんでいないんだよ。
しばらくは奏の行きそうな場所を探したが見つからなかった。そろそろプリントを配りに行かなきゃヤバい時間だ。自然とため息が出た。
結局放課後になるまで会いにいけなかった。
他のクラスより少し長引いたHRも終わり、急いでいつもの教室へ行った。彼女は待っていないかもしれない。いや、喧嘩してるんだから待たないのが普通なんだ。
教室に入る前からいないのがわかった。空っぽの教室。気のせいだと思いたくて確認したけどやっぱりいなかった。仕方ないよな。帰りに家に行こう。
諦めて帰ることにした。一人で帰るのがこんなに寂しいものなんだと思い知った。