「よしっ。チャージ完了。
行くぞ、奏。」
バイト先には優希目当てのお客さんが結構来る。
お客様だから、と優しく接する。それが凄く疲れるらしい。バイトが終わる頃には精神的にボロボロになっている。ただ会いにきたり、レファレンスを頼むのはいい。でも中にはあの手この手で優希を自分のものにしようとする人もいる。それがかなり厄介だ。
おじいちゃんは書庫の整理を勧めるけど優希は行かない。時には私にいかせる。そこまでして接客することもないと思うんだけど。
「すいません。」
せっかくおじいちゃんが言ってくれてるのに、馬鹿だよなぁ。
「すいません!」
「っ!はい!なんでしょうか?」
青年だった。同じ歳くらいだろう。
考えすぎて気がつかなかった。普通、客は優希に話しかける人ばかりで私には話しかけられないし。
「これ、買いたいんですけど。」
青年が小説を差し出してきた。文学少年なのだろうか。いかにもスポーツ少年っぽくて、少し意外だな。
「はい。では、こちらで。」
レジに着くまでの間も会計の間も話しかけてくる。
「今日はおじいちゃん、
いないんですね。」
「今は書庫の整理をしているんです。」
青年は初めて黙り込んだ。チラリと辺りをうかがってから私との距離を少し詰めた。