【再会】◆オリジナル作品◆


『紗希(さき)…?』

「た…拓弥(たくや)…?どうして……」

こんな所で前彼女に出会うなんて…


「元気してた…?って言い方、変かな…」

『元気…だよ…元気……』




紗希とは8年前に別れた。

結婚を前提に考え、将来産まれてくるであろう子供の名前まで一緒に決めていた。

毎日が楽しく、仕事を休んでまでも会っていた。


別れてから今まで出会いもあり、数人の女性とは付き合ったが、彼女の事が1日も忘れられず、どの女性も遠退いていった。

紗希以上に魅力ある、僕と合う女性が居なかった。

毎日夢に出てきた。


誰よりも僕を愛してくれた彼女を裏切った自分を責めた。



『紗希…あの時は本当にごめんなさい。ずっと謝りたくて…ごめんなさい。ごめんなさい』

「拓弥…もう大丈夫よ。私の方こそ、ごめんなさい。辛かったよね」

もう泣く事しか出来なかった。

子供のように泣いた。




『紗希…』


「私……病気して…」

『そうか…』

彼女の方が辛い日々を送っていたに違いない。

だからそれ以上の事は聞かなかった。

『少し一緒に歩く?』

「うん」

こうして紗希と出会って、また一緒に居るなんて信じられず言葉には表せない気持ちだった。

久しぶりに会ったのだから、お互いの辛い過去なんて一切触れず、ただ僕は事故に遭ったとしか言わなかった。

付き合っていた時の思い出話や、2人しか知らなかった話題で盛り上がった。

紗希の笑顔はあの時と全く変わってなかった。

あっという間に時間が過ぎた。


『これからどうする…?』

「そうだね…今さら時間だなんて言うのも変だし…どうしよ…」


『しばらく一緒に居てくれる?』

「うん。もちろんよ」

『ありがとう』


紗希の言う通りだった。

時間なんて関係ない。


やっぱり改めて紗希の事が大好きだったんだと思う。


『こんな所で言うの変だけど…今が一番幸せだと感じる』

「…私も…拓弥とはやっぱり運命だったんだね」


確かにこの時に初めて運命というもの信じた。

僕は…




















2日前に交通事故で死んだ。


目が覚めると真っ白な空間に立っていた。

宿命であり何であり人間が命をまっとうした末に最終的に来るであろう、天界だった。


そこで紗希と出会った…



仕事であくせくする事無い、

お金や時間の制限も無い、

空腹や痛みや疲れも無い、

ただひたすら真っ白な雲だけが広がる何も無い空間…








2人で手を繋いで雲を見た。

綺麗な透き通る雲を。

どこまでも果てしなく続く雲を…
【お母さん】


『アキラには、この首輪が似合ってるわ』

「そんな……嫌だよ!こんな首輪なんて…!」

『お黙り!』

「だって…そんな…」

『またお父さんに泣きつこうとしてるようだけど無駄だからね』



きっかけは些細な事だった…

昨日ー

『もうこれ以上イライラさせないで!!』

バシィンッ!!

「痛い!ごめんなさい!ごめんなさい!」

『もう4歳にもなるのに、そんな事も分からないの!?またお仕置きされたいの?洋服もオモチャも何も買ってやらないからね!!』

「ごめんなさい…」

そういえば、もう3日間も同じ洋服を着せられてる…

オモチャと言っても、ぬいぐるみが1個だけ…


ソファーで寝てるだけでお母さんから叩かれた。

でも同じようにお父さんは寝てて何も言われないのにどうして僕だけ駄目なのかな…

お仕置きと聞いたら怖い…

例え真冬でも必ずベランダに放り投げ出されるから。

今日はお母さんが首輪を買って来て僕に着けた。

もう自由が無くなった気がした。

今後もうお母さんを怒らせないようにしなきゃ。


毎日そんな事ばかり考えてるけど、どんな事で怒られるか分からない…


今日も台所から良い匂いがする…

一番辛い時間だ。

どんなに美味しい料理でも僕は食べるのを許されない。

たまにお父さんがこっそり食べさせてくれるのが楽しみだけど、そんな毎日あるわけじゃない。

前に我慢出来ずに盗み食いしたらお母さんが今まで見た事も無い恐ろしい顔で怒って叩かれたあげく一晩中ベランダで放置された。


明日は久しぶりに買い物に行くみたいだから僕も何か買ってもらうために怒られないように頑張らなきゃ。




夜、そろそろ寝ようとしてたらお母さんが来た。

また何か言われるのかなとビクビクしてたら…

『アキラ…さっきはごめんなさいね。痛かったよね…』

と僕の頭を撫でてくれた。

『今日はいつもよりたくさんチョコレートあげるし、明日は別のを買ってあげるから許してね』

そう言うとお母さんは大きなチョコレートをくれた。

「ありがとう…僕の方こそ、さっきはごめんなさい」


僕は…



















尻尾をふりながらチョコレートをくわえて小屋に入って、ゆっくり味わって食べた。


4年前、街で捨てられていた僕を優しく抱いてこの家で飼うようにしてくれたから【お母さん】と呼んでる。

明日は気に入った首輪を買ってもらえるから楽しみ。


これからもよろしくね、お母さん。

【屋台】


1954年、アジア近辺某所ー

人通りも少ない夜道で評判の屋台があった。

サイモンという男が営むその屋台は夜の僅かな時間のみに営業していたのだが連日客で溢れる繁盛ぶりだった。

その一番の理由は《全品100円》という安さ。

またどの料理も一度食べたら「まだもっと食べたい」と病み付きになるほどの美味しさで常連客を確実に掴んでいた。

中でも《揚げたてハンバーグ》や《唐揚げ詰め合わせ》は好評で品切れの際には客同士がトラブルを起こすほどの人気ぶりだった。

しかしながら彼がなぜあれほどの食材を駆使して全品100円で儲けが出るのか、そのからくりは全く不明であった。


ある日、大手食品メーカーの幹部らは客を装い屋台を訪れた。

サイモン自慢の料理は今まで幾度の味を経験した幹部らでも文字通り舌を巻く絶品さで、噂通り食べ終えた後も「まだもっと食べたい」と強く思ってしまう不思議な感覚さえもあった。

これを商品にしてもっと世に広めたいと思った彼らは正体を明かしてサイモンに商品化契約を申し込んだ。

サイモンは快く引き受け、その後莫大な契約金、権利金を手にしたが決して店を拡張しようとはせず今まで通り屋台業を続けた。

そんな彼の謙虚な姿は一層客達からの人気を集め、今まで以上に屋台は大盛況となった。

しかしそれから4年後…















サイモンは逮捕された。

罪名は、












【殺人死体遺棄】












そう…サイモン自慢の料理は全て《人肉》によるものだったのである。


その後の警察の捜査でサイモンは約7~8年の間、10歳代の子供39人を誘拐した後、生きたまま肉を削ぎ落とし加工して屋台で調理していた事が判明した。

また驚くべき事に隠し味には自宅の庭で栽培した《麻薬》を入れており、客同士がトラブルになってでも「まだもっと食べたい」と思ったのはそのためだったのである。

街の人々や屋台を訪れていた客は知らない間に人肉を食べていた事が分かり絶句し、その後普通の肉料理さえも食べられなくなるトラウマになった。


裁判でサイモンは死刑判決を受け、刑は僅か2日後に執行された。

事件があまりにも特殊で残虐だった事からサイモンの脳は某大学で詳しい分析をされ、その後脳の行方は分かっていない。







夜道にある、なぜか安い人気の屋台…

気をつけた方がいいかも…






※掲載写真はイメージ。

※人物名は仮名。