事情により妻、娘と別居する事になった。

会えるのは年に数回…

毎日真っ暗な部屋に1人…

今振り返ると家族に迷惑ばかりかけていた気がする。

娘の誕生日はいつも仕事でろくに祝ってあげれなかったし、妻には仕事の愚痴ばかり。

その代償がきたんだろう。

別居前に妻は私に、

『2人で何とかするから大丈夫』

と言い残して行った。

今日は久しぶりに娘と妻に会える日。

別居して数年が経ち、私は自然と2人の相談役になっていた。

こんなに仲良く出来るのなら、もう一度一緒に住みたい。

しかしそれは許されない事だ。

『お父さ~ん』

あ、妻と娘が来た。

「来てくれてありがとう」

いつもろくな出迎えも出来ない私なのに2人はそんな事も気にもしないで来てくれる。

「少し背が伸びたね」

やっぱり娘の成長は嬉しい。

『お父さんの大好きなお花持ってきたよ』

「ありがとう。飾っててくれないか」

娘はいつも私に花を持ってきてくれる。

『あなた。私からはお酒』

「…ハハ、ありがとう。でも昼間から飲めないよ。その辺に置いててくれ」

妻はちょっと恥ずかしそうにお酒を置いた。

「最近何かあったかい?」

すると娘が、

『私ね学校で好きな人が出来たの』

と喜んで話した。

「そうか!良かった。もう立派な大人じゃないか」

リンゴのように頬を赤くする娘が可愛い。

妻は、

『私はパソコンの免許とれたから来月から仕事なの』

と笑顔で言った。

「そうか…良かったね」

一緒に住んでたら私が仕事しているのに…


楽しい一家団らんは、あっという間に過ぎた。

『また来るね、お父さん』

変わらない2人の笑顔に涙が出た。


















『さぁ、もう一度お父さんに手を合わせて帰りましょう』










線香の香りがほのかにする中、私は妻と娘が仲良く手を繋いで帰る後ろ姿をずっと見ていた。
【償い】 ◆完全オリジナル作品◆



「被告を懲役7年の刑に処する」

『そんな!なぜだ!!完全犯罪だったはずなのに!“今さら”ふざけるな!』


知人を7年間に渡って監禁し、衰弱死するまで働かせたある男の【罪の裁き】であった。



翌日から監獄生活の日々が続いた。

労働は無かったが、寒く狭暗い地下にただ1人だけ。

もちろんまともな食事も無く誰からともなく栄養源と称された液体を飲むだけだった。


不思議と男はこれが運命だと受け入れたかのように、動じる事も無くひたすら従った。






7年後ー

自由への扉が開かれた。

明るい。

眩しい。

暖かい。


男は歓喜の声で叫んだ。

羽ばたきたい…


無意識に選んだのは旅であった。

世界中を旅するー

男は自由を楽しんだ。






しかし1週間後…

その楽しさもつかの間だった。


男は死を迎えた。












真っ白な空間…

体が浮いている…








『なぜだ…何が起こったんだ…分からない…どうなるんだ…』

















「これであなたは【本当に】自由です」


7年前、男に判決を下した者が目の前に居た。



『ど…どうして…』











「償いですよ」


『償い…』




男は全てを理解した。

涙した。











知人を【7年間】監禁し苦しめた上、衰弱するまで働かせて殺してしまった。

見事に完全犯罪を遂げて警察は男を捕まえる事が出来なかった。


罪の意識も全く無く結婚をして新たな人生を楽しみ歩んで何事も無く生涯を終えた。


そして…












天界へ行き【生まれ変わりの裁き】を受けた。










「理解したようですね。では今から記憶を消します。しかし、その涙の意味だけは心のどこかにあるはずです」


『ありがとう…本当にごめんなさい…ごめんなさい…』












夏ー

【前世の罪滅ぼし】という宿命を受けて生まれた儚く悲しい…









セミの一生であった。




男は天界から舞い降りていった。




今また世界のどこかで人間という生命が産まれた。

本当に償いを終えた希望の命が…

◆映画解説113◆

の ぞ い て み る ?


『女と女と井戸の中』


オススメ度:★★★★☆

平均評価点:84.8

1997年オーストラリア製作。

【監督】
サマンサ・ラング(第一回監督作品)

【脚本】
ローラ・ジョーンズ(本作品にてアカデミー賞脚色賞受賞)

【原作】
エリザベス・ジョリー

【撮影】
マンディ・ウォーカー
『ニュースの天才』
『赤ずきん』

【美術】
マイケル・フィリップス(本作品にてアカデミー賞美術賞受賞)

【衣装】
アナ・ボーゲージ
アンナ・ボーゲージ
『小さな町の小さなダンサー』

【音楽】
スティーヴン・レイ
『プレタポルテ』
『アンダーワールド 覚醒』


【主演】
パメラ・レイブ(本作品にてアカデミー賞主演女優賞受賞)

ミランダ・オットー
『シン・レッド・ライン』
『宇宙戦争』
『アイ・フランケッシュタイン』

ポール・チャブ

フランク・ウィルソン
『運命の女』

スティーヴ・ジェイコブス
『ラスト・ジゴロ』

ジュヌヴィエーヴ・レモン
『ピアノ・レッスン』


◆物語◆
オーストラリアの広大な敷地で牧場を経営する大地主のフランシス。

娘のヘスターは孤児で施設に居たキャスリンを住み込みのメイドとして家に招き入れる。

最初は仕事の多さに嫌気をさしていたキャスリンだったがヘスターの心遣いの中、徐々に打ち解けていく。

そんな中、主のフランシスが老衰により他界し、仲介人のハリーを通して土地や建物をボーダーンという人物に売却する話が持ち上がる。

ヘスターはキャスリンと一緒に過ごしたいためにすぐに現金が必要だったので西側にある井戸付きの小さなコテージを除いて全てを手放し、莫大な財産が入る事となる。

そのコテージでキャスリンと共に贅沢な暮らしを始めたある日、ボーダーン家が主催するパーティーに参加する。

久しぶりの外出にはしゃぐキャスリンを嬉しく見守るヘスターだったが、パーティーが終わったその帰り道にキャスリンが運転する車で通行人の男を轢き殺してしまう。

幸い目撃者も居なかったため、ヘスターは車で死体を井戸まで運び放り込むが、その翌日、保管していた多額の金が無くなっていた事が分かる。

ヘスターは死んだあの男が生前に盗みに入り、逃げる途中でキャスリンが轢いたのではと思い始める。

しかしキャスリンは「井戸の中の彼は生きている」と言い張り、食事を差し入れたりつじつまが合わない奇妙な事を発したりしたため次第にヘスターはキャスリンが金を盗んだのではと疑うようになり、2人の関係は徐々に崩れていく…


◆解説◆

エリザベス・ジョリーのベストセラー小説を映画化したアカデミー賞受賞作品。

井戸をモチーフに様々な人間関係や幻想的世界を青い映像タッチで織り成す流れは見事。

作中数々登場するオーストラリアの緑溢れる絶景も話題となった。


◆登場人物◆

【ヘスター】(パメラ・レイブ)大地主フランシスの娘。理由は不明だがメイドのキャスリンの事を異常なまでに愛しており、彼女の誕生日にはサプライズで高級ステレオコンポをプレゼントするほど。偏頭痛の持病あり。ピアノが得意。左足が不自由で杖をついている。

【キャスリン】(ミランダ・オットー)
幼い時に施設に預けられた孤児。フランシス家でメイドとして働く。金髪、色白でミニスカート姿のロリ系。自由気ままな性格。意外にもかなり歌がうまい。記憶力が良く一度観た映画の台詞もすぐ覚えるほど。たまにエロいダンスをする。

【フランシス】(フランク・ウィルソン)
ヘスターの父親。町で有名な大地主。「倹約第一だ」が口癖の根っからのドケチ。痴呆であるにもかかわらず下ネタ好きでかなりスケベ。大金が詰まった金庫の鍵はネックレスにして常に肌身離さず持っている。

【ハリー】(ポール・チャブ)
フランシス家に週一度泊まりに来る仲介人。「投資」が口癖で常に儲け話を探している嫌な奴。

【モリー】(ケイティ・エドワーズ)
フランシス家のベテランメイド。どんな仕事も無表情でこなす機械的な女性。