秘苑 24 | 水脈のブログ

水脈のブログ

読みきかせ記録(絵本等の紹介)と、自分の心に生じた想いや、刻まれた記憶を思いつくままに綴っています。
当ブログ開設当初から好きだった東方神起やジェジュン、ユンジェに関して。そして、2021年以降は、防弾少年団(バンタン:BTS)のことに、思いを馳せることも。

その声は、ジェジュンの隣に寝かされていた
異形のものから発せられていた。

「皆が、おまえを心配しておる。
心配され、愛されるべきなのは、
おまえではない。
この私であるはずだったのに…。

返せ!
私の身体を 返せ!」


異形のものは起き上がった。

「ジェジュン様⁈」

洪(ホン)尚膳が、驚愕の声をあげた。

カラスのような姿態の向こうに、
人の身体が透けて見えた。
その顔は、明らかに、ジェジュンだった。
いや、
鮮やかな衣装をまとい、
美しく化粧を施したその表情には、
実物のようなあどけなさは無い。
もっと大人びた、妖艶なジェジュンだ。
それでも、発した声は、
ジェジュンそのものだった。

「今生の世に生まれ変わる時、
女として、産まれるはずだった。
そして、前世からの縁、
固い契りを交わした、
愛する殿方、ユノ殿と、
再び、結ばれるはずだったのに。

ウナ、おぬしのせいじゃ。
おぬしさえ、あの時、邪魔しなければ、
男として、生まれることなど無かったのに。
許さぬ!」

異形のジェジュンの目は、
怒りに燃え、銀河(ウナ)を睨みつけた。

「あの時、国王陛下を始め、家臣一同、
そして、国中の民どもも、
皆が、男児の誕生を待ち望んでおりました。

儒教が浸透しているこの国にあっては、
血族の代表として、
祖先を祀る使命を負う嫡男の存在が
尊ばれるのは当然の習い。
民の模範となるべき国王ともなれば、
なおさらのことでございましょう。

私は、皆の強い望みに、
ほんのちょっと手を貸したのみ。
男として生まれるのが、
あなた様の宿命だったのでございます。」と、

銀河(ウナ)が答えた。

「そうじゃ。
私は、誰からも、望まれなかった命。
誰からも、愛されぬ運命の子じゃ。

なぜじゃ?!
血族を絶やさぬよう、
子を産むのは、女ではないか。
何ゆえ、女であるというだけで、
蔑まれねばならぬのか。
生まれることさえ、許されぬのか。

その絶望的な寂しさと悔しさが、
おまえたちにわかるか!

この世に対する未練のあまり、
私の魂は、どこにも行けず、
魂の容れ物である肉体を得ることもかなわず、
このような惨めな姿になってしまった。

現世になんとか残ったものの、
幼きころは、魂の力が弱く、
ただ眠るばかりだった私を、
5年前のある日、
目覚めさせてくれた者がおった。

だが、それでも、
現し身のおまえの夢に現れるのが、
精一杯だった。

ありがたいものよのう。
ジェジュン、おまえが成長すると共に、
私の力も少しづつ増した。
そして、おまえがユノ殿と出会った時、
私の本来の力も覚醒したのだ。」

「もう、お止めくださいませ。
あなた様は、この世のものではないのです。

ジェジュン様の肉体には、
男としてのジェジュン様の魂が宿り、
根を張り、歳月を重ね、
成長し続けてきたのです。
これからも、男として、
この世で生きていくのです。
その現実を、どうかお受け止めください。」

銀河の言葉は、耳に届いていないかのように、
異形のジェジュンは、ユノに向き直った。

「あぁ、ウリユノヤ…。
私をお忘れか?
生まれ変わっても、
必ず再び添い遂げようと誓い合ったこの私を。

私を、強く熱く、抱きしめてくださった貴方。
そして私も、貴方に応え、
深く、深く、愛し合いましたのに…。」

ユノは言葉も無く、ただ呆然として、
異形のジェジュンを、見つめるばかりだった。
それでも、その異形のジェジュンは、
ユノに一歩近づくと、言葉を続けた。

「せんないことを申しあげてしまいました。
前世の記憶は、生まれ変わった時点で、
忘れ去られてしまう定めでしたね。
私だけが、持ち続けている記憶…
淋しゅうございました。

お目にかかれて、どれほどうれしかったことか。
お目覚めくださいませ。
貴方様の愛するべき、
真の相手は、この私。」

異形のジェジュンが、さらにユノに近づいた。

その時、銀河が叫んだ。

「ユノ、そのものを取り押さえ、
懐剣で、斬り払え!」