昨日、星組御園座公演『王家に捧ぐ歌』のライブ配信を視聴しました
2015年の宙組版では、ラダメスとアイーダの愛の物語に感動し涙したものの、平和へのメッセージがストレートすぎて少し説教くさく感じてしまった記憶があります
連日ロシアのウクライナ侵攻が報道される今「アイーダの信念」「世界に求む」がビンビン響いて、平和ボケ
していたかつての自分に蹴りをかましたくなりました
お話の舞台は戦争に勝ち続け繁栄している古代エジプト前回まで吊り物に乗って高い場所から降臨していたファラオ(箙かおる様)が、今回は階段が2段しかない玉座
に座っているという別箱仕様箙様の時はより神に近い存在に感じましたが、演じ手の持ち味の違いと衣装の変更で、まりんさんが演じる今回のファラオは、登場時から“エジプト国民みんなの父”という印象でした
エジプトの若き将軍ラダメスのこっちゃん登場次のエチオピアとの戦を指揮する将軍の名が、間もなく神官達から告げられようとしている場面。“選ばれるのは私に違いない
”と力強く歌い上げるソロナンバー「エジプトは領地を広げている」で、物語の中心たるヒーローとして圧倒的な存在感を示しました
今のエジプトの勢いが観客に充分伝わる上手さ音域は上から下まで自由自在
今回演出の木村先生の指示で、エジプト軍は“脳筋”設定とのことですが、“冒険”“栄光”“勝利”というワードがこれ程ハマるとは…初めて見た方は宛書きだと思うでしょう
敗戦国エチオピアの王女で現在は囚われの身のアイーダ役、なこちゃん。たくましく、自分の足ですっくと立っているヒロインでした拳を握るシーンを何度か見かけましたが、その力強かったこと
どんなに虐げられても自分で立ち上がり自らの道を選ぼうとするアイーダだったように感じます。
ラダメスはそんな彼女に心惹かれている様子で、親しげに話しかけ未来の話をしようとします。しかし2人の平和や正義についての考え方が平行線で話が嚙み合わず、言葉は足りないし、アイーダからしたら無神経極まりない発言もあり、ちょっと呆気に取られてしまいました前からこういうシーンでしたっけ…
出会いや恋に落ちる場面は描かれないので、これまでの2人の関係は脳内補完を試みているものの、一歩間違うとラダメスがサイコパスっぽく見えてしまう危ないラインな気がします…
「ラダメス」威厳のある、しかし恋心が漏れ出ている第一声と共に現れたのはファラオの娘、アムネリス様のくらっち
前回からガラッと衣装が一新された中で唯一マイナーチェンジの域に留まり、一人豪奢で発光しています
目元を跳ね上げたクレオパトラメイクとでもいうのでしょうか、とってもお似合いです
前述のラダメスの無神経さがここでも発揮され出陣前の形見にと公衆の面前でアイーダに指輪
を渡そうとします。ここで観客に非常に分かりやすく恋の三角関係が提示され、トリオによるドラマティックなナンバー「ナイルの流れのように」へ。ゾクゾクします
不穏な空気を纏ったエチオピアの王子ウバルトを演じたのはかりんちゃんもうとにかくヴィジュアルがいい
アイーダとは双子の兄妹の設定だそうですが、弟設定ではダメだったのでしょうか
なこちゃんに貫禄が出てきているので、2人は未熟でヤンチャな弟と思慮深い姉という関係で見たかった気がします。歌詞の“おまえ”は“あんた”に変更すれば問題無かったような
アイーダがかつての臣下達から「あなたは変わった」「強く勇ましい女性だったのに」「ご自分がエチオピア王女であることをお忘れなく」と次々一方的に言われるシーンは胸が痛かったです賢いから、悲惨な思いを経験した王女だからこそ“戦いは新たな戦いを生むだけ”という真実に気づいてしまっただけなのに
超有名曲「アイーダの信念」は、これまたなこちゃんアイーダは非常に力強く、画面の前でこちらも拳を握って泣きながら応援していました少々お歌は力任せでしたが、心の叫びといった感じでした。
戦場のシーンでは、周りの戦士達がネメス(頭巾)を被ってマントを羽織る中、一人ラダメスが特攻服風なのには一瞬現実に引き戻されましたが
こっちゃんが歌いだしたら気にならなくなります。
ストップモーションで殺し合いをしている星組生のマッスルには敬服しますが、お芝居とはいえ直視するのはなかなかきついものがあります出演人数の少なさを考えると、この場面には娘役も駆り出されていたのでしょうか。配信では後ろの方までチェック出来ないのが残念です
女官達が歌う「エジプトは強い」がボサノバ風になり、アコースティックギターが入ったり、合いの手コーラスが“スゴッスゴツヨッツヨ”“スゴスゴツヨツヨ”に変化していた気がします。にじょはなちゃん、るりはなちゃんは2幕にもソロがありましたが、声が可愛い
のにプラスして、したたかさもちゃんと見えて良かったです。
そしてスゴツヨの権現アムネリス様による「ファラオの娘だから」もっと高慢ちき一辺倒な歌だと思っていましたが、改めて聞いてみると、アムネリス様は思い通りにならない恋路に悩んで
いたのですね。サラッサラの黒髪をなびかせ、美しい着物を着てかしずかれているけれど、決して晴れやかな顔ではありません曲のラスト「そーれーはファラーオの」地声の迫力が流石
迷う自分を無理やり納得させようとしているようでした。
しかしアイーダにラダメス死亡を信じ込ませておいて、彼女の秘めた恋心を暴いた上に「身分をわきまえなさい」とのたまって真実を明かすとか、レディコミもびっくりな仕打ちまた王女様のお着替えタイムにアイーダをシバきまくる星娘演じる女官達が怖い、怖すぎる
この人達は絶対敵に回したくありません。彼女らを制止するアムネリス様の理由も、ピラミッドの上から見下ろすような物言い
ラダメス達の凱旋。褒美を取らせるというファラオに対し、ラダメスはエチオピアの解放(王族だけ人質としてエジプトに残し、後は帰還させる)を願い出ます。困惑し、反対する周囲にもラダメスは屈しません。
ここで真っ先に反対意見を述べるのがみっきいさん演じる大神官なことに今回気づきました。“戦士たちの尊い犠牲”の言い方、うまいなあ『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』のトリューニヒトを思い出しました。自分は高みの見物で甘い汁を啜るだけの人物が戦いを止めさせようとしないの図です
けれど、ファラオはラダメスの語る理想に耳を傾けてくれました普段から民の幸せを考え願っている人だからこそ、アイーダを除きあの場で唯一ラダメスの突然の申し出を否定せず、彼に賭けようとまで言ってくれたのだと思います
こっちゃん渾身の「世界に求む」。ヘッドフォン越しでしたが、もう戦いは終わらせよう、等しく認め合い許し合える世界を作ろうと語りかけていくこっちゃんの声の説得力この人を信じよう・ついていこう、という気持ちになりました
素晴らしい訴求力、人の心を動かすスピーチのような歌でした。ラダメスと唱和するアイーダとのハーモニーもこの上なく美しく、涙が溢れて止まりませんでした。
~②に続く~
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