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高価な壺をしっかり持って鑑定士の中島先生が「いい仕事してますねえ。」
プロの鑑定士だから，細心の注意をはらって鑑定するだろうから，鑑定中に壺を落としたり，傷をつけたりすることはないだろう。
扱っているのはお宝だ。
鑑定士と同じように登記官にも細心の注意を払って扱わなければならないものがある。
それは，登記の申請に際し所有権の登記名義人から提供された登記識別情報。
所有権の登記のある土地について，その土地の所有権の登記名義人である鈴木一郎さんから申請された合筆の登記。
その申請書をチェックする金子登記官。
添付情報である登記識別情報が記載された紙をチェック。
「１７４Ａ２３ＣＢＡＸ５Ｇ」
間違いない。これは，この土地の所有権の登記名義人の鈴木一郎に通知され，本人しか知らないアラビア数字その他の符号の組合せ。
「だから，この申請は鈴木一郎さん本人からなされている。他人のなりすましはまずないと言っていい。」
一安心，一安心。
休憩がてら，用を足しにトイレにでも行こうと，金子登記官は席をたった。
机上に「１７４Ａ２３ＣＢＡＸ５Ｇ」の登記識別情報が書かれた紙を置いたままで・・・
金子登記官が扱っている登記識別情報もお宝だ。
こちらは，他人に見られないように所有者鈴木一郎さんが管理してきたアラビア数字その他の符号の組合せ。
むき出しで机上に置かれ，多くの人の目にさらされては，所有者鈴木一郎はたまったものではない。
不動産登記法は，その第１５１条第１項で「登記官は，その取り扱う登記識別情報の漏えい，滅失又はき損の防止その他の登記識別情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 」として，登記官に登記識別情報についての安全管理の義務を課している。
もし，登記官が机上に登記識別情報を放置したまま席をたつようなことをしたら，この義務に違反することになるだろう。
本試験では，未だ出題実績の無い義務だが，出そうな感じがするぞ。
罰則の有無もチェックしておきたい。
また，不動産登記規則では，その第６９条第１項で「登記官は，・・・（中略）・・・登記識別情報を記載した書面が提出された場合において，当該登記識別情報を提供した申請に基づく登記を完了したとき又は請求の審査を終了したときは，速やかに，当該書面を廃棄するものとする。」としているので，金子登記官はトイレに行く前に，合筆の登記を完了し，登記識別情報を記載した紙をシュレッダーにかけるべきである。
そうすれば，「いい仕事してますねえ」となる。
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