六韜の要点ー1 | 覚書き

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『六韜』の要点~~「巻一 文韜」
1.文師=人材を手にいれ、人心をつかみ、天下をとる方法
○釣りと人材獲得は似ている。
①りっぱな人物(釣り師)は、大志を実現することを楽しむ。
②ちっぽけな人間(魚)は、仕事に成功することを楽しむ。

○釣りには、三つのはかりごとが含まれている。
魚を釣るのにエサを使う 人材を雇うのに給料を使うのに類似。
魚はおいしいエサにつられて命をなくす 人材が高い給料を得るために命がけで働くのに類似。
魚は大きさによって使い方が異なる 人材の才能に応じて与えられる役職が異なるのに類似。

○釣りには深い真実が含まれており、いろいろと応用がきく。

○真実とは?
真実の例 水源が豊かで、水の流れがとどこおらなければ、魚がよく育つ。
根が深くはっていれば、木がよく茂って、実を結ぶ。
↓そこで
言葉や行動は、すべて真実をきれいに飾るもの。
えりすぐりの真実を語ることは、最高の行い。
↓真実について語るなら
○釣りに学ぶ真実
第1段階
餌で釣る
①釣り糸が細くて、エサがよく見えていれば、小魚が食いついてくる。
②釣り糸の太さが中くらいで、エサがおいしければ、中くらいの魚が食いついてくる。
③釣り糸が太くて、エサがたっぷり使われていれば、大きな魚が食いついてくる。
(エサによって手に入る人材が違ってくる)
第2段階
釣 れ ば 好 き
にできる
①魚が釣り針につけられたエサに食いつくや、糸に引っ張られて逃げられない。
↓同じように、
②人も国家からの給料に食いつくや、君主に従わざるをえなくなって去りづらくなる。
好 き に す る
方法
○おいしいエサを使って魚を釣れば、魚を殺して食べられる。
↓同じように
①地位や給料を使って人を釣れば、人をとことんまで使える。
②家族を使って国を釣れば、国を我が物にできる。
③国を使って天下を釣れば、天下すべてを手中にできる。
↓そこで
勢力を張っているもの(暴君)は、必ず人々から見捨てられる。
陰徳を積んでいるもの(名君)は、必ず遠くにまでよい評判が広がる。
↓すなわち
聖人の徳は、なんとも微妙なもので、他人をひきつけ、他人から敬慕されてやまない。
聖人の配慮は、なんとも愉快なもので、人々の心をおちつかせ、うまく人々の心をつかんで離さない。
↓そこで
○人々の心をつかんで離さないようにする方法
前提 天下は、一人のものではなく、みんなのもの。
基本 天下の利をみんなで分け合うようにすれば、天下を手に入れられる。
しかし、天下の利を独り占めにすれば、天下を失う。
天には時節があり、地には財貨があるが、時節を人々と同じくし、財貨を人々と共にするこ
と、これを「仁」と言う。
→仁を身につけている人に、天下はなびく。
人々と共に悩み、共に喜び、同じことを好み、同じことを嫌うこと、これを「義」と言う。
→義を身につけている人に、天下は従う。
方法
およそ人は、死ぬことを嫌って生きることを喜び、徳を好んで利になびくが、人々を生かし
利することのできることが、「道」である。
→道を身につけている人に、天下はなびく
2.盈虚=治乱興亡の仕組み
基本的な仕組み ○君主が愚かだと、国は危険となり、人民は乱れる。
○君主が優秀だと、国は安泰となり、人民は治まる。
①ぜいたくをせず、質素な暮らしをした。
「金銀財宝で飾り立てず、きらびやかな衣装を身に着けず、めずらしい物に目
を向けず、道楽の品をコレクションしたりせず、みだらな音楽に耳を傾けず、
宮殿の塀や部屋の壁を美しく作らず、棟木や柱に豪華な彫刻をほどこさず、庭
の手入れに力を入れなかった」
②人民の負担を減らし、余計なことをしなかった。
「安い鹿の皮で作った服を着て冬の寒さをしのぎ、どこにでもあるような布の
服を身につけた。粗末なご飯を食べ、質素な汁物を飲んだ。労役といった面倒
によって人民の生業を邪魔しなかった。心のとらわれをなくし、気持ちをひき
しめて、余計なことをしないようにした」
③役人や人民に対して勧善懲悪につとめ、賞罰を公正に行った。
「誠実で法をきちんと守る役人は高い地位につけ、心が清くて人を大切にする
役人は高い給料を与えた。親を大切にして子どもをかわいがる人民は厚遇し、
勤勉に働く人民はねぎらった。善人と悪人をえり分け、善人を表彰し、悪人を
こらしめ。心を公正にし、節度を保ち、法律によって悪事を禁じた。嫌いな人
でも功績があれば必ず賞し、好きな人でも過失があれば必ず罰した」
優秀な君主の例=堯
④身寄りのない人を保護し、災難にあった家を救済した。
結論 ①堯は質素な生活をし、人民から取り立てる税金を安くした。
↓それによって
②みんなは豊かに楽しく生活できて、飢えや寒さに苦しまなかった。
↓ゆえに
③だれもが堯を太陽や月のように仰ぎ見、実の父や母のように慕った。
3.国務=人民を愛することが国を治めるときの基本
人民を愛する =国を治める基本
こと →君主が人民に慕われ、人民が安心して暮らせるようにする方法
↓そこで
○人民を愛する6つの方法
基本原則 よい方法 ダメな方法
①人民を利するようにする。害
してはいけない。
人民が仕事にあぶれないように
する。
人民が仕事にあぶれさせる。
②人民を成功させる。失敗させ
てはいけない。
農業が時期をあやまりなく行わ
れるようにする。
農業が時期をあやまって行われ
るようにする。
③人民を生かす。殺してはいけ
ない。
欠文。 罪を犯していないのに罰する。
④人民に与える。奪ってはいけ
ない。
税金を安くする。 税金を高くする。
⑤人民を楽しませる。苦しませ
てはいけない。
宮殿の造営をひかえ、人民をこ
き使わない。
宮殿をたくさん造営し、民力を
疲弊させる。
⑥人民を喜ばせる。怒らせては
いけない。
役人が清廉潔白で、人民を苦し
め乱さない。
役人がいじきたなく、人民を苦
しめ乱す。
↓ゆえに
○国を治めるのがうまい人
①親が子を、兄が弟をかわいがるように、親身になって人民を指導する。
②飢えに苦しみ、寒さに凍えている人を見れば、その人のために心配します。
③疲労し、苦労している人を見れば、その人のために悲しみます。
④賞罰を加えるときは、自分の身に加えるかのように加えます。
⑤税金を取るときは、自分の財産から取るかのように取ります。
→これこそが人民を恵み愛する方法
4.大礼=君主と臣下の正しい関係
君主 臣下
あり方 君臨すべき→下記の①参照 服従すべき
注意点 君臨しても、人民のことを無視するようにな
ってはいけない。→下記の②、③参照
服従しても、君主に言うべきは言わねばなら
ない。
行動 手落ちがないようにすべき→天 落ち着くようにすべき→地
備考 天のようであり、地のようであってこそ、礼儀作法の基本中の基本が確立する。

①君主のあり方
①ゆったりして冷静である。 ②柔らかでしっかりしている。 ③ひろく恩恵をほどこす。
④さっぱりした心をもつ。 ⑤公正を心がける。 ⑥偏りのない対応をする
↓さらに
②臣下の進言への対処法~進言の聞き方
注意 むやみに信じるのはいけない →むやみに信じれば、ふりまわされてしまう。
まったく無視するのもいけない →まったく無視すれば、真実を聞けなくなる。
高い山は、いくら見上げても、うかがい知れない。
深い谷は、いくらのぞきこんでも、はかりしれない。
態度
→この高い山や深い谷のように、君主は臣下に君主がなにを考えているのか分からないよう
にさせないといけない。

③臣下の進言への対処法~進言の判断の仕方
→基本となる方法=正常であり、冷静であってこそ、心は正しく判断できる。
→すぐれた判断力を保つ方法=下記のとおり
必要なこと 方法
耳 耳はよく聞き分けられないといけない。 ひろく天下全体に耳を向けて聞けば、聞こえないこ
とはない。
目 目はよく見分けられないといけない。 ひろく天下全体に目を向けて見れば、見えないもの
はない。
心 心はよく知ることができないといけない。 ひろく天下全体に心を向けて考えれば、知ることの
できないものはない。
→この耳・目・心の三つが、三輪車の車輪のように支え合えば、すぐれた判断力を失うことはない。
5.明伝=聖人の道が栄えたり、廃れたりする理由
①よいと分かっていながら実行せず、なまけること。
②やるべき時が来ていながら実行せず、ためらうこと。
聖人の道を廃
れさせる3つ
のこと。 ③まちがっていると気づきながら改めず、そのままにすること。
①やわらかであっておちついていられること。
②きちんとしていてしっかりしていられること。
③強力だけど、ふだんは謙虚であれること。
聖人の道を栄
えさせる4つ
のこと。
④我慢するけど、いざというときには断行できること。
↓ゆえに
①道義が欲望に勝てば、国は栄える。
②欲望が道義に勝てば、国は衰える。
③しっかりした心が怠惰な心に勝てば、国はよくなる。
④怠惰な心がしっかりした心に勝てば、国は滅びる。
6.六守=君主が人民を信望を失わないようにするための2つの要点
【要点①=仁、義、忠、信、勇、謀の人材を採用する】
→鑑定の方法
①財物を与えて富ませてみて、好き勝手なことをしない
かを観察する。
→富んでも好き勝手なことをしないなら、

②地位を与えて出世させてみて、おごり高ぶらないかを
観察する。
→出世してもおごり高ぶらないなら、義
③重大な任務を与えてみて、ふらふらしないかを観察す
る。
→重大な任務を与えられてもふらふらし
ないなら、忠
④なにか仕事を任せてみて、隠し事をしないかを観察す
る。
→なにか仕事を任せても隠し事をしない
なら、信
⑤危ない目にあわせてみて、恐れないかを観察する。 →危ない目にあっても恐れないなら、勇
⑥非常事態にどう対処すればよいかを尋ねてみて、ゆき
づまらないかを観察する。
→非常事態の対策について尋ねてもゆき
づまらないなら、謀
【要点②=農民、職人、商人を自分の管理下に置く】
農民がまとまって働けば、食料が不足することはない。
職人がまとまって働けば、道具が不足することはない。
商人がまとまって働けば、資本が不足することはない。
→農民、職人、商人の三者
は、「3つの宝」である。
○この「三つの宝」がそれぞれの仕事に励む

○人々は、他の職種に気をとられることなく、地域を乱すことはないし、身内を乱すこともない。
【まとめ】
臣下が君主よりも富んではいけない。 首都が国家よりも栄えてはいけない。
→要点①が促進されたなら、君主は繁栄する。 →要点②が整備されたなら、国家は安泰である。
7.守土=君主が領土を保全する方法
○基本となること
①一族の人間を冷たくあしらわないこと。 ②天下の人々をほったらかしにしないこと。
③身近な人たちをかわいがること。 ④周辺の人たちを思いどおりにあやつること。
↓ただし
○注意点①=他人を大事にするにしても、他人に主導権を与えてはいけない
基本 君主は他人に政治権力を与えてはいけない。
→その理由=君主が他人に政治権力を与えれば、その権威を失う。
深い谷を掘ってさらに深くして、その土で高い丘を盛ってさらに高くするようなまねをして
はいけない。
例える
なら
根本をないがしろにして、ささいなことにこだわるようなまねをしてはいけない。

○注意点②=時機を逸してはいけない→問題の芽は小さいうちに除去すること
→ポイント1~行動すべきときに行動しないなら問題を発生させる
①よく晴れたなら、必ず干すべき よく晴れたのに干さないのは、絶好の機会を失うこと
②刀を抜いたなら、必ず斬るべき 刀を抜いたのに斬らないのは、有利な状態を失うこと
③斧を手にしたなら、必ず打ち倒すべき 斧を手にしたのに悪者を打ち倒さないのは、悪人をのさば
らせて被害を大きくすること
→ポイント2~先延ばしにしても問題は解決しない
①ちょろちょろと流れる水も、そのまま放っておけば、いずれは大河となって、止めようがなくなる。
②ちらちらと燃える火も、そのまま放っておけば、いずれは大火となって、どうしようもなくなる。
③芽が出ても、すぐに刈り取らなければ、いずれは斧を使わなければならなくなる。
↓そういうわけで
○君主のとるべき道
みんなの生活を豊かにしようと努める。 他人に便利な道具を貸し与えてはいけない。
豊かでなければ、人々はやさしくなれない。
(参考「衣食足りて礼節を知る」)
→天下の人々から見捨てられれば、必ず破れる。
他人に便利な道具を貸し与えれば、他人のために
害されて、自分自身が滅びる結果になる。
恵まれなければ、一族はまとまらなくなる。
(参考「金の切れ目が縁の切れ目」」)
→一族に冷淡であれば、害を受ける。
(君主が臣下に必要以上の強い権限を与えれば、
いずれは臣下に君主の権力を奪われる)
↓ところで
○仁義とは何か
基本 人々を大切にし、親類をまとめること。
効果 人々を大切にすれば、国全体が仲良くなる。
親類をまとめれば、一族が君主を好きになる。
→以上が仁義の基準というもの
↓ただし
○他人に君主の権威を奪われてはいけない。
基本 人知をつくして天理に従うことが大切
対処 天理に従う人間は、徳(恩賞)によって引き立てる。
天理に逆らう人間は、力(武力)によって打ち倒す。
→以上を大切して疑わなければ、天下のだれもが心服する。
8.守国=国を守る方法
○天・地・人の関係
天は四季を生み出して季節を作りあげる。 地は万物を生み出して人間を養い育てる。
天下(地上)には人民がいて、すぐれた人物が君主となって人民を導く。
○四季と万物の関係=サイクルがある
このサイクルは、充満したら保存し、保存したら再び発生させるというように繰り返す。
人々には、このサイクルが終始する理由がわからない。
すぐれた人物は、このサイクルを天地の変わらぬ道理として見習う。

○「人間の世界(天下=地上)のサイクル」と「すぐれた人物の処世」
○すぐれた人物の態度
価値観 「天下=地上」にいるときは、人民を宝とする。
政治の方針 つねに変わらぬ道理に従って政治を行う→結果、人民は安心して暮らせる。

治まった世の中
が乱れる原因
人民の動きが世の変動のきっかけとなり、そこに利害がからんでくると争いが生じ

乱れた世の中を
治める方法
こらしめるために軍や刑罰を用い、まとめるために徳や恩恵を用いる。
→すぐれた人物がこのように先導すれば、天下はそれに従って仲良くなる。

およそ物事は、ゆくとこまでゆけば、もとに戻る。ゆえに、進んで闘争することもなければ、退いて
妥協することもない(→ほどよくできるように尽力する)。
このような姿勢で国を守れば、天地ほどの輝かしい成果をあげられる。
春の道理としては万物
を誕生させることで繁
栄させる。
夏の道理としては万物
を成長させることで完
成させる。
冬の道理としては万物
を保存させることで沈
静させる。
秋の道理としては万物
を結実させることで充
満させる。
天下が治まっているとき
→すぐれた人物は身を隠し
て英気を養う
天下が乱れているとき
→すぐれた人物は姿をあら
わして救世にあたる。
すぐれた道理は、
こうなっている。
9.上賢=できのよい人物を任用すべきこと
○王たる者は、賢者を敬い、できのわるい人間を退け、誠実な人を取りたて、ウソつ
きを遠ざけ、暴力を禁じ、贅沢を止めるべき。
↓そこで
○王たる者は、「6つの賊」と「7つの害」を知っておく必要がある。
【6つの賊】
6つの賊の内容 6つの賊の悪影響
①大きな邸宅と庭園を作って、遊びにうつつをぬかす臣下 王の徳を傷つける。
②仕事もせずに遊侠きどりでつっぱり、法律を破り、役人に従わない人民 王の教化を傷つける。
③徒党を組み、賢者や智者が任用されるのを妨害し、君主が物事を正しく
判断できないようにする臣下
王の権力を傷つける。
④頑固で真面目ぶって勇み立ち、外国の諸侯と私的に交際し、自国の君主
を重んじない名士
君主の威厳を傷つける。
⑤君主によって与えられる爵位を軽んじ、役人の仕事をさげすみ、君主と
共に困難に立ち向かうことをバカにする臣下
功臣を傷つける。
⑥貧しく弱い民衆から利益をしぼりとって苦しめている有力者 庶民の生活を傷つける
【7つの害】
7つの害 対策
①知略も権謀もないのに多い給料と高い地位を与えられ、そのため勇気に
はやって軽々しく戦い、運よく勝てることを期待する人物
このような人物を将軍
にしてはいけない。
②評判はよいけれど実績はなく、口を開くたびに違ったことを言い、他人
の善行を隠したて、他人の悪行をあげつらい、世渡りのうまい人物
このような人物を相談
役にしてはいけない。
③質素を装い、粗末な服を身につけ、目立ちたくないふりをしていながら
実は有名になりたがっており、無欲なふりをしていながら実はもうけたが
っている人物(偽善的な人物)
このような人物を近づ
けてはいけない。
④目立つかっこうをし、博識をひけらかし、現実離れした高度な議論をく
りひろげ、そうして自分をりっぱに見せかけ、自分は世間から離れて生活
していながら、世間のことについて批判する人物(腹黒い人物)
このような人物をかわ
いがってはいけない。
⑤口先がうまく、うまく取り入って地位を手に入れ、思いきりがよく、必
死に頑張って報酬をむさぼり、崇高な理想よりも目先の利益のために行動
し、君主を喜ばせるために現実離れした高度な議論を説く人物
このような人物を採用
してはいけない。
⑥建築物や生活用品に使われている木や金属に模様を彫刻し、精巧で華美
な装飾をほどこすことに熱中して、ふだんの仕事にさしさわりが出ること
このようなことを必ず
禁じないといけない。
⑦まじない、超能力、占い、呪術、不吉な予言などで善良な庶民をまどわ
すこと
このようなことを必ず
止めないといけない。
↓そこで、まとめると
いらない人民 努力しない人民
いらない名士 誠意のない名士
いらない臣下 真心をこめて諫言しない臣下
いらない役人 不公平で心がきたなくて人民を愛さない役人
いらない宰相 富国強兵と問題解決を実現して君主を安心させ、群臣を正し、名実を定め、賞罰を
明らかにし、人民を楽にさせられない宰相

○王の正しいあり方
①竜の首のようなもの→高い所にいて遠くまで見渡し、奥底まで見ぬいて進言の是非を正しく判断す
る。
②威厳ある姿を見せ、本当の気持ちを隠し、高い天のようにきわまりなく、深い谷のように底知れな
くする。
↓そこで
①怒るべきときに怒らなければ、あくどい臣下がのさばる。
②殺すべきときに殺さなければ、世を乱す人間がはびこる。
③軍隊の形勢がふるわなければ、敵国が強大になる。
10.挙賢=評判ではなく業績によって人材を評価する
問)賢者を登用しても成果があがらない原因は?
→答)賢者を評判だけで判断して、その実力をきちんと調べないから。

問)賢者の登用に失敗する原因は?
→答)君主がまわりのほめる人間を好んで登用するから。
↓すなわち
君主の過失 君主が、まわりのほめる人間を賢者と考え、まわりのそしる人間を愚者と考える。
過失の結果 仲間の多い人間が出世して、仲間の少ない人間は退けられるようになる。
↓このような状態になると
①腹黒い人間たちが手を組んで
賢者の登用を妨害する。
②忠義の臣下は罪もないのに殺
される。
③あくどい臣下は功績をいつわ
って高い地位を君主からだまし
取る。
↓かくして
①世の乱れはひどくなり、
②国家もまた危機にひんして、滅亡せざるをえなくなる。
↓そこで
対策 ①宰相と将軍が役割を分担して、それぞれ役職に応じて人を登用し、
②その人がその役職に見合った実績をあげられているかを調べて、
③その人の能力を評価し、適材適所を徹底するようにする。
結果 きちんと賢者を登用できるようになる。
11.賞罰=信賞必罰の徹底により、善が増え、悪が減る
賞罰の役割 賞は善をすすめるためのもの
罰は悪をこらしめるためのもの



一人を賞して百人に善いことをさせ、一人を罰して多くの人たちに悪いことをさせないようにし
たいとき、どのようにすればよいだろうか?

方法 賞すべきは必ず賞し、罰すべきは必ず罰する→信賞必罰が大切
結果 この信賞必罰を身近に行えば、身近にいない人でも、おのずと悪いことをせず、善いことを
するようになる。
備考 そもそも誠実さは、天地を貫き、神明に通じるものでして、人を動かせないことはない。
12.兵道=軍事の基本原則
○用兵の正しい方法
その内容 =1つになること(例:一心同体、一致団結など)
その結果 →進むにしろ、退くにしろ、無敵となる。

○戦争で成功することは難しい
開戦するにはチャンスが必要 攻撃するには勢いが必要 戦勝するには優秀な君主が必要
以上の要件がそろってこそ戦争で成功できる=たやすく成功できるものではない
↓ゆえに
すぐれた王は、軍隊を凶器と考え、やむをえない場合にしか用いない。

○失敗する人の典型=暴君(紂王)の場合
①太平になれて、国が滅亡することもありえることを知らない。
②快楽におぼれて、身が破滅することもありえることを知らない。

○すぐれた人物は警戒する=名君(文王)の場合
①国が滅亡しないように考えている→太平を享受してよい
②身が破滅しないように考えている→快楽を享受してよい
→国の滅亡と身の破滅に警戒してい
るなら、軍事も心配ない。
↓実際の軍事について考えるなら
○敵軍と対峙したとき、互いに動きがとれない場合、勝つために必要なアクション
①整然としているのに混乱しているように見せかけ、満腹なのに空腹なように見せかけ、精強なのに
虚弱なように見せかける。
②合わさったり離れたりして統制がないように見せかけ、集まったり散らばったりして規律がないよ
うに見せかける。
③計画を知られないようにし、動向を悟られないようにし、陣地の防壁や土塁を高くする。
④精鋭部隊を伏兵とし、こっそりと配置につかせる。
⑤敵軍がこちらの備えについて正しく知ることができないようにし、敵がこちらの西を攻略しようと
しているときには、こちらは敵の東を襲撃するようにする。

○敵がこちらの実情を知り、こちらの計画をわかっている場合の対策
①敵軍の動きを察知して、
②すみやかに機先を制し、
兵法のプロが勝利をおさめる方法
③すばやく敵の不意をつく。
巻二 武韜
13.発啓=乱暴をはたらき、良民を苦しめている暴君を排除する方法
(1)まずは徳を修めて賢者を敬い、人民に恩恵をほどこして、討伐の機会をまつ。
①必ず天罰が下っているのを確認し、さらに人災が生じているのを確認してこそ、討
伐を計画できる。
②必ず表に現れたものを確認し、さらに裏に隠されたものを確認してこそ、その心を
把握できる。
③必ず外でしていることを確認し、さらに内でやっていることを確認してこそ、その
意図を把握できる。
討伐の機会を
判断するため
のポイント
④必ずなにを遠ざけているかを確認し、なにと親しんでいるかを確認してこそ、その
実情を把握できる。
そういった方法を用いれば、必ず順調にゆく。
そういった基礎から始めれば、必ず発展する。
そういった礼法を定めれば、必ず実現される。
結果として
そういった強さを競えば、必ず勝てる。
(2)望ましい勝ち方=天下万民を味方につけ、戦わないで勝つこと
基本 ①完全なる勝利は、戦わないで得られるもの
②偉大なる軍隊は、傷つかないで終わるもの
←それはまさに神わざであり、なんとも微妙
なもの
①人々と苦しみを同じくして助け合う。
②人々と気持ちを同じくして成しとげ合う。
③人々と憎しみを同じくして支え合う。
方法
④人々と好みを同じくして励まし合う。
①軍隊を使わなくても勝てる。
②兵器を使わなくても攻められる。
結果
③防御施設を使わなくても守れる。
↓すなわち
○すぐれている人のやり方=自分を抑えて、他者を立てる
①とても知恵のすぐれている人は、その知恵を見せびらかさない。
②とても策略のうまい人は、その策略を見せびらかさない。
③とても勇気のある人は、その勇気を見せびらかさない。
自分を抑える
④とても利益をあげられる人は、その利益を見せびらかさない。
他者を立てる ①天下に利益をもたらす人には、天下の人がこぞって心をよせせる。
②天下に害悪をもたらす人には、天下の人がこぞって背をむける。
○自分を抑えて、他者を立てることで、天下万民を味方にするプロセス
①そもそも 天下は、君主一人のものではなく、みんなのもの。
②だから 天下を取れる君主は、みんなと苦楽を共にする。
→狩った肉をみんなで分け合う感じ。 →同じ船に乗って、みんなで河を渡る感じ。
③ゆえに みんなは君主を歓迎し、拒否しない。
○そこで、味方を増やしていく方法
①人民から奪い取らない人は、人民を味方にでき
る。
→人民を搾取しない人は、人民から利益をもたら
される。
②国家から奪い取らない人は、国家を味方にでき
る。
→国家を搾取しない人は、国家から利益をもたら
される。
③天下から奪い取らない人は、天下を味方にでき
る。
→天下を搾取しない人は、天下から利益をもたら
される。
○そこで、以上のような味方を増やす策略について知られないようにすることが重要
①この辺の道理の神妙さは見えない。
②この辺の物事の緻密さは聞こえない。
外見上
③この辺の勝利の巧妙さは知られない。
←なんとも微妙なもの
すぐれた人物が行動を起こそうとするときには、必ず愚か者のふりをするもの
→その実力や本心を見せびらかさないし、外に見えないようにすることが大切
例1)肉食の鳥がエモノを取ろうとするときには、必ず低く飛んで翼を縮めるもの
つまり
例2)獰猛な獣がエモノを取ろうとするときには、必ず耳をたれて身をかがめるもの
(3)現状を分析してみる
今、暴君(紂王)は、まわりのつまらぬ意見に惑わされ、きわまりなく乱心し、
女にうつつをぬかしている。
←国が滅びるき
ざし
その田野を見てみると、雑草がおいしげり、作物がおしのけられている。
その国民を見てみると、邪悪な人がのさばり、正直な人がしいたげられている。
その役人を見てみると、ひどいことをするばかりで、刑法をねじまげ好き勝手な
ことをしており、上下ともに自覚していない。
←国が滅びると

↓そんなとき、すぐれた人物が世直しに乗り出すと
①太陽が出てきて、万物がすべて照らされる。
②大義が出てきて、万物がすべて利される。
③大軍が出てきて、万物がすべて服する。

このように、すぐれた人物の徳は、
なんとも偉大なものだが、本人にし
かわからない。
14.文啓=すぐれた人物が守るべき事柄=余計なことをしないこと
(1)無為にして化す
内容 備考
第1段階
自然の摂理を知る
悩んだり、惜しんだりするまでもなく、万物は
おのずと得られ、おのずと集まる
←余計な作為は不要というこ
と。
①政治が行われても、人はその効果に気づかな
い。
②時節がやってきても、人はその変化に気づか
ない。
←すぐれた人物は、こういっ
たやり方を守って、よけいな
ことをしないで、万物がおの
ずとよくなるようにする。
第2段階
自然にする
→つまり、無為にして化す。
=余計なことをしないで、おのずとよくなるよ
うにする。
そこにはゆきづまりがなく、
終わってもまた始まるという
ように、永遠に続いていく。
①そもそも天地は見せびらか
さない。
→だから、万物を生育できる。
第3段階
すぐれた人物のや
り方
①ゆったりして、こういったやり方をとめどな
く追求する。
②追求して会得できたら、心に深くしまいこむ。
③心に深くしまいこんだら、それを実行に移す。
④それを実行し終わったら、その成果を見せび
らかすことはしない。
②すぐれた人物は見せびらか
さない。
→だから、よい評判が広まる。
(2)すぐれた人物と愚かな人物の違い
すぐれた人物 愚かな人物
基 本 ス タ ン

○すぐれた人物は、よけいなことをしない
で、おのずとよくなるようにつとめる。
○賢い人物は、善導してよくしていくように
つとめる。
○愚かな人間は、人々を善導できない。
→人々の間に争いが生じる。
→大失をまねく
大紀=基本的な制度
①人をまとめて家とする。
②家をまとめて国とする。
③国をまとめて天下とする。
③賢人を各国に派遣して治めさせる。
政治の内容
大定=大いなる安定
①政治と教育をこまやかに行い、各地の住民
の性格を素直にさせた。
②ひねくれた人間は、まともな人間に変わ
り、これまでの行いを改めた。
③各国は風習が違っても、各自はその境遇に
満足し、人々はその目上の指示を尊んだ。
大失=大いなる失敗
①上の人間が争いに苦労すれば、争いを
止めるために刑罰を多用する。

②刑罰を多用すれば、民心が不安定にな
る。

③民心が不安定になれば、亡命するよう
になる。

④上も下も共に安心して暮らせなくな
って、いつまでたってもくつろげない
備考 ○天下万民の心情は、たとえば流れる水のようなもの。
=さえぎれば止まり、開いてやれば流れ、よけいにかきまぜなければ清らかになる。

○すぐれた人物は、始めを見れば、その終わりまで見とおす→先見の明
(3)よけいなことをしないで、おのずとよくなるようにする方法
内容 備考
第1段階
理解する
○天には決まった形態がある。
例:春に芽を出す→夏に伸び育つ→秋に実をつける→冬に種と
なる→春に芽を出す→同様に続いていく
○人には決まった生態がある。
例:春に耕作する→夏に除草する→秋に収穫する→冬に保存す
る→春に耕作する→同様に続いていく
←まず自然のサイクル
というものがあること
を理解する。
第2段階
共有する
その生態を天下と共有することで天下はおのずと治まる。
↓すなわち
①最善の政治は、人民の実情に合わせて治世をつくりあげる。
②次善の政治は、教化を用いて良俗をつくりあげる。
問)その生態を天下と共
有するとは?
答)たとえば、春には、
人民の耕作を邪魔しな
いような政治を行う。
第3段階
感化する
そもそも人民は感化されて君主の政治に従うようになる。
↓そういうわけで
天は何もしなくても物事を完成させる。
人は何も与えなくてもおのずと豊かになる。
これが、すぐれた人物の
もつ徳のなせるわざ
15.文伐=武力を用いず、知恵で敵を倒す12の方法
①相手が喜ぶことをしてやって相手の思いどおりに動いてやると、相手はおごりの心を生じ、必ずチャンスもおのずと生じて
くる。これをうまく生かすことができれば、脅威を取り除ける。
②相手国で大事にされている人物に取り入って相手国の権力を分散させる。相手国に二心をいだいている臣下がいるわけだか
ら、相手国の力は必ず弱まる。政府に忠義の臣下がいなければ、国家は必ず危機に見まわれる。
③こっそりと相手国の君主の側近に賄賂を贈り、その心をつかんで、深く親しくつきあう。すると、その側近は、身は国内に
ありながら、心は国外にあるようになって、相手国にとって必ず害悪を生じるもととなる。
④相手が道楽におぼれるのを助長して、その心のすさみを大きくしていき、財宝を賄賂として贈り、美女を献上して喜ばせ、
相手にへりくだってその言いなりになり、相手に素直に従って調子を合わせる。そうすれば、相手はこちらと争おうとはしな
くなって、悪だくみもうまくいく。
⑤相手国の忠義の臣下を敬って、相手国への賄賂を少なくします。忠義の臣下が使者としてやって来たら、長く引き止めて、
謁見しないようにする。交代の使者が来たら、忠義の臣下を帰さないで国内にとめおいたうえで、誠意をもって交代の使者に
応対し、友好関係を築くようにする。すると、相手国の君主は、忠義の臣下よりも交代の使者のほうを頼りにするようになる。
こうすれば、相手国を謀略にはめることができる。
⑥相手国の国内にいる臣下をてなずけ、相手国の国外にいる臣下を離間させる。有能な臣下が外国と内通し、国の内部にまで
外国の手がまわっているような国は、滅びてあたりまえである。
⑦相手をまるめこむには、必ず手厚い賄賂を贈り、相手国の君主が気に入っている側近を買収し、内通する。そのうえで、利
益をちらつかせて相手がムダな仕事をするように仕向けて、たくわえをからっぽにさせる。
⑧相手国の臣下に莫大な財宝を贈って仲間になってもらい、共同してたくらみ、その過程のなかでその臣下がもうかるように
してやる。その臣下が実際にもうかれば、その臣下はまちがいなくこちらを信じるようになる。これを『親交を重ねる』と言
い、このように親交を重ねていけば、必ずその臣下はこちらのために働いてくれるようになる。このように臣下が外国のため
に働くようになれば、その国は弱体する。
⑨相手の名誉を称賛し、その身に危害を加えず、地位が高くて権力が強いように見せかけ、相手に従うときには決して裏切ら
ないようにし、相手をうぬぼれさせる。まず相手をいい気にさせて、なんとなく相手が聖人ぶるように仕向ければ、相手国は
大いにたるむ。
⑩相手にへりくだって決して裏切らないようにすることで、相手国の歓心を買い、相手の意向には素直に従うことで、相手国
のことに対応していき、あたかも運命共同体であるかのような親密な関係を作る。相手の心をつかめたら、こっそりとこちら
の味方を増やしていく。こうして時がくるのをまてば、まるで天が滅ぼすかのように、相手国は自然に衰亡する。
⑪相手をゆきづまらせるのに、正攻法を用いる。すなわち、臣下たる者は、出世したり、金持ちになったりすることを好んで、
危険な目にあったり、罰せられたりすることを嫌うもの。そこで、こっそりと高貴な身分を保証し、ひそかに高価な財宝を贈
って買収し、相手国の優秀な人材の心をつかみ、相手の内部に強力な味方を作る。そして、こちらは外側で準備し、ひそかに
策士を雇用して画策させ、勇者を採用して士気を高めさせる。さらに、協力者を十分すぎるほど富貴にしてやっていれば、こ
ちらの味方はどんどん増えていく。これが相手をゆきづまらせる正攻法であって、国を治めていながら、他人からゆきづまら
せられれば、どうして国を保てるだろうか。
⑫相手国に対し、そこのでたらめな臣下に力を貸してやることで、そこの君主がいいようにたぶらかされるようにする。そこ
の君主に美女やみだらな音楽をすすめることで、そこの君主をだらしなくさせる。良犬や良馬を送ることで、そこの君主をそ
れにのめりこませる。ときに高い地位や強い権力を与えることで、うまく君主を誘導し、大局から相手国の勢力を観察しなが
ら、相手国をたたくことを諸国と共謀する。
○以上、十二の事柄について、きちんと修得してこそ、戦争はうまくいく。
↓つまり
○上は天の時を察し、下は地の利を察し、勝利を予見できてから、戦争を始める。

○以上が武力を用いず知恵によって敵を倒す方法
16.順啓=天下を治めるためにわきまえておくべき6つのこと
①天下をおおうほどの度量があってこそ、天下をつつみこめる。
②天下をおおうほどの信義があってこそ、天下をまとめられる。
③天下をおおうほどの仁愛があってこそ、天下をなつけられる。
④天下をおおうほどの恩恵をほどこしてこそ、天下を保てる。
⑤天下をおおうほどの策略を用いてこそ、天下を失わずにすむ。
⑥いざ物事を行うとき、ためらわなければ、運のよしあしに左右されたり、突発的な事件にふりまわ
されたりすることはない。
↓ゆえに
天下を利する人は、天下に迎えられる ←→ 天下を害する人は、天下に拒まれる
天下を生かす人は、天下にいい人と思われる ←→ 天下を殺す人は、天下に悪い人と思われる
天下に気を配る人は、天下になつかれる ←→ 天下を苦しめる人は、天下に敵とみなされる
天下を安定させる人は、天下に頼りにされる ←→ 天下を危険にする人は、天下に災いとされる

○天下は、君主一人のものではなく、天下万民のもの
→道理をわきまえている人だけが、こういったやり方を実践できる
17.三疑=敵を内部から崩壊させる方法
実現したいこと
①強力な相手を攻めた
い。
②相手を仲違いさせた
い。
③相手の集団をバラバ
ラにしたい。
①うまく状況にあ
わせる。
強力さを使う。
→自滅をさそう。
基本=相手をさらに増
強させ、さらに拡張さ
せる。
理由=強すぎると、折
れやすくなる。張りす
ぎると、切れやすくな
る。
身近さを使う。
→買収する。
集団を使う。
→籠絡する。
②謀略を慎重にめ
ぐらす。

注意事項=謀略は、
ぬかりなくするこ
とが重要。
①謀略をしかける
には、チャンスに乗
じること。
②謀略にのせるに
は、利益で釣るよう
にすること。
結果=相手は必ず
争いの心を生じる。
相手の目をふさぐ謀略
によって、次のことが
可能となる。
①相手の強力なところ
を攻める。
②相手の盛大なところ
を壊す。
③人民を苦難から解放
する。
①相手の寵臣を買収す
る。
②買収した寵臣を利用
して、離間策を実行す
る。
↓すなわち
①相手と身近な人との
仲が疎遠になるように
仕向ける。
③身近な人間の意見が
相手に採用されないよ
うにさせる。
①相手の身近な人間を
離間できたなら、次に
人民を相手から遠ざけ
る。
→その謀略を知られて
はいけない
②ターゲットを助ける
ふりをして籠絡する。
→その真意をさとられ
ないようにする
 

実現する方法
③金品を有効に使
う。
相手の目をふさぐ方法
①美女を使ってふぬけ
にする。
②利益を使ってふりま
わす。
③美食を食べさせて喜
ばせる。
④音楽を聞かせて楽し
ませる。
上記のようにして、利
益をむさぼらせて喜ば
せれば、相手方のなか
に疑心暗鬼が生じて目
的が達成される。
金品を惜しまず、人民
に施す。
人民は、牛馬のように、
よく面倒をみてくれる
人になついてくる。

①心は知恵を生み、
②知恵は財産を作り、
③財産は集団を集め、
④集団は賢人を慕う。

○賢人の導きがあって
はじめて天下の王とな
れるもの。
巻三 竜韜
18.王翼=リーダーの補佐役
○全権を委ねられた将軍は、あらゆることに通じている必要がある。

○72人の補佐役をそろえ、あらゆる方法を使えるようにする。
【72人の補佐役の内訳】
名称 人数 役割
腹心 一人 計画の立案を補助し、突然の事件に対応し、天運を測定し、異変を解消し、策略を統
括して、人民の生命を保全する。
謀士 五人 どうすれば安全となり、どうすれば危険となるかを計算し、事前に対策をねり、善行
のあった人や才能のある人を評価し、賞すべき功績や罰すべき罪悪があったかどうか
を判断し、官位を授けてそれぞれの仕事にあたらせ、物事の真偽を明らかにし、物事
の是非を定める。
天文 三人 天文暦数をつかさどり、風向の順逆を判断し、日時の吉凶を推測し、兆候を考察し、
異変を測定して、天がどちらに味方しようとしているのかを察知する。
地利 三人 軍隊にとって、どこを行軍し、どこに駐屯すべきか、そして、どこが有利で、どこが
不利か、距離が遠いか、近いか、地形が険しいか、なだらかか、水場が不足している
のか、山地が険阻であるのかなどを明らかにして、地の利を失わないようにする。
兵法 五人 形勢が異なっているのか、同じなのか、作戦が成功するのか、失敗するのかを考察し、
兵器を使いなれている者をえりすぐり、軍法に違反した者を処罰する。
通糧 四人 必要な食料を計算し、物資を備蓄し、補給路を確保し、主食を輸送し、全軍の命をつ
なぎ、苦しまずにすむようにする。
奮威 四人 才能と力量のある人材を選出し、武器と防具を選定し、風のようにすばやく移動し、
雷のように激しく攻撃し、神出鬼没に行動する。
伏旗鼓 三人 太鼓や旗をもってふせ、だれの耳にも聞こえるように太鼓をうち、だれの目にも見え
るように旗をふって、全軍に指示を伝達します。場合によっては、ウソの通信によっ
て相手に本当のところを察知できなくさせたり、ニセの命令によって相手に本当のと
ころを判断できなくさせたりする。闇にまぎれて行動するため、まるで神霊のように、
相手にとっては、つかみどころがない。
股肱 四人 重要な役職に就任し、困難な任務を担当し、堀や塹壕を修理し、城壁や土塁を整備し
て、防衛体制をきづく。
通才 二人 君主の不足をおぎない、君主の過失のあとしまつをし、外国の使節に応対し、話し合
って問題を解決する。
権士 三人 奇策や詭計を用い、あらゆる手段を用いて、人の思いもよらないことをし、変幻自在
に策をろうする。
耳目 七人 あちこちを行ったり来たりして、人々のあいだに広まっている話を聞き、その動向を
見たり、外国の事情や軍中の実情を監視したりする。
爪牙 五人 士気を鼓舞し、全軍を激励し、困難に立ち向かわせ、強敵に攻めかからせて、ためら
わないようにさせる。
羽翼 四人 自国のすごさを宣伝し、遠方の国々を恐れさせ、近隣の諸国を動揺させて、敵の士気
をくじく。
遊士 八人 敵中の悪者をさぐり、相手の異変をうかがい、人心の動向を操作し、敵側の心理を観
察し、こうして諜報活動をする。
術士 二人 トリックを使い、神様のお告げをいつわって、敵国の人民の心を惑わし乱す。
方士 三人 いろんな薬で、ケガを治療したり、あらゆる病気を癒したりする。
法算 二人 陣地の規模、兵糧の数量、そして必要な物資の収支を管理する。