思った通りだった。
ヒロトの家に着くなり、彼は私のことをベッドに突き飛ばした。
頭を抑えつけられて、無理やりスカートの中に手を突っ込んでくる。
「お願い…やめて」
自分が惨めに思えてくるけど、こうやって懇願することしか出来ない。
「そそるんだわ、こういうの」
ヒロトのものがもうすでに大きく膨らんでいることが分かる。
私に覆い被さり、耳元で囁く言葉は、すでに息が荒い。
「いや…」
その耳元にかかる息、太ももを撫でられる手、そのどれもが気持ち悪い。
「無理やり侵すのも悪くねぇな?お前、俺にやられるのと、あの男に動画見せられんの、どっちが嫌なんだよ?」
ギュッと目を閉じた。
そんなの決まっている。
だったら今この瞬間を、我慢するしかないのだ。
「あぁ、やべぇ、」
吐息を漏らしながら、私の背中を抑えてヒロトが動き続ける。
報いだ、と思った。
こんな男に引っかかった、自分への。
こんな男にしか頼ることの出来なかった、情けない自分への。
夏喜、とその名前を叫びたくなる。
でも、こんな私じゃ夏喜には顔向け出来ない。
猫みたいに体を丸めたまま、その時が終わるのを、ただひたすら待つしかなかった。
「なぁ、今夜は泊まっていけよ」
下着を付けながら、ヒロトが話す声を聞く。
彼は相変わらず、終わればすぐに煙草だ。
「なぁ、アイって」
それでも返事をせず無視して着替え続ける。
「なぁ、」
ヒロトの手が私の肩を掴んだ。
反射的に、私は振り向いてヒロトを睨み付ける。
触れて欲しくない、そんな手で。
「ごめんって、そんな怒んなよ」
「…別に」
制服のブラウスのボタンをひとつずつ合わせていく。
無造作に外されたボタンも、ブラジャーも、全部が中途半端だった。
「なぁ、アイ」
「何?」
「お前が、別れたいってんなら、別れてやってもいいぜ?」
「え?」
「その代わり、俺が呼んだらすぐに出て来い。動画バラされたくなければな。それが条件だ」
ヒロトは、ふぅーっと煙草の煙を天井向かって吐き出す。
気持ちよさそうに。
「そしたら、あの男んとこ、返してやってもいいよ」
「……」
そんなこと、出来るわけがない。
夏喜の家にいながら、こんな男に抱かれ続けるなんて。
「俺もさぁ、やっぱお前じゃなきゃダメなんだよなぁ?他の女抱いてみたりもしたけど、全然気持ちよくなんねぇの。
なぁアイ、お前だってそうだろ?俺とやってるときが、一番気持ちいいんじゃねぇの?」
後ろから、私の肩に両手を回してくる。
最近連絡がなかったのは、他の女と遊んでいたからだ。
そして、支配下に置いている私も、手放したくないというのだろう。
都合よく、やりたい時にやれるように、キープしておきたいのだ。
吐き気がするくらい、最低で、底辺な男だ。
でも、こんな男と寝たのは私。
動画を撮られているのにも気が付かないくらい、発狂していたのは、私。
夏喜になんか会えるわけがない。
どうしても、私はこんな生活から抜け出せないのだろうか。
「シャワー、浴びてくる」
そう言い捨てると、私は立ち上がった。