Escape 32 | ♡妄想小説♡

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主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

小夜子さんから、食費を預かるようになって数日、私は、毎日スーパーに寄って食材を買って帰ることが日課になった。



色んなお店を回って、ここは生鮮が安い、ここは日用品が安いなど、把握するようになっていた。



今日は品定めだけをして、スーパーを出た時、夏喜の姿が見えた。



ここを五分ほど行けば自宅。



学校から帰宅する途中だろう。



「夏喜!」



声をかけた瞬間、大きな夏喜の体に隠れて見えなかった、もう一つの人物の影が見えた。



友達と一緒なのかな、と思ったのは一瞬で、その姿は、背の高い夏喜よりはずいぶん小柄で、スカートを履いていることがすぐに分かった。



髪の毛も長い。



女の子だ。



その瞬間、ドキン、と心臓が跳ねた。



夏喜の制服のズボンと同じ柄のスカートを履いている。



きっと同じ高校の子だろう。



女の子と一緒だからって、彼女と決めつけることは出来ない。



もしかしたらただのクラスメイトで、友達かもしれない。



でもこちらから伺える女の子の顔は嬉しそうに微笑んでいて、彼女の手は夏喜のブレザーを着る腕に、そっと添えられていた。



ドクドクドク、と心臓がどんどん速くなっていく。



「何だ、夏喜、彼女いたんだ」



他人には興味なさそうな顔しといて、やることちゃんとやってんじゃん。



毒つきたい気分になるけど、普通に考えたら何にもおかしくはない。



夏喜は見た目もかっこいいし、何だかんだ優しい。



自分の信念を貫く強さだって持ってるし、多分、女の子にはモテるんだろう。



私が勝手に勘違いしていただけだ。



夏喜と私は、特別な関係なんじゃないかって。



男とか女とか、そういうわけじゃないけど、何か、誰も、他人には入り込む隙間のないような、私たちだけの何かがあるんじゃないかって。



だって夏喜は私を助け出してくれたから。



「そっか…」



私だけじゃないんだ。



夏喜は、きっと誰にでも優しいんだ。



数メートル先を通り過ぎていく二人の姿を見つめる。



ちら、と見えた夏喜の横顔は、いつもみたいに少しだけ口角を上げて、笑っているように見えた。



その笑い方は、以前翔さんの店で見せたような作り笑いなんかじゃなくて、優しい微笑みのような気がした。



ズキン、と今度は胸が痛み出す。



次の瞬間、目頭が熱くなった。



それは今、私が傷ついて、悲しんでいる証拠なんだと思った。



「私、夏喜のこと好きなんだ」



男として。



誰にも取られたくないんだと、思っているからなんだ。