Escape 26 | ♡妄想小説♡

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主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

次の日、まだ暗闇の中、目が覚めた。



私は、どうやらコンタクトを付けたまま眠っていたらしく、ひどく目が乾燥して痛みで起き上がった。



瞬きするたびにうまく目が開かなくて、やばいな、と思った。



早く外さなければ。



何度か強く目を瞑って、瞳に潤いを与える。



そうすることで、少しずつ瞼が開くようになってきた。



洗面所へと向かう。



まっ暗闇の中、今が何時頃なのか分からない。



だけど、いや、だからこそ私はためらいもなくそのドアを開けた。



誰もいるはずがないと思ったのだ。



だけど、見えたのは、大きな、肌色の、背中。



私よりもずいぶん大きなそれは、どう見ても、男の人のそれだった。



「お前、ノックくらいしろよ」



「ごめん!」



すぐにそのドアを閉めた。



シャワーでも浴びていたのだろう。



夏喜の上半身は、しっとりと濡れているようだった。



両手には、バスタオルを持って、筋肉質な、背中だった。



だけど、見てはいけないものを見てしまったような気がした。



つるりとした、大きな肌色の背中に、赤い、痣。



背中から左腕にかけて、斜めに大きく一本、入っていた。



ずいぶん広範囲に見えたけど、あれは、火傷?



ううん、火傷だったら、多分あんな線上にはならない。



何か、鋭利なもので傷をまっすぐつけられたかのような、細くて長い傷跡だった。



「なに、あれ…」



部屋に戻ると、暗闇の中、腰が砕けたように座り込んだ。



夏喜の、傷。



あれが、夏喜の中にある、心の傷?



一緒に暮らすようになって、すっかり忘れていた。



夏喜の優しさと、自然な無邪気さと、日常に触れて。



だけど、ずっと思っていた。



夏喜には、何か内に秘めた傷がある。



私と、同じような。



翔さんがいつか、言っていたように。



気になるけど、それどうしたの?なんて、本人に気軽に聞けるわけない。



あんな大きな傷、小夜子さんが知らないとも考えにくい。



だったら、知ってて敢えて何も言わないということ。



そうなると、小夜子さんにも聞きづらい。







「だから、あたしのとこに来たの?」



私は、こくん、と頷いた。



目の前に座る、彼を見つめて。



その日、学校が終わってすぐ、夏喜がまだ出勤してくる前に、私は翔さんのお店に行った。



「翔さんなら、何か知ってるんじゃないかと思って」



翔さんも真剣に私の瞳を見つめ返す。



「何のため?」



一息置いて、彼が言う。



「え?」



「何のために、知りたいの?ただの興味本位なら、やめといた方がいいわよ?」



「興味本位なんかじゃない!」



「じゃあ?」



「夏喜のことを知りたい。もし、それで何かあるんだったら、夏喜の力にもなりたい」



だって、夏喜は私を助けてくれたから。



決して冷やかしなんかで聞いてるんじゃない。



それを、分かって欲しい。



ふぅ、と翔さんがため息をつく。



「藍ちゃん、今、夏喜のとこにいるのよね?」



「…うん」



「正直、意外だったわ。まぁ、追いかけなさいって言ったのはあたしの方だけど、まさかそんなことになるなんてね。あの子、あんまり人に深く介入しようとしない子だったから。

…でも、やっぱり藍ちゃんには何か感じるものがあったのかしらね?」



「それは…」



分からない。



夏喜が、いったい何を考えているのか。



どうして私に、こんなに良くしてくれるのか。



でもだとしたら、それも含めて、知りたい。