新入社員と私。~その後~⑬ | ♡妄想小説♡

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主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

家に帰ると、もうすでに中島くんは帰宅していた。



「ただいま」



「おかえり」



ソファに座って、何気ない言葉で迎えてくれる。



こんな言葉を交わし合うのが、何だかとても久しぶりのような気がして、とっても貴重で大切なものなんだと、実感する。



もう、怒っていないのだろうか。



ソファに近づいて、その場に荷物を下ろす。



そばで彼の顔を見つめると、いつもの中島くんと変わらない気がした。



話したいけど、とりあえずは…



「ご飯、作るね。お腹空いたよね?」



冷蔵庫には何があっただろうか。



くるりとキッチンの方に体を翻したら、くいっと服の袖を掴まれた。



首を回して、振り向く。



「ウーバーで、よくない?」



「…うん」



「座って」



言われるがまま、隣に座り込む。



少しだけ、間隔を空けて。



今の、二人の心の距離みたいに。




中島くんが話し出さないので、私の方から口を開いた。



「あの…今日、びっくりしちゃった。みんなの前で、あんな風に言うから」



「あかんかった?」



「そういうわけじゃないけど。いきなりだったから…」



「マキは、言いたくなかった?」



「ううん、違うよ。そんなことない」



気持ちが互い違いにならないように、目を見つめてそう言った。



もう変な言い争いはしたくない。



だって私は嬉しかったのだから。



みんなの前であんな風に宣言してくれて。



「山下さんも結婚するし、もういいのかなって思って」



「うん、そうだね」



だって私たちが会社で内緒にしていたのは、山下に気を使ってのことだったのだから。



山下が振られて、中島くんに乗り換えたなんて、そんな噂が会社で流れたら、きっと彼を傷付ける。



そういう経緯があったから。



「だってしんどかったやろ?」



どうして、と思う。



「そのせいで、結構ケンカもしたし。これで変な虫つかんくなるやん」



「…うん」



それは、すごく嬉しい。



中島くんが私のためを思ってそうしてくれたんだったら。



昨日は怒らせちゃったけど、こうして考えてくれて、私たちはまだ大丈夫だ、と安心する。



「俺だってもう限界やった」



「え…?」



「マキは何にも分かってない」



「なに?」



「俺だって、すげー嫌だった。マキが、会社で、別の男の人としゃべってんの見るの。

俺と同期のやつらが、マキのこと、変な目で見てんの、やめろって、すげー言いたかったよ」



「え…、うそ」



「マキは周りを見くびりすぎだよ。今日のスカート短くない、とか、ブラウス透けてるとか、あいつら好き勝手言ってるんだ。マキとだったら、全然、イケるとか、そういう…

そーいうの聞いてて、何も言えん俺の気持ち、分かる?

全然知らんかったやろ?」



「…ごめん」



何故か全然身に覚えのないようなことで責められてる気がして、ぽかん、と口が開いてしまう。



「限界なのは、俺の方だったんだよ。…それなのに、山下さんとご飯行ったとか、そんなこと言われて、もう、俺…」



「ごめん。ごめんね、颯ちゃん。でも、それは…」



片手で顔を抑えて俯く彼の肩に、そっと手を添える。



触れられるくらいの近さに寄り添って。



「いや、いいんだ。ごめん、分かってる。信じて、いいんだよね?」



添えていた手を離して、こちらを見つめる瞳が潤んでいて、心臓がキュン、となる。



普段、生意気に大人ぶってる様子の中島くんのこういうちょっとした素顔が、私の女心を擽る。



犬みたいに、髪の毛をくしゃくしゃにして、抱きしめたくなる。



「うん。私が好きなのは、颯ちゃんだけだよ?」



「ほんとに?ほんのちょっと、やっぱ惜しいことしたな、とか後悔したりしたんちゃうの?」



どき、とするような鋭いことを言うのも、この颯ちゃんの特徴だ。



「ううん、そんなことない。私は、颯ちゃん一筋だから」



そう言って抱きしめる。



恋愛をする上で、少しの冗談や嘘も、たまには必要だ。



「ほんまに?」



「うん、ほんと」



「マキ…」



中島くんが私の体に両手を回す。



あの頃よりは、少しだけ腕が逞しくなった気がする。



「一緒に、暮らそうか?」



「え?」



「今でも、ほとんど一緒におるんやし、家賃、もったいないやん?」



「そうだけど…」



「それとも、嫌?」



「そんなことないよ」



「じゃあ、そうしよう?」



ギュッと繋がる体が、一つ強くなって、中島くんの気持ちが伝わるようだった。



今は、これだけで十分だ。



「これは、俺なりのけじめのつもりでもあるんだけど」



「何の?」



「これからもずっと、一緒にいたいって、そういう意味」



「え?」



体を離して、顔を覗き込もうかと思った。



けれど中島くんの力がそうさせまいとする。



「マキも、そのつもりでおってくれてるってことで、いい?」



顔を見ないまま、そう聞かれた。



返事は、もう、うん、と答える以外に何もない。



「よかった」



抱き合ったまま彼が安堵したのが分かった。



「そろそろ、触っていい?」



彼の指先が背中でそっと囁くように動き出す。



「そろそろ、限界なんだけど、」



言った言葉に、くす、と頬を揺らす。



「いいよ」



付き合ったばかりの頃を思い出すみたいだ。



二人気持ちが通じ合ったみたいに微笑み合って、お互いに、唇を近づけた。




久しぶりに、今夜は甘い密に溺れよう。








新入社員と私。~その後~

おわりです😊

ありがとうございました







急にこの間のお休みに、この二人のことを思い出して、急遽書いてみました😊

こんなに長くなる予定はなかったんだけど…


読んでくださった方ありがとうございました!



今回はちょっと、山下さんにフューチャー当たりすぎましたね🤭

私が書くとどうしても素敵になっちゃうので🤤❤️

マジであのままチューさせたかった💋


何はともあれ、中島くんと仲直りできましたので、この二人のお話はおわりです🤭


最後にちょっとふざけた妄想書きますねー🤤✍️