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望郷を手土産に

$02xygen
ふるさとは、遠くにありて想うもの—
室生犀生

なるほど、と頷いたきり、
ついさっきまで忘れていた句。


土地にはその場所特有の匂いや色があり、
個々に独特の時間の流れを作りながら、
独立して回っているわけです。
まるで小惑星か何かの如く。
その土地だけの地軸が個々にあり、
平たく言えば地球自体が宇宙の如く。

生まれ育った土地のそれは、
成長の過程で根深く組み込まれ、
余所の土地に移り住もうとも、
引力のようなものの作用が働くようで、
時たま不意に呼応するようです。

しかし慣れ親しんでいた土地なのに、
ある時ふと思うことがあります。
あの場所は本当に存在するのかと。

存在しないわけがないのですが、
そんなパラレルあって堪まるかといった感じですが、
よそよそしさに似たものを否めない。

住みついた土地の引力のようなものが、
生まれ育った土地の引力のようなものを
何かを上書きするために、
弾き飛ばしてしまうのでしょうかね。

遠い街の道端で、
何とも言えない妙な懐かしさに出逢うとき、
もしかしたら、弾き飛ばされた何かの破片が、
そこに転がっているのでしょうかね。


御礼

お祝うメールありがとう御座いました。
精進していきますこれからも。

何通か質問ありましたけども、
歳は秘密です教えません。
ひとつくらい謎があったほうがね。
なので言いません。

言えないんじゃなくて、言わない。
ここ重要です。誤解なさらぬよーに是非。

ありがとう御座いました。
重く受け止めます。

暗澹と

世界はこんなにも暗澹としているのに、
なんと平和な今日でしょう。

そもそも世界は本当に暗澹となどしているのかね。

今日も野良猫は日向で毛繕いに余念がなく、
緩やかな何の変哲もない日常を、
何事もなく過ごしていたりして、
柔らかな空気を生み出して、
それに誘われて撫でにくる人間に、
寛大な対応、グルルゴロゴロなんつって。

冷蔵庫の中身が寂しくなるのと同じレベルで、
世界には大したもんなんか詰まってないような…

見渡せる限り、暗澹らしい暗澹はなく、
少しばかりの憂鬱や気怠さがあるくらいで、
核兵器が炸裂しそうだろうが、
今ここから見渡せる限られた世界には、
憂いの化石と、悲観の屑と、他少々。
だから大した暗澹はなくて、
死にたいなんて思わないし、
死にたくなるほどの苦悩もないし、
死にたくなるとしたなら、
ただあなたの優しさが怖がった並の、
贅沢極まりない理由くらいしか浮かばない。

過ぎた物事を嘆くにはまだ早過ぎて、
この先を憂うにはもう遅過ぎて、
今だけが世界の全てに見え始めて、
悪くないかななんて、思わないこともない。

紫煙

何かの本で読んだ記憶があります。
煙草の煙りは天国への目印になるそうな。

自分が吸った一生分の煙草の煙りが、
一本の細い糸になっていつか現れるそうで、
それを辿っていくと、天国に繋がっているとか。

明らかにでっち上げですけども。
愛煙家ならではの夢ある素敵なお話で。

一本吸う毎に死期が迫ってきますよーとかゆう、
戒め的な話とも取れますけども…
そこら辺は気にしません。

単に喫煙者などではなく、
あえて愛煙家を名乗りたいほどに、
煙草に愛を感じます。

昔は煙草の煙りが偏頭痛のスイッチだったので、
喫煙者を親の仇のように思っていたのですが、
ある時からそんな症状も治まり、
今では泣く子も噎せる愛煙家です。

煙草の煙りを吐き出すとき、
その時に感じている事柄や、
その時に思っている事柄やそんなものを、
煙りに込めて上に吐き出して、
手紙の代わりになればなと。
そんな想いで煙草に火を点けて、
返事の来ない手紙を今日も、
送り続けているのです。なんつって。

イミテーション

漠然と、直感的に知っていること。
満たされれば、本質は枯れる。

満たされたりしてはいけない。
自分がどれ程それを欲していると知っていても
それにだけは断じて、満たされてはいけない。

渇望して渇望して、
ひたすらに渇望し続けるべきで、
そう在るべきその理由は明確で、
間違っていようが、重要ではないし、
間違っていようが、今は正しい。

失ったからこそ得たもの。
得たからこそ失っていくもの。

全てを手に出来る器があるならば、
迷わずに叩き割る勇気を。
全てを手に入れることは不可能で、
全て手に入れたと錯覚をしただけに過ぎない。

何かはきっとイミテーション。
若しくは、全てがイミテーション。

それでもいつか、願うかも知れない。
例えイミテーションだとしても、
耐え難い渇望から逃れようと、
いつか手を伸ばす日が来るかも知れない。

そうなる前に、
ありったけの真実を残そう。
全てがイミテーションになる前に、
何かがイミテーションになる前に、
八月の喪失感を、忘れないように。