駅までの通り道、どうも気になっている家があった。それは、道路がまっすぐ伸びて、真正面に玄関がある家だった。その家は新築で、それはとてもきれいな家だった。駅から徒歩3分。背後にはこんもりとした森があり、閑静な住宅。外車を所有し、誰もがうらやむような暮らしぶりだった。その家の息子は、息子と同級生。都内の進学高からストレートで名門の大学に入った。母親は細身で美人でヨガの教室を開き、海外にもヨガを教えに行っていた。父親は海外で仕事をしており、見るからに「成功者」といった感じだった。
それでも、私はその家の前を通るたびに「ここって、どうなのかなあ」といつも考えてしまうのだった。私の考えすぎかと思いなおしたこともあった。
ところが、急に家族の運命が崩れてしまった。
夫婦は離婚。母親は外に男をつくって家に帰らなくなってしまった。家族は分断されてしまった。
もし、道路が家にまっすぐに伸びていなければ。せめて玄関の前に外からの気をよける植木を置いておけば、ちょっとは違ったかもしれない。
玄関が違う位置にあり、外からの殺気をやわらげることができたら、違っていたのではないか、と思う。
師匠に聞いたら、「この家はごみためだ」と言っていた。
人間は自然に対し、あまりにも傲慢になってしまったと思う。利便性の良さから、がけの上に家を作ったり、地盤が弱いところに土を盛って家を作ったり。もう少し、先人の英知を尊重したほうがいいのかなあと思う。