手に摘みて
いつしかも見む紫の
根にかよひける野辺の若草
源氏物語
正男は孝とともに樹々を切り払い
開墾のために購入したブルドーザーで地をならした
静かな山中に
来る日も来る日もブルドーザーのエンジン音が響く
作業は難航した
地面が固く岩石が多い土地だった
ごろごろ出てくる石を集めては一輪車で運び出す
気の遠くなるような作業が続いた
それでも数年後には山の斜面はひな壇状に整地され
やっと藤棚を設置できるまでになった
藤棚を支える支柱を
廃棄予定の木製の電柱にしたり
難題や難航を乗り越え
正男が発案した藤のトンネルも完成
いよいよ植樹の開始である
最初に植えたのは
今は湖底となった懐かしの郷里に生えていた一本の藤
隣家から譲り受け
ここまで大切に育ててきた藤だった
以降
いい藤があると聞けば
手土産をもって各地を訪ねてはもらい受け
一本一本増やしていった
こうした苦労の積み重ねにより
1977年
ついに私設〝 河内藤園 〟が開園
開墾を始めて
実に9年が過ぎていた
しかし
正男が想像したほどの来場者は来なかった
有料とわかると
「 藤を見るのに金を払えるか 」
と怒って帰る人もいた
でも正男は信じていた
「 つまらんかったらお金は返すけ 」
帰り際
「 すごかった ありがとう 」 と興奮した声が返ってきた
入場料を返せという人はいなかった
河内藤園は
次第に知る人ぞ知る
藤の名所となっていった
いつも
お付き合い下さってありがとう
物語はあと一回...
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今日も笑顔でねッ
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