豊かな芳香とともに咲き誇る藤の花房は
春風に吹かれ優雅に波立つ
その様子は万葉の昔から 「 藤波 」 と呼ばれ
つつましく清楚な花として人々に愛され親しまれてきた
地元にある貯水池の程近く
その藤波の美しさに
世界の注目が集まる藤園がある
河内藤園は
樋口正男という男の夢から生まれた
〝 私設 〟の藤園である
1911年
正男は山々に囲まれたのどかな農家の長男として生まれた
正男が生まれ育った村は湖底に沈み
移転した小学校の最初の卒業生となった
この頃
正男は一冊の本と出会う
「 地に爪跡を残す者 」 という一冊の本のタイトルが
少年の心を強く揺さぶった
俺も何か一つこの世に爪跡を残したい
正男に夢が生まれた
戦時中
召集を受けた正男は 戦地を転々とする
乗っていた船の撃沈や
マラリア...
何度も生死の境を彷徨った
帰還後は家業の農家を継ぎ
その傍ら 山から杉やヒノキを切り出し
市場や製鐵所関連の工場に収め
妻と4人の子どもを守った
50歳を過ぎ
生活も落ち着いてきた頃
湧き上がってきたのは
少年の頃に抱いた夢...
この世に生を受け
九死に一生を得た人生...
何としても
地に爪跡を残してから
この世を去りたい
ある日
正男は思いを長男の孝に打ち明けた
「 この雑木の山に花を植えたい。
それも日本らしい藤の花を。
美しい藤棚ができれば
みんなが見に来てくれるはずだ 」
孝も正男の夢に賛同してくれた
1968年
こうして 後にその美しさで世界を魅了する
〝 河内藤園 〟誕生の物語が始まった
今日は
この詩を
あなたに送ります
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藤波の
花は盛りになりにけり
平城の京を思ほすや君
万葉集







