晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜 -84ページ目

晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

晴れた日は山に登り街を走り、 雨の日は好きな音楽を聞きながら本を読む
そんな暮らしがいい!

2018年に吉田修一の原作本が出版された時、歌舞伎の世界を描いた作品というのでちょっと興味を惹かれて読んだことがあります。ストーリーは面白いと思ったものの、今ひとつ馴染めず、何より「(人間)国宝」というタイトルに違和感を覚えた記憶があります。

 

そんなイメージを引きずっていたので、今回映画化されたと知った時も、すぐに観に行く気持ちには正直なれませんでした。

 

しかし周りで観た人たちの感想や、レビューサイトのコメントを見聞きすると、意外に好評だったので、「どれどれ」という感じで、遅ればせながら観に行ってきました。

 

 

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公開から1ヶ月経っても、シネコンの一番大きなスクリーンで上映されていて、人気のほどが伺えます。年配の人が多いかなと思っていたら、意外に若い女性の姿が目立ちました。これは主演の吉澤亮横浜流星目当てだろうなと思いながら席に着きました。

 

(約3時間の長丁場なので、途中でトイレに行きやすいように通路側の席を確保(笑)。幸い途中で抜けることはなかったですが。)

 

観終わった感想はといえば、思っていた以上に良かったです。何より皆さんが絶賛しているように、吉沢亮横浜流星の歌舞伎の演技が素晴らしい。

 

私は比較的歌舞伎の演目を(生や映像で)観てきた方ですが、ふたりの女方の所作や踊りは、本職の歌舞伎役者からみてもそこそこのレベルじゃなかったんでしょうか。約一年半かけて演技指導を受けたそうですが、着物での足捌きや細かい手の動き、重い衣装を支える体幹のすばらしさ、そして独特のせりふ回しなど、そのまま舞台に出ても違和感のない動きでした。

 

特に吉沢の化粧姿の綺麗なこと。もともと中性的な面立ちが映えていましたね。現実の歌舞伎役者なら人気が爆発しそうなくらい艶やかでした。

 

原作が長編なのでかなり端折った脚本でしたが、ポイントはちゃんと押さえてありました。あらすじはあちこちで詳しく書かれているので省略しますが、歌舞伎界の光と影、二世と部屋子の血筋についての葛藤と絶望、そしてそれぞれの波乱万丈の生涯が分かりやすく描かれていたと思います。

 

主役のふたりはもちろんですが、脇役も良かった。父親役の渡辺謙、母親役の寺島しのぶ、恋人役の高畑充希など。とりわけ女方の先輩役者の田中泯の演技が素晴らしい。目つきと手の動きだけで圧倒されました。

 

(余談ですが、現実では歌舞伎界の真ん中にいる寺島しのぶは、この映画のあり得ない設定をどう思いながら演じていたんでしょうか?)

 

2人の子供時代の子役たちも良かった。いつも思うのですが、ドラマや映画などで、主人公の子供時代を映す時に、よくあんな顔つきの似た(そして演技力もある)子役たちを探してくるなと思います。

 

そして何よりこの作品が第一級の歌舞伎入門になっていることが素晴らしい。「藤娘」「連獅子」「娘道成寺」「曽根崎心中」「鷺娘」など、歌舞伎の有名な演目が見事なカメラワークで映し出されます。舞台全景の華やかさ、役者の顔がアップになった時の美しさ、そして伝統に裏打ちされた演出の素晴らしさ。

 

両主役目当てで観にきた若い人たちにも、「歌舞伎」の良さが伝わってファンが増えたらいいなと思います。

 

吉沢亮と横浜流星、ふたりが女方で舞台で演じている時に、白塗りの化粧があまりにも似合いすぎて、どっちがどっち?とわからなくなる時がありました(笑)。逆にふたりが普段着で話している場面などは、(古い時代設定なのに)あたかも今現代でやりとりしているように見えて、笑ってしまいましたが。

 

舞台で演じている時のお囃子に被せて、ストリングスなどのBGMが流されていました。本来なら邪魔になるはずの音楽が、見事にお囃子と相まってドラマチックな演出になったのは意外でした。

 

本当はもっと長い上映時間だったのを、かなり削って3時間に収めたと聞きました。歌舞伎の舞台映像を多めに取り入れたために、ストーリーや登場人物たちの絡みを大幅にカットせざるを得なかったようです。いつかディレクターズカット版も観てみたいですね。