からの続きです。
「ばけばけ」の放送が始まってしばらくは、「ストーリーの展開が遅いからダルい」だの、「画面が暗すぎるから見づらい」だの、SNSでは散々な言われ方をしました。
でも、慣れてみると、明治初期の何気ない日常生活を丁寧に描く展開が心地良くなってきました。これは、よく考えられた脚本とそれをうまく活かした演出(もちろん役者の演技力も)の結果でしょう。
(NHK大阪放送局で展示されていた、第一回の台本の表紙と裏表紙)
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【脚本】
「この世はうらめしい、けど、すばらしい」というキャッチコピーのもとで書かれた、ふじきみつ彦の作品。彼は他にもNHKのドラマ脚本を書いていたようですが、私は初めて観た作品でした。
「怪談」にかけて「うらめしい」としたのはわかります。加えて「うらめしい」ことを抱えた人たちの日常と心の機微を淡々と描いて、時に「すばらしい」ことがあると笑顔を見せる、その匙加減が良かったですね。
物語の進行を普通のドラマよりゆっくりすることで、細かいことが印象に残ります。ちょっとしたセリフや動作が伏線となって、後々に回収されると言う場面を何回もみました。そのため、ながら視聴ができず、セリフを聞き逃さないように観なければいけませんでしたが。
第一話の冒頭「丑三つ時」の丑の刻参りも、怪談がテーマだからと簡単に考えていたら、後半にトキが元の雨清水家に籍を戻して「雨清水トキ(うしみずとき)」になったときは、なるほど!と感心したものです。
同じように、最初に主人公に「これは私トキの物語です。」と言わせておいて、最終回に「私トキの物語でした。」と締める、壮大な伏線回収がありましたね。
ヘブンにbeer(ビア)が飲みたいと言われて、トキが探し回る回も傑作でした。ビア→枇杷→琵琶→魚籠まではわかるとしても、鎌(カマー)はやりすぎだし、独楽、胡麻と続き、最後におサワを引っ張ってきて「サワ〜」とやった時はひっくり返りそうになりました。NHKで物ボケが見られるとは.....。
スキップシーンも話題になりましたね。いかに下手くそにスキップするか、出演者はみな苦労したようです。他にもコントみたいなシーンがいっぱいありましたが、役者たちが照れずに真面目に演じていたので、より可笑しみが増した気がします。
(NHKには、コント番組「LIFE 」の実績がありますね)
ナレーションで状況を説明するという手法が取られなかったのも、今回の特徴です。阿佐ヶ谷姉妹を「蛇」と「蛙」にして、部外者の感想めいたことを呟いてもらう、というのも視聴者目線で面白かった。
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【演出】
そんな突飛な脚本を元に、演出をするのも大変だったと思いますが、芸達者が揃った中での演技なので、不自然さはあまり感じませんでした。聞いたエピソードでは役者同志のアドリブもあったとか。
セリフがなくても顔の表情ひとつで感情が手に取るようにわかる演技。普通はセリフを言う役者をアップにするのに、敢えてボカして聞いている方にピントを当てる。後ろ姿を映すだけで何を思っているか、感じているか、観ているものに伝わってきました。
今後も語り継がれるであろう、名シーンの数々。
トキとヘブンが宍道湖に夕日が沈む中で、それぞれの想いが通じて手を繋ぐシーン。
錦織が死期が迫るなかで、送られてきたヘブンの新刊を読みながら、ふっと微笑むシーン。
西日の差す縁側で、死期が迫ったヘブンがトキの肩に頭をかかげて眠るシーン。
それぞれセリフが無いのに、胸が熱くなるシーンでしたね。
これも思い出したらキリがないので、これくらいで。
>>>③音楽・美術など、に続く

