太平洋戦争の末期、激戦があったパラオのペリリュー島を舞台にした戦争漫画があるのは、以前から知っていました。コミック雑誌の連載が終わって、11巻の単行本になってからも読む機会がありませんでした。
そんな漫画がアニメーション映画になったと聞いて、早速観に行ってきたのです。
あらすじ(公式サイトより)
太平洋戦争末期のペリリュー島、漫画家志望の兵士・田丸が任命されたのは、亡くなった仲間の最期の勇姿を遺族に向けて書き記す「功績係」だった。同期ながら頼れる上等兵・吉敷とともに戦った南国の美しい楽園は、襲いかかる米軍の精鋭4万人と、極力無意味な玉砕を禁じられ、徹底持久を命じられた日本軍1万人によって狂気の戦場と化していた。“戦争 が日常”にあった時代、若者たちが極限世界で壮絶に戦い、懸命に生きた、史実に基づく戦火の友情物語。
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終戦1年前の昭和19年、敗色濃い日本軍の戦いの中で、4万人のアメリカ兵 vs 1万人の日本兵という、圧倒的な劣勢に立たされても戦い続けなければならなかった戦争がもたらす狂気の世界。
砲弾や銃弾、手榴弾などで一瞬にして吹き飛ばされる兵士たち。手足を無くし、頭も半分無くしてもなお生きている仲間を見ながら、伝染病もはびこるなかで、薬もなくて治療もできないもどかしさ。満身創痍の持久戦の中で後方支援もなく、食料や水も尽きて飢餓状態になり、草や鳥、虫などを食べて凌ぐ日々が続きます。
緊張感が続くストレスで、仲間の間で同士討ちも始まり、一人二人と亡くなっていく状況がこれでもかと描かれます。
そんな極限状況が次々とスクリーンに描かれ、これが実写映画なら思わず目を背けたくなる状態でも観続けることができたのは、ひとえに登場人物がすべて3頭身のかわいらしいキャラクターで描かれているおかげです。これは作者もコメントしていますが、若い人たちにも戦争の悲惨さを伝えるための設定だそうです。
このアニメ映画で描かれている内容は、決して大袈裟でもなんでもなく、実際にペリリュー島で起きたことをほぼ史実に忠実に再現したものです。作者の武田一義さんも連載を始めるにあたって、膨大な資料を読み込み、当事者にもインタビューをして、物語の構想を考えたそうです。
戦争中の状況を描いた単行本10巻を2時間のアニメーション映画に収めるには相当な苦労があったと思いますが、原作者の武田さんが共同脚本に加わったことで、特定のエピソードだけでなく、作品全体の芯がブレることなく伝えることに成功しています。
主人公が「功績係」という設定が絶妙です。ネタバレになるのでここには書きませんが、最後の方でその設定が生きる場面があり、これには泣かされました。
日本軍1万人の中で、最後まで生き残った兵士はわずか34人!という史実には、声も出ません。太平洋戦争の激戦地のなかでも、他に比べてあまり知られていないペリリュー島の状況を少しでも知るためにも、機会があれば観てほしい映画です。
「火垂るの墓」や「この世界の片隅に」など、戦争を描いたアニメ映画はいっぱいありますが、これもそれらに匹敵する説得力を持った映画だと思います。
戦争映画は苦手という人こそ映画館に行ってほしいです。そして、どんな状況にせよ戦争が悪だという制作者のメッセージを感じ取ってください。
