映画 ”ファーザー” | 晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

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晴れた日は山に登り街を走り、 雨の日は好きな音楽を聞きながら本を読む
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ようやく6月1日から映画館の休業要請が緩和されて、平日時短営業(土日は休館)ながらロードショーが観られるようになりました。本来なら休館期間中に上映されるはずたった映画の中で、観たいと思う作品が4つほどあったので、少しずつ観に行く予定です。

 

(映画館の休業要請については、いろいろ思うところがありますが、ここで書くのはやめておきます)

 

早速水曜日に観に行ったのは、主演のアンソニー・ホプキンスが今年のアカデミー主演男優賞を受賞した事で、一躍有名になったこの映画です。

 

(映画館は、収容人員を50%にするということで、座席は一つおき。それでもほぼ満席で、妙に女性の観客が多いと思ったら、水曜日はレディースデイでした。)

 

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元々は密室舞台劇なので、映像のほとんどが室内での撮影です。戯曲の原作者フロリアン・ゼレールが自ら監督して、脚本も彼を含む3人の共同制作だそうです。

 

ロンドンで一人暮らしをしているアンソニー(偶々なのか、当て書きなのか、アンソニー・ホプキンスと同じ名前)は、認知症を患っていて記憶が薄れ始めていました。近くに住む娘のアンが様子を見ながらいろいろ世話をしているのですが、段々現実と幻想の境が曖昧になって、会う人や話し合った内容も記憶から無くなりがちになります。

 

アンソニー・ホプキンスは現在83歳。この映画ではほぼ同じ年齢の老人役を演じています。「羊たちの沈黙」の怪演から30年。歳を重ねてもアンソニー・ホプキンスの演技は凄みをましています。それが演技なのか地なのか分からないくらい、とても自然な演技で、アカデミーの受賞も納得です。

 

自分は呆けるはずがないと思う多くの老人と同じように、彼も自分の記憶が正しいと言い張り、家族や周囲の人を困惑させます。娘には威圧的な態度を取るかと思えば甘えてみたり、事情を詳しく知らない娘婿とは衝突し、若い女性介護人の前でははしゃいでみたりしますが、次第に自分の病気を認め始め、涙を流します。イタいけれども、どこか悲しい姿は、名俳優の面目躍如。

 

認知症を扱ったドラマや映画は色々ありますが、その多くは介護する側からに焦点を当てています。しかし、この映画の特徴は老人の視線と記憶の描写になっていることです。そのために、映画の最初の方では時系列や場所が二転三転することで、観客も「何が起こっているんだ?」と戸惑ってしまい、さながら心理サスペンス映画を観ているような感覚になってしまいます。

 

近い将来、自分の身にも起こるかもしれない世界を垣間見るような、ちょっと悲観的で妙な気分で映画館を後にしました。