イマイチ観る気にはならなかった映画ですが、世界各地の映画祭で最高賞を獲って、今年のアカデミー賞にも6部門でノミネートされて大本命といわれている作品が、どんなものか自分の目で確かめに行ってきました。(アカデミー賞獲得=いい映画、とは限らないし、自分の好みもあるので)
題名にある”ノマド”というのは、ここ数年”ノマドワーカー”*などとよく聞かれる言葉ですが、”定住しない遊牧民”といったような意味で使われています。(*”ノマドワーカー”とは決まった仕事場所を持たない職業の人のこと。コロナ禍で多くなったかも?)
この映画は、アメリカ西部をキャンピングカーなどで移動生活をしている人たちの生き様を、1人の女性の生活に焦点を当てて描いた作品です。
ある女性の車上生活者が書いたノンフィクションを読んで、その内容に惚れ込んだ女優のフランシス・マクドーマンドが、自らプロデュースし主演も務めた映画だそうです。監督・脚本も彼女の指名で中国出身の女性クロエ・ジャオが行いました。
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2008年に起きたリーマン・ショックのために務めていた会社が倒産し、企業城下町だったため住む家も生活する町も無くなって(郵便番号も抹消!←アメリカでは実際そうらしい)キャンピングカー生活を余儀なくされた主人公のファーン(マクドーマンド)は、「現代のノマド」として、時にはアマゾンの倉庫で働いたり、時には公共施設の清掃作業などの雑用をこなしたりして、かろうじて生計を立てながら、車上生活を送っています。
その道中で同じような車上生活者との交流を通じて、時にはお互いの境遇を慰め合ったり、トラブルに見舞われた時には助け合ったり、持ち物を融通しあったりして、束縛のない自由な生活を送っていきます。
そんな中で出会ったデイブとお互い心が通じ合うようになり、一緒に暮らすように誘われますが.....。
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まさにアメリカでしか作れない”ロードムービー”ですね。都会のビル群などは一切現れなくて、スクリーンに映し出されるのは、山と岩と茶色の大地と青空とどこまでも伸びる道路だけという、アメリカ西部の圧倒的な大自然。
日本でも最近はキャンピンングかーで”旅行”する人たちが増えたと言っても、やはり車社会の歴史や文化が違いますね。
そして、エンドロールを見てびっくりしたのは、主演の2人以外は実名で出演していた(つまり素人)ということ。そのために、ドラマでありながらドキュメンタリーのような作品になっています。
象徴的だったのが、「ホームレス」」と「ハウスレス」は違うというくだり。キャンピングカーで暮らす“現代版ノマド”たちは家を持たない(あるいは失くした)「ハウスレス」であっても、家族や友人との繋がりを失くした「ホームレス」ではないというのは、なるほどと思いました。
大自然をバックに流れるBGMがなかなか良かったです。これだけでヒーリングミュージックのプレイリストができそうです。
ただ、映画全体としてはいまひとつ心に響くものがありませんでした。小さなトラブルはあっても淡々と過ぎていく日常描写が、刺激の多い生活に慣れた身には物足りなかったのかもしれません。