「泉布観」(せんぷかん)というのは、大阪にある造幣局の応接所として明治4年(1971)年に建てられ、現存する建物の中では大阪で最も古い洋風建築になるそうです。「泉布観」の名前は、明治天皇がここを訪れた際、貨幣を意味する「泉布」と館を意味する観から命名されたと言われています。
国の重要文化財に指定されて通常は中に入れませんが、毎年3月の3日間だけ内部が一般公開されるのです。去年ラン友のロ〜ガンさんからそんな話を聞いたので、今年は是非中に入ってみたいと思って、抽選に応募したところ当選ハガキが届きました。
花冷えのする23日土曜日、ヨメと出かけてきました。泉布観は、大川沿いにある造幣局の北側に位置し、JR桜ノ宮駅と京橋駅の中間になるため、それぞれの駅からちょっと歩いて行かなくてはなりません。
大川沿いのランニンングコースで走るときはいつも外から眺めていたのですが、実際に中に入るのは初めてです。外観はこんな感じ、正面に桜の大木があるので、満開の時は映えるでしょうね。
10時の開館直後は混むと思って、余裕を見て11時過ぎに到着。しかしすでに10数人が入場待ちだったため、15分ほど待たされた後で入場できました。
受付で渡された泉布観の平面図です。右が北になり、入り口は東向きで大川に面しています。
入り口は意外に質素です。タイルを模したペンキ塗りの床に赤絨毯が敷かれ
天井からのライトもあまり華やかさはありません。今はさすがに電気ですが、建築当初はガス灯だったそうです。
最初に入ったのは一階南室。この館の中で一番広いスペースがあります。
照明もよく見ると凝った彫刻が入っていますね。これも昔はガス灯だったそうです。
アップするとこんな感じ。
壁のデザインも凝ってますね。
1階北東室で最初に目に入るのが、このカットグラスのシャンデリア。
壁には重厚な暖炉があります。
足元をよく見ると、何やら動物(?)の彫像が。解説によると、これはグリフォンという獅子の体に鷲の羽根を持った想像上の動物だそうです。
隣の南西室に入ると
床はタイルに似せたペンキで彩られています。
暖炉の扉は当時珍しかった装飾タイルが使われているそうです。
ギシギシと音を立てる階段を登って、2階へ上がります。
踊り場の採光窓も、こんな装飾ガラスが使われているのを発見。
2階の北東室は「玉座の間」と呼ばれ、行幸の時には天皇が座る御座所が設けられたそうです。最初からシャンデリアは無く、カーテンボックスの先にブラケットが取り付けられた照明になっています。
大きな鏡と暖炉。
残念だったのは、カーテンの生地が年数を経てボロボロだったこと。
2階の北西室は比較的綺麗でしたが、ここも当時のカーテンがズタボロだったのが悔やまれます。
2階はぐるりとベランダに囲まれています。ガス燈とピンクの手すりがかわいいですね。
西側のベランダの先は、トイレがあったところ。
反対側には洗面室が2部屋。下がスノコになっているので、バスタブかシャワーがあったかもしれません。
2階の南側にも3部屋あります。ベランダに面した窓は、すべて床から続くフランス窓という造りだとか。
廊下も(当時とても高価だった)タイルに似せたペンキで装飾されていて、かなり凝っていますね。
東側のベランダから北を見ると旧桜宮公会堂が、
南には道路を挟んで造幣局が見えます。
東は大川に架かる桜宮橋。今年からコースが変わる大阪マラソンは、この橋を渡って造幣局と宣布間の間を駆け抜けます。
屋根を見ると、寄棟造の瓦葺きです。こんなところにも明治時代初期の和洋折衷の工夫がみてとれます。
フランス窓のガラスもよく見れば、細かい装飾でいっぱいです。
かなり混んでるかなと思っていたのですが、(床が抜けないように?)一度に30人しか入れないため、かなりゆっくり見て回ることができました。
見終わった後、表に出て館を支える石柱をよく眺めると。これは花崗岩のようですね。
建物の北側には狭いながらも日本庭園が造られています。
パンパンと手を叩くと、ちゃんと鯉が寄ってきました。
周りをぐるりと一周して見学終了。泉布観の中は予想したほど派手さはなかったので、ちょっと物足りなかったですが、歴史を物語る貴重な建物を間近で見られたのはなかなか無い体験でした。
おまけ
入場を待っている間に、隣接する旧桜宮公会堂で神父さんを伴った結婚式が行われていたので、思わずパチリ。花冷えのする肌寒い中でほっこりさせてもらいました。