故に……最強ο -3ページ目

初デート

フェンス越しで手を握り締めた後、T子はゆっくりとアパートに向かった。


玄関に入る手前で、振り向き小声で

『またね』

って、唇の動きから聞き取った。


なんとも……まぁスリリング。目の前の駐輪場には彼氏様のマジェスティーが止まってるんだもの。


でもね、不思議と最初に抱いた罪悪感は生まれない。

むしろ、こんな状況を(楽しんでる?俺。)っていう高揚感でいっぱいだ。


ただ、やはり同棲ってのは心苦しい。年頃の男女だもん、彼氏様は抱くだろう。T子はどんな反応してんのかな。


悶々するよね、考えだすと。だから考えない!

単純人間万歳だ(笑)


で!そんなこんなでデート当日!互いが最寄りの駅で待ち合わせ。


僕の服装は至って普通のストリート。ガキみたいな服装ね。

待ち合わせ時間。T子が来た。


キャップに大きめのグラス。丈短めのダウンにホットパンツ&ブーツ。

うん、実に健康的!大満足(笑)彼女、着る服装によっていろんな表情見せるの。

それがまた僕の心をくすぐる訳。


僕『さっ、行こか!』

T子『だね!』


さぁ、初デートの始まりです!


魔性の片鱗

フェンス越しでの会話はまだ続く。


僕『そろそろバレるぞ?家戻ったら?』


T子『もう寝てるんじゃない?時間も時間だし、明日朝早いみたいだし。』


僕『ならいいケド、風邪ひくなよ。』


T子が何を考えてるのか当時は全く知らなかったケド、知り合って間もないのにこの急展開。


わざわざ嘘をついてまで会いに来てくれる訳だから、少なからず悪い印象はないだろうな。


でも彼氏様は知らない。僕らは、そんな事知ったこっちゃない。


ただ、逆に捉えてみるとTチャンは誰にでもこんな感じなのかな?嘘つけちゃうのかな?……とも考えてしまって。


時は3月上旬。深夜はめっきり寒くなる。Tチャンが震えだした。


僕『もう遅いし寒いだろうし、家入りな。』


T『分かった。手握ってくれたら帰る。』


……って。


さっきまで疑心暗鬼になってた僕の考えは何処吹く風。


一転して心臓バクバク!


僕『お……ぉう、しょうがねーなー』


って、テンパりながらフェンスの隙間から手を差し出す。


そっとTチャンの手が僕の手に触れる。


ひんやりと冷たい。


僕は更に強く握る。まるで氷を溶かすかの如く……強く強く。

深夜の密会

T子『外出られる?』

その時間は日付変わった深夜の1時。

仕事で当直していたが、うちの会社は指定勤務時間というものがあって。その指定勤務は夜の23時まで。

翌朝の6時までは自己研鑽の時間として定められている。

いわゆる自由な時間だ。

Tチャンに会える!心の中でガッツポーズ!

僕『今は事務所だよ。どこにいるの?』

T子『裏庭のフェンスの外側』

僕『今行くよ!待ってて』

T子『すぐ来てね!』

駆け足で裏庭に向かう。

いた。T子だ。改めて、制服着た状態で話をするのは初めて。

僕らはフェンス越しで会話する。臭い話だと思うケド……ロミオとジュリエットみたい(笑)あ、美女と野獣か……?

T子の片手にはごみ袋が。


T子『今日当直だって知ってたから外出てきちゃった!彼、家に居るケド理由ないと怪しまれるでしょ?ゴミ捨てに行くって(笑)』


たしかにT子……部屋着だ。Tシャツにスウェット姿。可愛い(笑)

そんな事よりも、リスクを侵 してまで会いに来てくれた。そんな心遣いが何より嬉しかった。