あの秋

「いつか、伊勢佐木町に一緒に行こう」
そう、彼女が言った
僕は盛り場の深いところを何にも知らずに生きてきた
知らずに生意気をしゃべり、ヨコハマを語ろうとした
酒と港と夜と恋を夢想し、詩を詠んだ
そんなインチキな姿勢を彼女は苦々しく感じてたのだろう
闇の奥のヨコハマをある程度知っている人間でなければ、こんな誘いはしなかったはずだ
彼女は謎の多いヒトだった
オレは越えねばならない壁を思った

堅気であることの煩わしさ
ものを創る人間にとっての常識という足かせ
安っぽい感傷
そして、旅人であることの一種の卑怯

街を愛するには、ヒトを愛すると同じでなければ嘘になる
恋は、その先の領域にまで踏み込む勇気がなければ、愛には成長しない
その覚悟があるのか
彼女からの誘いは、静かだが、重い

あなた馴染みの 港ヨコハマ
 人にかくれてあの娘が泣いた 
 涙が花に なる時に 
 伊勢佐木あたりに灯がともる
  恋のムードの 
 ドゥドゥビ ドゥビ ドゥビ 
      ドゥビ ドゥバー
 灯がともる ………………