
色んな記憶と感情をフィルターにして、
しわくちゃの僕のハートに映し出される街を“ヨコハマ”と呼び、
通常地名の「横浜」と区別している
横浜は、そこにある
ヨコハマは、僕の中だけにある
横浜を離れ、何年が過ぎたか
しかし、ヨコハマは常に僕のどこかに引っ掛かっていた
中々抜けないトゲのように
鍋の底に焦げ付いたカラメルのように
キツすぎる水商売の香水のように
僕は、関内駅の改札を過ぎ、すっかり様子が変わってしまった街の様子に呑まれた
海側のステップから見渡せたはずのマリンタワーの頭は、高層ビル群に隠されてしまっている
そして、横浜三搭も
〈キング〉〈クイーン〉〈ジャック〉
取り囲む雑居ビルがひしめいて、3人の美しい肢体はもう確かめようもない
街中を覆うような紫煙と少し酸えた匂い、そこここに流れるハマサウンドもなくなった
喧騒の質がすっかり変わった
いや、なくなった
街角に澱む人影は、皆、おし黙って、スマートフォンの画面に指先を滑らすことに気持ちを注いでいる
僕は溜め息をついた
スタジアムから裁判所や官庁の集中する区画を抜けて、「象の鼻」に足を向けた
最初からそう進もう、と決めていた
昔見たあの海が、今どうなってるのか
絵葉書の送り主が得意になっているその色を確かめることが大切だった
そんなことが、かい?
そうさ
そうだよ
それが、
この旅〈ヨコハマ▪ストーリー〉の
始まりだから………

