
映画「愛すべき夫婦の秘密」(2021)を観ました。
あらすじ
1950年代にアメリカで放送された人気シットコム「アイ・ラブ・ルーシー」で主人公のリカード夫妻を演じた、ルシル・ボールとデジ・アーナズの関係を描いた伝記ドラマ。実生活でも夫婦だった2人が、結婚生活とキャリアの両方で直面する危機や複雑な関係を描き出していく。ルシル・ボール役に「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン、デジ・アーナズ役に「ノーカントリー」のハビエル・バルデムと、ともにアカデミー賞を受賞している実力派が主演を務めた。監督・脚本は「シカゴ7裁判」「モリーズ・ゲーム」のアーロン・ソーキン。そのほかの出演にJ・K・シモンズ、ニーナ・アリアンダ、アリア・ショウカット、トニー・ヘイル、クラーク・グレッグ、ジェイク・レイシら。第94回アカデミー賞で主演女優、主演男優、助演男優の3部門にノミネート。第79回ゴールデングローブ賞ではニコール・キッドマンが最優秀主演女優賞(ドラマ部門)を受賞している。Amazon Prime Videoで2021年12月21日から配信。
映画.comより抜粋
他の人の感想
赤狩りの嵐が吹き荒れる1950年代に人気を博したホーム・コメディの制作現場を描く実話。スタッフたちの自己主張の激しいぶつかり合いにちょっと引いたんだけど、最後はジーンときた。「シカゴ7裁判」のアーロン・ソーキン監督で、めまぐるしいセリフの応酬に彼が脚本を書いた「ソーシャル・ネットワーク」を思い起こす。ニコール・キッドマンは近年では飛びぬけた名演技と思った。
ルシル・ローズが主役を務める人気TV番組「アイ・ラブ・ルーシー」の収録の1週間を追いつつ、冒頭でマスコミから共産主義者とレッテルを張られた彼女が噂をものともせず番組制作に突き進んでいく姿に狂気を感じる。夫のデジが家にろくに帰らずルーシーから浮気を疑われてて、ルーシーがかりそめの幸せの場である番組制作に必死に縋り付いて結婚生活の危機を乗り切ろうとする姿が切ない。派手な容姿とは正反対に彼女の夢は幸せな家庭なを持つことなんだよね。
時おり二人の馴れ初めが回想されるんだけど、ここのニコール・キッドマンの若メイクが自然でほんとうに若返ったように見えるのがすごい。ハビエル・バルデムも演技が自然体で歌も上手く、器用な役者だと思った。彼がキューバ出身であることを理由にプロデューサーが番組への器用を反対するシーンで、ルーシーが彼はアメリカ人だと力説するんだけど、この数年後に起こるキューバ危機の時には何を思っただろうね。
終盤でそれまでギスギスしてたスタッフたちが新聞のある一面記事をきっかけに心を一つにするあたりがジーンときて、デジの演出でルーシーの疑いを晴らせるかどうかというクライマックスは感動的。そこから思わぬラストになるのが何ともほろ苦い余韻。ルーシーの演技が止まってしまう原因となるあのセリフは、幸せな家庭にあこがれ続けたルーシーが心から待ち望んでた言葉だったんだよね。
ルシル・ボールの共産主義者疑惑、デジ・アーナズの不倫疑惑が報じられた、「アイ・ラブ・ルーシー」にとって激動の1週間を描く。
倦怠夫婦モノ的な要素もある現在の描写(作中の時制)に、所々で過去の描写が挿入されてて、2人の出会いから芸能キャリアのターニングポイント、芸能人夫婦であるがゆえのすれ違い、あたりが描かれてる。見せ方や結末は違うけど「ラ・ラ・ランド」を思い出すような内容。
週1の番組収録のためにこれだけ準備して臨んでるのかとか、演者と脚本家たちのやりとりとか、制作の裏側が知れる楽しさもあった。
事の顛末を知らなかったので2人はスキャンダルを乗り切れるのかとか、夫婦関係修復のためにあえて公私混同したルーシーの試みはどう転ぶのかとか、ハラハラしながら観てたけど、観終えてみると何とも言えない不思議な後味…。
ルーシーはデジの協力もあってスキャンダルを無事乗り切れたけど、元々言いがかりに近かったのでそこまでのカタルシスはなかった。単なるミスで誤魔化そうとデジに言われても信念を曲げなかったルーシーの描写とか、最後にFBI長官の名前が出てくるデジの演出は良かった。
スポンサーからの猛反対をはねのけて番組内でルーシーの妊娠、出産を取り上げて、結果赤ちゃん登場回の視聴者4400万人で大統領宣誓就任式超えっていうのが一番すごいなと思った。
デジの機転でルーシーの疑惑が晴れて(世間からも好意的に受け止められて)、めでたしなのかと思いきやラストの浮気発覚は予想外…笑 こっちのスキャンダルも言いがかりに近いと思ってたので驚いたし、特大の苦悩を2つ抱えながらスタジオに立つルーシーの女優魂に感服…。浮気発覚後にあれだけこだわってた花切りすぎのコメディを捨てて浮気演出に戻したの笑った。
芸能人夫婦とはいえ「クレイマー、クレイマー」や「マリッジ・ストーリー」を観たときと同じく離婚エンドは歯がゆいなあと思った。
1950年代のアメリカの国民的人気ドラマ「アイ・ラブ・ルーシー」。その舞台裏と主演で劇中でも私生活でも夫婦だったルシル・ボールとデシ・アーナズの姿を描いた実話ドラマ。
先日のアカデミー賞でも主演男優、主演女優、助演男優の3部門でノミネートされた話題作。注目作なのに劇場公開はおろか、配信オンリーでアマプラのみ。見れる環境なので鑑賞してみました。
やはり夫婦役のニコール・キッドマンとハビエル・バルデムの配役の勝利。どんな役でもこなせる実力派2人が物語を牽引。2人の間に複雑な現実が入り組むも、一世一代を賭けた番組の成功を目指し取り組んでいきます。
デシの浮気疑惑、ルシルの妊娠、そしてルシルの共産主義者疑惑。番組をやりきる上で次々と浮かび上がる問題。その1つ1つと向き合いながら、収録までの1週間を駆け抜ける。
ここまで色々あるかと思うほど難題だらけ。夫婦間にも当然ギクシャクが走ったり、ドラマスタッフ側、共演者たちとの関係も危うさが出てくる状態。華やかなイメージの国民的ドラマの裏側にはこんな難しい現実があった事を思い知らされた一作でした。
ラストのくだりは感動かと思いきや、また捻りがあったりと一筋縄ではいかない形も映画としては面白かったです。そこまで目立つような場面はありませんが、キャスト陣の実力を見るならばキッチリ期待に応えてくれる作品でしょう。
フィルマークスより抜粋
1950年代の大人気アメリカドラマ「アイラブルーシー」の舞台裏を描く一週間の映画。
ルシル・ボールの共産党員疑惑、デジ・アーナズの浮気疑惑。
ルシル・ボールの妊娠。
これでもかと難題がふりかかる中でも、ルシル・ボールの番組を面白くするための情熱は熱い。
番組は大人気でも(ドラマでも実生活でも二人は夫婦)ルシルの願う幸せな家庭生活は続かなかった。
誰かを愛し続けるのも愛され続けるのも難しい。