まさかのまさかが起こるのが人生かもしれません。
一瞬先は闇というように次の瞬間に何が起こるのかは誰にもわかりません。
その日も仕事を終えていつものように帰宅すると手洗いとうがいをしに洗面所に向かいました。
手洗いを終えて注文した品物を探しそれを見つけました。
いつもなら風呂に入ってから食事をするのですが、その日はフックを壁につけて時計をかけるのに気をとられていました。
届いたばかりのフックをどこにつけるのかを迷った末にようやく決めました。
フックの裏のシールを剥がして壁に押し付けました。
少し指で引いたりして掛けたものが落ちないかフックがすぐに剥がれ落ちないかを確かめました。
ボンドとかではないのでピッタリくっついている感じではありませんでした。
でもまあこれくらいなら大丈夫かと判断して、早速、時計を良く見える位置にかけました。
よし、これですぐに時計を見て時間が確認できるぞ。
満足して風呂に入ることにしました。
その激しい音は、風呂から上がりこれから食事をしようとした時に扉の向こうからいきなり聞こえました。
もしや!
扉を開けて目の前にあるものを見て驚きました。
そこには、さっき、フックを壁につけて、そのフックに確かにかけたはずの時計がひっくり返っていました。
あまりにも無防備な姿をさらし、単3電池の方をむけて横たわっているではありませんか。
すぐに手にとって表を見ましたが、時計の秒針は止まったままです。
電池を入れ替えて確かめました。
こんどは、動きました。
ただ、電波時計なので一度、0時00分に針が動くとその後で現在時刻に調整されるのですが、なんだか針はぐるぐると動いてなかなか現在時刻に合う兆しが見えません。
落とされた衝撃で壊れてしまったのではないかと心配になりました。
様子を見ることにしました。
壁にかけて一晩おいて次の日にもう一度確認してみることにしたのです。
朝、気になって覗いてみると、ぐるぐるが続いていました。
一向に現在時刻に近づく兆しもみられません。
やっぱりだめだったか。
時計を失った痛みを隠せません。
注文したのは、去年の5月15日でした。
1年もたせられませんでした。
妻は保証で交換できないかと言いますが、1カ月以降の返品交換は受け付けていません。
ヤクザじゃあるまいし、まさかフックの会社にイチャモンつけてもっと高額な時計を弁償させるわけにもいきません。
フックが途中で剥がれるなんて予想もできませんでした。
最初はくっついていたので安心していました。
少したってから剥がれるなんて、まるでバレーのあの攻撃みたいです。
こんな唐突に時間差かよ。
自分で時間を合わせなくても良かったので結構助かっていました。
進まず、遅れずいつも正確な時を知らせてくれました。
今日いきなり別れが訪れるとは夢にも思いませんでした。
正直まだこの現実を受け止めきれないのも事実です。
別れはいつも突然です。
そして、別れは新しい出会いのはじまりです。
人生とは出会いと縁と別れです。出会ってから別れるまでの間に嬉しいことや悲しいことがあって、それを無事に越えていくことが生きるということ
瀬戸内寂聴