「ウィズ・ザ・ビートルズ」を読みました。 | 好きなことだけで生きられる

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村上春樹の短編集におさめられている短編「ウィズ・ザ・ビートルズ」を読みました。

ビートルズは、そんなに関係がない話でした。

タイトルにあるだけで、昔、高校1年の時に校内の廊下で、名前も知らない、ビートルズのレコードのジャケットをかかえた少女とすれ違った。

彼女のことをいまでもよく覚えているということ。

1年後、別の彼女、はじめて出来たガールフレンドの話になります。

ある時、彼女と約束し、彼女の家に迎えに行きましたが、肝心の彼女はいませんでした。

代わりに出て来たのは、4才上の彼女の兄でした。

しばらく待っても彼女は帰ってきませんでした。

彼女の兄に芥川龍之介の「歯車」を朗読して聞かせたり、

彼女の兄の記憶が飛んでしまう病を抱えている話を聞きます。

その日結局彼女には会えずじまい、後で彼女に確認すると一週間後の約束だったと言われてしまいます。

何十年も後、渋谷である男に話かけられます。

その男は、以前つきあっていた彼女の兄でした。

兄から彼女の衝撃的な事実を聞かされました。

極めて、ざっくりとしたあらすじです。

なにせ、短編ですからお話もそんなに長くはありませんでした。

その書き方も独自のスタイルを持っていると思われます。

気に入った文章は、

心臓が堅く素早く脈打ち、うまく呼吸ができなくなり、プールの底まで沈んだときのようにまわりの音がすっと遠のき、耳の奥で小さく鳴っている鈴の音だけが聞こえた。誰かが僕に急いで、重要な意味を持つ何かを知らせようとしているみたいに。でもすべては十秒か十五秒か、そんな短い時間の出来事だった。それは唐突に持ち上がり、気がついたときには既に終了していた。そしてそこにあったはずの大事なメッセージは、すべての夢の核心と同じく、迷路の中に見失われていた。人生における大事な出来事がおおかたそうであるように。

他では読んだことのないいい回しだと思います。

次は
僕のガールフレンドの兄が自身の記憶が途切れる症状を喩えた文章

「月の裏側まで行って、手ぶらで帰ってくるようなものや」

この兄がある意味この作品の重要人物です。

きっと、村上春樹は彼のことが書きたかったのではないかと思われます。

私たちの心の中にも知らず知らずのうちに住み着いてしまうような強烈なキャラクターを持つ人物のことを。

読んだ人一人ひとりと彼のことを共有したかったのかもしれません。

例えば、10数年あるいはもっと前に
たった1時間半、数時間だけ出会っただけなのに

その後いきなり街やどこかで声をかけられたり
出会ってしまい

強烈な印象を残していた人物だったと
再認識してしまうような

誰の中にでも思い当たるかもしれまない
そんな人物のことを

読む人に思い出して欲しかったのかも
しれません。