このハイセンスな映像は。
映画「家族ゲーム」は、まさに衝撃でした。
1983年の作品です。
森田芳光監督の名前を世に知らしめた作品です。
こんなにある意味完成度の高い作品を作っちゃったらもう次の作品は作れないんじゃないかというレベルの作品でした。
もちろん、その年のたくさんの賞を総なめにしてしまいました。
監督の元に、いかに役者やスタッフが一丸となって作品を作り上げたかがスクリーン超しにじわじわ伝わってくるようです。
主演の松田優作も生き生きと家庭教師役を演じていました。
宮川一朗太もその年頃の鬱屈とした受験生役にはまりきっていました。
いや出演したすべての役者が作品の中で輝いていました。
ストーリーを追う映画から雰囲気を味わう映画へと変化させていました。
映画の持つ多様性を示し可能性を見せてくれた様に感じるのです。
BGMは一切流れません。
しかし、切れのいい演出は観る者を飽きさせません。
そして、数々のシーンで笑わせてくれます。
まるでアドリブが入っているかのようなシーンは一切アドリブ禁止で撮影されたようです。
「家中がピリピリ鳴っててすごくうるさいんだ」
最初のモノローグの意味は最後にわかる仕掛けがしてあります。
この映画で意気投合した松田優作とは、定期的映画を撮り続けていく約束をしたようです。
後に、夏目漱石の「それから」を撮った後に松田優作は還らぬ人となってしまいました。
惜しむらくは、ふたりの作品がもう観られなくなってしまったことです。
誰よりも残念だったのは森田芳光監督自身だったのかもしれません。
それを補って余りある位、「家族ゲーム」は素敵な作品に仕上がっていると思います。