9
その日は、お店の定休日だった。
「ちょっと買いすぎたかな(笑)」
コンビニで飲み物や食べ物を買い込んでから、えりかはみわのアパートへ向かっていた。
アパートに着いてインターフォンを鳴らすとすぐにドアが開いてみわが顔を出した。
「えりかさん、いらっしゃい。」
「どうも(笑)」
えりかは、買ってきた買い物袋をみわに渡した。
「こんなに?(笑)」
「ちょっといろいろカゴに入れてたら買いすぎちゃった。」
「でも意外とちょうどいいかもよ?(笑)」
「そうだね。」とえりかは笑った。
そして靴を脱いで「お邪魔します」と部屋へと入った。
「へぇー、綺麗にしてるんだね。」
「まぁ、えりかさん来るんで掃除したんですよ。」
「そうなんだ。」
「ところで、えりかさんの話したいことって?」
「うん。まずは食べよっか?」
「食べてないんですか?」
みわは、キッチンからコップとお皿を持って出てきた。
「うん。朝ご飯まだなの。」
「実は私も(笑)お腹空いちゃって。」
二人は買い物袋から飲み物や食べ物を出してお皿に取り分けた。
「で?話しって?」と言ってみわがニヤっと笑った。
「まだ食べてないー。」
「食べながらでもいいじゃないですか。」
「まぁ、いいか。」
「で、店長とのことですか?」
「うん、まぁ。そうなんだけど…」
「何か問題でも?」
「あれ?私、付き合ってること話したっけ?」
「聞いてないですよ?」みわは、意味ありげに笑った。
「じゃあ…」
「分かりますよ?それくらい。それに。この前、合コンのあった日。大野さんと二宮くんのやり取り見たら分かりますって。」
「あの日ね…」
「うん。あの日。えりかさんのこと二宮くんが引き寄せたじゃないですか?そしたら大野さん怒って外に二宮くん引っ張り出したし。」
「うん…あれね。なんだったんだろ?」
「二宮くん、えりかさんが好きなのかなって思ったけど、何だか違うみたい。」
「聞いたの?」
「うん。聞きました。」
「なんて?」
「うーん、好きな人はいるって。そう言ってましたけど…」
「そうなんだ…そっか。」
えりかはそう言って何か考えるようにボーッとしていた。
「えりかさん?」
「…………」
「ちょっと、えりか先輩?!」
えりかは、みわの呼び掛けにハッとして「ねぇ、みわ。おかしいこと言っていい?」と真顔で言った。
「なんですか?急に?」
「二宮くんの好きな人ってね、、」
えりかは、ちょっと言いにくそうに下を向いた。
「ん?知ってるんですか?」
みわは体を乗り出してえりかの顔を見た。
「うん…私の憶測なんだけど。」
「誰?」
「店長。」
「へっ?」
「だから、大野くん。」
えりかは、真剣な顔でみわを見た。
「ちょっと、えりかさん冗談やめてよ(笑)」
「みわ、私真剣だよ!ちゃんと聞いて?」
えりかは、どうしてそう思うかをみわに話した。
「ふーん、そっかぁ。でも本当かなー。」
「私もね、最初はそう思う私がおかしいのかなって思ったの。でも、二宮くんの態度や視線。絶対そうだって、思った。この前私を引き寄せたのは大野くんに対する嫌がらせ。たぶん。」
「なんか、信じられないなー」
「まぁね、私も信じられないけど。ライバルが男なんて…」
えりかは、ムスッとして食べていたパスタをガツガツと食べた。
「えりか先輩、そんな風に食べたら喉に詰まりますよ?」
「だって…」
「えりかさん?」
「だって、男がライバルなんてある?」
えりかは、泣きそうになりながらパスタを食べて飲み物を飲んだ。
みわは、まさかと思った。
でも、思い出してみたら好きな人は、「優しいけど怒ると怖い人」って言ってたな。
一生懸命な人って…
それに、恋人がいるから気持ちは伝えないって言ってたよね?
それって、店長に当てはまるのかも。
だとしたら私もライバルは男ってこと?
嘘でしょ…
「みわ?」
「えっ?!」
「どうしたの?」
「いや、なんかびっくりしちゃって。」
「そうだよね…びっくりするよね?」
「うん…」
「私、どうしたらいいんだろ?男がライバルだよ?」
「でも、えりかさんと大野さんは付き合ってるんですよね?」
「そうだけど、でも。」
「二宮くんに取られそうなんですか?自信ない?」
「うーん、どうだろ?自信ないかも。」
えりかは、ちょっと膨れた。
「大丈夫ですよ!大野さんが二宮くんに、気持ち傾いたりしないって。」
「そうかなー。」
「そうですよ!」
みわは、自分にも言い聞かせるように言った。
二宮くんの好きな人が大野さんなんて。
考えてもみなかった…。
続く