その手に触れて、永遠に。10(大宮) | ニノのこと♡少し韓国♡妄想小説♡日々の出来事を綴ったブログ

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10





えりかがいつものように店に出勤して行くとすでに明かりが付いていた。


智くん、もう来てる。

「智くん、おはよう。」


「あ、おはよう。」


大野はすでにエプロン姿で何か作っていた。


「なんか、いい匂い。もうパン焼いたの?」


「うん。試作品。えりかちゃん食べてみて?」


「んー、どれどれ。」えりかは、大野に渡されたパンを一口食べた。


「どう?」
大野はえりかを見た。


「うん。もう少し甘さ控えめの方がいいかも。」


「やっぱり?これでも控えめにしたんだ。」


「私も手伝うからもう1回作ろう?」


「いいの?」


「うん。今日はまだ早いし。」

大野とえりかは、一緒に試作品のパンを作り出した。


ちょうどその時、二宮が出勤して来た。


店の入り口から入ると厨房にいる二人が見えた。


あれ?

二人で何かやってる。

大野とえりかが楽しそうにしているのが見える。


楽しそうに笑う大野を見て何だか胸が痛い。


これって嫉妬?ヤキモチ?


二宮が店からその様子を見ていると、みわも出勤して来た。


「あ、二宮くんおはよう。」


「………」


「二宮くん?」みわは、二宮の顔を覗き込んだ。


「わっ、びっくりした。」


「ボーッとしてどうしたの?」


「あ、うん。なんか邪魔しちゃ悪いかなって…」


「本当だ。なんか、楽しそうだね。」


「うん。何…してんのかな?」


「試作品かな。たまに作ってるみたいだよ。」


「そっか。また新しいパン?」


「そうだね。新商品だね。今度はどんなのだろうね?」


「うん…」


「二宮くん?」


「ん?」


みわは、〝好きな人は大野さんだよね?〟と聞いてみたくなった。


「あの…さ?」


「何?」二宮がみわをじっと見るので急に恥ずかしくなった。


「ん?」
二宮がさらにみわを不思議そうに見た。


なんだか見つめられて急に意識してしまって顔が熱くなった。

「やっぱ、なんでもない。厨房行こうか?」

ダメだ。二宮くんの瞳。
本当に綺麗で見つめられるとドキドキしちゃう。

好きになる前はそんな風に思わなかったのに。

本当に好きな人は店長なの?

全然分かんないよ…





厨房へ行くと甘い匂いがした。


「えりかさん、また試作品ですか?」

みわはえりかに話し掛けた。

「うん。大野くんがね。朝から作ってるの。」


「みわちゃんも食べてみて。」
大野がパンを指さした。


「はい。」

みわは、皿に切って置いてあったパンを食べた。


「美味しいー!これいいんじゃないですか?」


「でしょ?」とえりかはニコッとした。


「最初は甘すぎちゃって。ちょっと控えめにしたんだ。二宮くんも、食べて。」
大野は二宮を見た。


「あ、はい。」


一口食べてみる。


「どう?」大野はちょっと不安そうに二宮を見た。


「うん、美味しい。女子にも人気出そうですね。」


「よし!じゃあ、さっそく出そうか。今日は試しに焼いた分だけ出そう。」


「じゃあ、さっそく並べますか?他のパンも焼けたのは並べちゃいますね。」
みわは、鞄を休憩室に置きに行ってエプロンを付けた。


二宮もエプロンを付けて仕事を始めた。



仕事をしながら隣にいた、えりかに二宮は話し掛けた。

「えりかちゃん、、店長と仲いいね。」


「まぁ。うん。もう知り合って長いしね。」


「付き合ってどのくらい?」


「えっ?」


「あ、店長からは聞いてる。恋人だって。」


「そっか。どのくらいだろう?3年くらいになるかな。」


「へぇー、長いんだね。」


「前の職場で知り合ってね。だから知り合ってからはもっと長いかも。」


「そうなんだ。」


えりかは、それとなく聞いてみた。

「二宮くんは?好きな人いないの?」


「えっ?うん。いますよ、好きな人。」

あっさり答えたのでちょっとびっくりした。


「どんな人?」


「えっと、優しい人です。」


「どこで知り合ったの?」


「どこで…?」


「あ、ごめん。いろいろ聞きすぎたね(笑)」


「いえ、知り合ったのは…パン屋です。」

二宮は仕事の手を休めることなく答えた。


「パン屋…?」
えりかは、仕事の手を止めて二宮を見た。


「どうしました?」


「ううん。」えりかは、また仕事の手を動かした。


パン屋ってここだよね?
やっぱりそうなのかな…?

「あの…パン屋って?買いに行って?」


「えりかちゃん、オレに興味あるの?店長に怒られますよ?(笑)」


「あぁ、ごめん。」

えりかは、苦笑いした。

ちょっと聞きすぎた。

でも、やっぱりそうだよね。


えりかは、何となく意地悪したくなってわざと大野にくっつくようにした。

「大野くん、このパンの飾り付けこれで良かったっけ?」

えりかは、チラッと二宮を見た。

一瞬だけどこっちを見た。




二宮はなんだか面白くなかった。

朝からあんなに楽しそうにしている大野とえりかを見たからだ。


笑っている大野さんが可愛く見えた。

そして、かっこよくも見えた。

やっぱり好きなんだ。

オレは大野さんが好き。

分かってる。自分の感情がおかしいことくらい、分かってる。


でも、嫌だった。

えりかと楽しそうに笑っているのが嫌だった。

オレだって、オレだって。

その綺麗な手に触れたい。

笑い合いたい。


もっと。

もっと。


好きと言う感情はどんどん大きく膨らんでいく。

膨らんでいつか爆発するのかな。

そしたらどうなるのかな?



続く

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