白石はもう一度言った。
「二宮くん、行くよ?」
「いや、だから残ります。すいません...」
「いいの?」
「いいんです。相葉くんの代わりに。残ります。」
二宮はそう言って病室に置いてある椅子に腰掛けた。
高橋はそれを見て「じゃあ、本当に相葉を連れて来るんだな。」
「ここへ来れるようになったら連れて来る。白石先生お願いします。」
白石は少し困ったな、と言う顔をしたが小さく頷いた。
「分かった。くれぐれも無理はしないように。」
白石は、落ちているナイフを拾って「これは預かっておくから。」と言って白衣のポケットに入れた。
そして、病室から静かに出て行った。
高橋は「ここへ残ってどうする?面白いやつだな。」と言って少し笑った。
二宮は「じゃあ聞かせてくれる?相葉くんをあんな目に合わせた理由。」と言って椅子に座ったまま高橋を少し睨んだ。
「ふん。なんでおまえなんかに...。」
高橋は病室のベッドの横で突っ立って美紀を見つめていた。
「理由を聞かせてくれないなら相葉くんも連れて来れない。」
「交換条件かよ。ズルイな...」
高橋はフッと笑った。
「そんな顔も出来るんだな。」二宮は高橋を見て言った。
「はぁ?どんな顔だよ。」
「いや...」
二人の間には沈黙の時間が流れた。
高橋は何をどう話せばいいのか。
本当に喋ってしまっていいのか。
迷っていた。
そして、少し後悔し始めていた。
自分のした事は間違っていた。
こんなやり方をしなくても良かった。
相葉がここに来れない理由は...
まさか...。
生死をさまよっているんじゃないか。
自分がした事で人の人生を大きく狂わせてしまったのか。
いや。
でも、それは。
美紀だって同じだ。
本当なら今頃幸せにしてたかもしれない。
眠っている美紀を見て高橋は涙が溢れた。
溢れた涙が頬を伝って落ちた。
二宮はそれを見て「辛かったんだな。」
そう声を掛けた。
高橋は小さく頷いた。
「本当は相葉が悪いわけじゃないんだ。そんな事分かってたはずなのに。何やってるんだか…」
高橋は頬に伝う涙を手で拭った。
「俺と相葉と美紀と同級生だったんだ。いつも一緒にいた。お互いがきっと美紀を好きだったんだと思う。」
二宮は黙って聞いていた。
「三人一緒にいられる。それだけで良かったんだ。でも...どこかでそれは狂った。いや。相葉のした事でおかしくなったんだ。」
高橋はそのまま黙ってしまった。
二宮は次の言葉を待っていたが高橋はそれ以上話すことはなかった。
続く